教皇配布の「焼き場に立つ少年」カード、日本語版完成

今年1月にニュースとして伝えられましたが、昨年末バチカンで、教皇フランシスコが作成し、関係者に配布した「焼き場に立つ少年」のカードについて、この日本語版が完成しました。現在、日本にある16の教区本部事務局を通して配布して […]

今年1月にニュースとして伝えられましたが、昨年末バチカンで、教皇フランシスコが作成し、関係者に配布した「焼き場に立つ少年」のカードについて、この日本語版が完成しました。現在、日本にある16の教区本部事務局を通して配布しています。

写真は、アメリカ人の従軍カメラマンだった、故ジョー・オダネルさんが1945年の原爆投下直後に長崎で撮影したものです(写真の詳しい説明は、以下の著書『神様のファインダー』からの引用文を参照してください)。教皇がこの写真を用いたことに、核兵器廃絶を繰り返し世界に強く訴えるその姿勢が表されています。

写真を受けて、カード裏面には「戦争がもたらすもの」との教皇フランシスコのことばと署名があり、さらに写真について、「……この少年は、血がにじむほど唇を噛み締めて、やり場のない悲しみをあらわしています」といった説明文が添えられています。

信者の皆さまは、本カードは教区本部事務局から各小教区などへ配布される予定になっていますので、そちらでご入手いただけるよう、しばらくお待ちください。なお、具体的な配布方法や時期は、各教区によって異なりますので、この点はご了承ください。

一般の方でご希望の方については、弊協議会に若干数、在庫があります。電話かファックス、または問い合わせフォームで、お名前、住所、電話番号、必要枚数を書いてお送りください。送料を受取人さまご負担でお送りいたします。よろしくお願いいたします。

 2018年7月6日
 カトリック中央協議会 司教協議会事務部事務課
 電話 03−5632−4445、
 ファックス03−5632−4465、
 お問い合わせフォーム

焼き場に立つ少年

 佐世保から長崎に入った私は小高い丘の上から下を眺めていました。すると白いマスクをかけた男たちが目に入りました。彼らは60センチほどの深さに掘った穴のそばで作業をしています。やがて、10歳ぐらいの少年が歩いてくるのが目にとまりました。おんぶひもをたすきにかけて、幼子を背中に負っています。弟や妹をおんぶしたまま広場で遊んでいる子どもたちの姿は、当時の日本ではよく目にする光景でした。しかし、この少年の様子ははっきりと違っています。重大な目的をもってこの焼き場にやってきたという強い意志が感じられました。しかも裸足です。少年は焼き場のふちまで来ると、硬い表情で目を凝らして立ち尽くしています。背中の赤ん坊はぐっすりと眠っているのか、首を後ろにのけぞらせていました。
 少年は焼き場のふちに5分か10分も立っていたでしょうか。白いマスクの男たちがおもむろに近づいて赤ん坊を受け取り、ゆっくりと葬るように、焼き場の熱い灰の上に横たえました。まず幼い肉体が火に焼けるジューという音がしました。それからまばゆいほどの炎がさっと舞い上がり、真っ赤な夕日のような炎が、直立不動の少年のまだあどけない頬を赤く照らしました。その時です。炎を食い入るように見つめる少年の唇に血がにじんでいるのに気づいたのは。少年があまりきつくかみ締めているため、血は流れることもなくただ少年の下唇に赤くにじんでいました。夕日のような炎が鎮まると、少年はくるりときびすを返し、沈黙のまま焼き場を去っていきました。

坂井貴美子編著、ジョー・オダネル写真『神様のファインダー』(いのちのことば社)より

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