ジェー・シー・オー(JCO)ウラン臨界事故に関する要望書

内閣総理大臣 小渕恵三様 通商産業大臣 深谷隆司様 科学技術庁長官 中曽根弘文様 去る9月30日に茨城県東海村で起きたJC0束海事業所におけるウラン臨界事故は、わたしたちに大きな衝撃を与えるものでした。その後の報道による […]

内閣総理大臣 小渕恵三様
通商産業大臣 深谷隆司様
科学技術庁長官 中曽根弘文様

去る9月30日に茨城県東海村で起きたJC0束海事業所におけるウラン臨界事故は、わたしたちに大きな衝撃を与えるものでした。その後の報道によると、事故原因は恒常化された違法な「手順書」にしたがった操業であり、同社は会社ぐるみでそうした操業を黙認していたものだと伝えられています。さらに今回、この違法な「手順書」さえも現場では無視され、さらに事故につながるような危険な作業が行われていたようです。

こうしたとくに危険な物質を扱う企業の違法操業については、十分な捜査と摘発が行われるべきであることは当然です。一方、わたしたちにとって驚きであるのは、公共の福祉と国民の安全のために必要なものを整える責務を担う政府がその監督責任を果たせず、違法操業を是正できず、そのために発生した臨界事故に対しても対応策をもたず、結果として数十名の被曝者を出し、その他、人的経済的に甚大な被害を東海村とその周辺地域にもたらしたことです。すべてが後手後手にまわったという印象です。

日本に居住する市民すべてに対して、彼らの生活と福祉を保護充実させるために、行政が日々努力を重ねるとともに、こと原子力行政に関しては、とりわけ以下のような点について、真撃に対応していただくよう強く要望いたします。

1. エネルギー政策に関し、国民にその選択の機会を

度重なる核利用における重大事故を前に、日本のエネルギー政策を依然として原子力中心で行くのか、代替エネルギーに切り替えていくのかについて、国民全体からの意見聴取の場をもつべきです。その上で、代替エネルギー開発に十分な予算と人的配置を行ってください。

2. 改めて、操業中の原子力発電所・原子力関運施設の総点検を

一方、現状として多くの原子力発電所と原子カ関連施設が操業している以上、そうした発電所と、今回事故を起こしたJC0のような施設全部について改めて実地での検査・監督を行い、とくに事故は起こるという前提に立った事故に対応するマニュアル作成とそのための訓練を充実させてください。

3. 事故を想定した、自治体による防災マニュアル再整備を

原子力発電所と原子力関連施設をもつすべての自治体が、事故は起こるものとして、それに対応するマニュアルを作り、それに応じた訓練を常に行うよう、指導してください。その際に、原発における放射能漏れといった大規模な事故にも対応できるような国からの緊急支援体制も整備してください。

4. 第三者機関による原子力施設の指導監督体制を

大蔵省が「金融行政」と「金融監督」の両方の業務を行い得なかったのと同じ課題が、科学技術庁にも当てはまるように思えます。今のままの行政組織で十分な指導監督ができない以上、原子力政策を推進する科学技術庁とは別の第三者機関による、指導監督体制を準備してください。

5. 原子力施設労働者に対し、十分な健康管理と被害補償を

今回大量に被曝した三名の労働者が放射線量測定のカードを身につけて作業していなかったように、原子力発電所や核施設で働く労働者の健康管理は十分に行われていないのではないかと危倶します。今回被曝した数十人を含め、こうした労働者の健康被害に対して、十分な補償が行われるような施策を整備してください。

6. 回の事故とすべての原子力施設に関する情報公開を

最後に、今回の事故について、事故に至る経緯や原因、責任所在、今後の改善策等を地域住民をはじめすべての人々に対し、十分に情報公開するとともに、全国に散在するすべての原子力関連施設に関する情報も公開し、原子力行政に対する信頼回復をはかるよう求めます。

1999年10月7日
カトリック中央協議会 事務局長 岡田武夫
日本カトリック正義と平和協議会 担当司教 大塚喜直

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