日本の教会における祈願日等の解説

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世界平和の日(1月1日)

 教皇パウロ六世は1968年1月1日、ベトナム戦争が激化するなか、平和のために特別な祈りをささげるよう呼びかけました。それ以来、全世界のカトリック教会は毎年1月1日を「世界平和の日」とし、戦争や分裂、憎しみや飢餓などのない平和な世界が来るように祈っています。

 平和はキリスト教そのものに深く根ざしています。キリスト者にとって平和を唱えることは、キリストを告げ知らせることにほかなりません。新年にあたって「信仰の原点に立ち戻り、すべての善意ある人々と手をたずさえて、平和な世界の実現に向かって、カトリック信者としての責任を果たしていく」(日本司教団『平和への決意』)ことができるよう決意を新たにしたいと思います。

キリスト教一致祈禱週間(1月18日〜25日)

 「すべての人を一つにしてください」という最後の晩さんでのイエスの祈りに耳を傾けるわたしたちはまた、折にふれて目に見える一致を示すように求められています。それは、ともに祈り、支え合うことによって、神がすべての人の救いのためにイエスを遣わしたことを「世が信じるため」です(ヨハネ17・21-23参照)。

 キリスト教諸教会の間で毎年1月18日から25日に定められている「一致祈禱週間」は、このことを強く意識する機会となるでしょう。この一致祈禱週間のために、教皇庁キリスト教一致推進評議会と世界教会協議会は1968年以来、毎年テーマを決め、「礼拝式文」と「8日間のための聖書と祈り」を作成しています。日本ではカトリック中央協議会と日本キリスト教協議会が共同で翻訳し、小冊子を発行しています。

世界こども助け合いの日・献金(1月の最終日曜日)

 「世界こども助け合いの日」は、子どもたちが使徒職に目覚め、思いやりのある人間に成長することを願って制定されました。この日はまず第一に、子どもたちが自分たちの幸せだけでなく世界中の子どもたちの幸せを願い、そのために祈り、犠牲や献金をささげます。毎日のおやつや買いたいものなどを我慢してためた子どもたち自身のお小遣いの中から献金することが勧められています。日本では、各教会だけでなく、カトリック系の幼稚園や保育園の大勢の子どもたちがこの日の献金に協力しています。

 この日の献金は全世界からローマ教皇庁に送られ、世界各地の恵まれない子どもたちのために使われます。

世界病者の日(2月11日)

 教皇ヨハネ・パウロ二世は、1984年2月11日(ルルドの聖母の記念日)に使徒的書簡『サルヴィフィチ・ドローリス―苦しみのキリスト教的意味―』を発表し、翌年2月11日には教皇庁医療使徒職評議会を開設しました。さらに1993年からはこの日を「世界病者の日」と定め、毎年メッセージを発表しています。

 病者がふさわしい援助を受けられるように、また苦しんでいる人が自らの苦しみの意味を受け止めていくための必要な助けを得られるように、カトリック医療関係者だけでなく、広く社会一般に訴えていかなければなりません。医療使徒職組織の設立、ボランティア活動の支援、医療関係者の倫理的霊的養成、病者や苦しんでいる人への宗教的な助けなども重要な課題です。

四旬節愛の献金(四旬節中)

 教皇は毎年、四旬節に向けてメッセージを発表し、キリストを信じるすべての人が四旬節の精神をよく理解して、回心と愛のわざに励むよう呼びかけます。この呼びかけにこたえて日本のカトリック教会は、虐げられ、差別され、見捨てられ、いのちの危機にさらされている人たちとの共感を大切にするよう一人ひとりに訴えるとともに、四旬節中の「愛の献金」を奨励しています。

 この「愛の献金」は、カリタスジャパンを通して海外諸国と日本各地に送られ、難民や孤児、そして、貧困、失業、飢餓などに苦しむ多くの人々のいのちを守るために、また彼らの自立を助けるために使われます。

性虐待被害者のための祈りと償いの日(四旬節第2金曜日)

 2016年、教皇フランシスコは、子どもに対する教会のメンバーの責任について明確に意識できるように、神により頼む日として「性虐待被害者のための祈りと償いの日」を設けるよう全世界の司教団に通達されました。
 これを受けて日本の教会は、「性虐待被害者のための祈りと償いの日」を四旬節第2金曜日と定め、祈りと償い、被害者の痛みを学ぶ機会としました。
教会のメンバーが犯した罪を認め、共同体として神からのゆるしを願い、被害者とその家族のために祈ります。

聖地のための献金(聖金曜日)

 14世紀中ごろ、教皇クレメンス6世は、パレスチナ各地の巡礼所とヨーロッパからの巡礼者保護をフランシスコ会に委託しました。その後、政情不安定な聖地で苦労している修道者たちを支えるために行われるようになった献金は、いつのころからか主の受難と死を記念する聖金曜日にささげられるようになりました。そして教皇レオ13世は1887年、カトリック教会のすべての小教区にこの聖地のための献金を命じました。

 全世界の教会からローマ教皇庁に集められる献金は、現在、イスラエル、ヨルダン、キプロス、パレスチナ自治区内にある数多くの巡礼所や聖堂などの維持管理に充てられるほか、聖地の貧しい兄弟のための福祉施設や教育施設の運営、奨学金や生活保護などのために使われています。

神のいつくしみの主日(復活節第2主日)

 教皇ヨハネ・パウロ二世は2000年から、ご復活の主日の次の日曜日(復活節第二主日)を「神のいつくしみの主日」と定め、この主日に神のいつくしみに対する特別の信心を行うよう望まれました。それは信者たちが聖霊の慰めの賜物を豊かに受け、神への愛と隣人への愛を強め、成長させることが出来るためです。この信心によって、信者たちはそれぞれ自分を反省して、罪のゆるしを得た後、兄弟姉妹をすぐに赦すよう促されます。

世界召命祈願の日(復活節第4主日)

 神は、すべての人が誠実に自分の生涯を過ごすように招いています。ある人は社会の中で会社員、医師、看護師、教員、工場で働く人として、また夫、妻、父、母としてよい家庭を築くように、そして、ある人は神と人とに仕える司祭、修道者となるように招かれています。神の招きはこのように人それぞれ異なりますが、自分に対する神の望みを祈りつつ探していくことが大切です。近年、司祭や修道者の減少、高齢化が進んでいます。とくに「召命祈願の日」には、司祭、修道者への招き(召命)に1人でも多くの人がこたえることができるように祈りましょう。

 この日は、教皇パウロ六世によって1964年に制定されました。

世界広報の日・献金(復活節第6主日)

 福音宣教はわたしたちの使命です。「世界広報の日」は、この福音宣教の分野の中でもとくに新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、映画などの広報媒体を用いて行う宣教について、教会全体で考え、反省し、祈り、献金をささげる日です。日本のようにマスコミや技術の進歩している国で、広報が社会や文化に及ぼす影響ははかりしれないものがあります。広報の重要性を再認識し、広報を通して社会と人々にどのようにかかわっていくことができるか、また、実際どのようにかかわっているかを考えることが大切です。

 「世界広報の日」は、第2バチカン公会議で定められ、1967年以来、毎年、特別のテーマが決められ、教皇メッセージが出されています。

聖ペトロ使徒座への献金(聖ペトロ聖パウロ使徒の祭日または直前の日曜日)

 教皇は毎年、世界各地を訪問します。そして、人々の苦しみや悩みを聞き、優しい笑顔で力づけ、数々の援助を与えます。キリストの代理者、教会の最高牧者である教皇は、祈りと具体的な援助を通して全世界の人々にいつも寄り添っているのです。この教皇に心を合わせて、わたしたちも世界中の苦しんでいる人々のために祈りと献金をささげます。教皇のこうした活動のために充てられる聖ペトロ使徒座への献金は、8世紀ごろイギリスで始まった、大人も子どもも一番小さなお金である1ペニーを毎年教皇に献金する運動がもとになって世界中に広まったものです。

祖父母と高齢者のための世界祈願日(7月の第4日曜日)

 この祈願日は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの最中に制定されました。感染拡大防止のため、多くの高齢者が孤独のうちに置かれ、だれにも看取られることなく亡くなりました。その悲劇は、苦しむ人に寄り添うというキリスト者の召命について、あらためて考えるよう促します。
 この祈願日の教皇メッセージは、とりわけ高齢者自身へと向けられます。教皇は、記憶を保ち信仰を伝えるという高齢者の使命を繰り返し説いています。高齢者には、社会において担うべき役割があるのです。
 ですから、高齢者にとってはその使命の自覚が、後の世代にとっては高齢者の果たす役割への理解が、それぞれ求められます。家庭にも教会にも、高齢者が活躍する場、あらゆる世代がつながって協働する場が必要なのです。

日本カトリック平和旬間(8月6日〜15日)

 1981年、聖ヨハネ・パウロ2世教皇は広島で、「過去を振り返ることは、将来に対する責任を担うことである」と述べられました。戦争を振り返り、平和を思うとき、平和は単なる願望ではなく、具体的な行動でなければなりません。そこで日本のカトリック教会は、その翌年、もっとも身近で忘れることのできない、広島や長崎の事実を思い起こすのに適した8月6日から15日までの10日間を「日本カトリック平和旬間」と定めました。

 「平和旬間」に広島教区と長崎教区では、全国から司教をはじめとして多くの信者が集まり、「平和祈願ミサ」がささげられます。各教区でも、平和祈願ミサや平和行進、平和を主題とした映画会、講演会、研修会、平和を求める署名などが行われます。

被造物を大切にする世界祈願日(9月の第1日曜日)

 回勅『ラウダート・シ――ともに暮らす家を大切に』(2015年)で、全世界の人に向けて、エコロジー(自然保護)に取り組むよう訴えた教皇フランシスコは、東方正教会にならって、環境保護のための助けを願う日をカトリック教会の暦に加えました。

 地球規模の環境悪化が進む中、自然を破壊することなく、「わたしたち皆の家」である地球を大切にし、調和のうちに発展していくことができるよう、この日、全世界のカトリック教会で祈りがささげられます。いのちの与え主である神に賛美と感謝をささげるとともに、自然を大切にする視点から、ライフスタイルを見直し、考え方を改める機会としていきたいものです。

※ここに掲載します「被造物を大切にする世界祈願日のメッセージ」は、毎年出されるその他の祈願日等のメッセージとは異なる性格の文書ですが、教皇フランシスコの「教皇文書」に掲載します。

世界難民移住移動者の日・献金(9月の最終日曜日)

 「世界難民移住移動者の日」は、各小教区とカトリック施設が、国籍を超えた神の国を求めて、真の信仰共同体を築き、全世界の人々と「ともに生きる」決意を新たにする日です。日本の教会でこの分野の活動を受け持つ日本カトリック難民移住移動者委員会は、日本と全世界にある協力グループとともに、活動の推進、連絡、協力、支援、情報の交流等を行っています。そのために祈りと献金がささげられます。おもな活動は次のとおりです。

  1. 滞日・在日外国人とともに
  2. 定住難民や新難民とともに
  3. 外国人船員や国際交通機関の乗務員とその家族とともに
  4. 海外日本人・海外移住者(海外旅行者も含む)とともに
  5. 海外日本人宣教者、外国人宣教者とともに

世界宣教の日・献金(10月の最後から2番目の日曜日)

 世界にはまだキリストを知らない人がたくさんいます。日本でもわたしたちはキリストを知らない人たちに囲まれて生きています。キリストを伝えることである宣教は、神の子ども、キリストの弟子となったわたしたち皆に与えられている使命です。

 「世界宣教の日」は、すべての人に宣教の心を呼び起こさせること、世界の福音化のために、霊的物的援助をはじめ宣教者たちの交流を各国の教会間で推進することを目的としています。この日の献金は、各国からローマ教皇庁に集められ、世界中の宣教地に援助金として送られます。日本の教会は、いまだに海外から多くの援助を受けていますが、経済的に恵まれない国々の宣教活動をさらに支援できるように成長していきたいものです。

聖書週間(11月の第3日曜日〜第4日曜日)

 神の愛を知り、神の心を受け取るために、わたしたちは新約聖書と旧約聖書を神のことばとして読み、大切にします。「聖書週間」は、すべての人、とくに信徒が、この聖書に「より強い関心をもち、親しみ、神の心に生きる」ようになるための週間です。

 各教区では、聖書への関心を高め、より親しむために、講演会、研修会、展示会などの催しが計画されます。このような催しに進んで参加するとともに、自分でも積極的に聖書に近づきましょう。たとえば、毎日欠かさず聖書を1章ずつ読む方法や、ミサにあずかれなくても、ミサの聖書朗読の当日分を毎日読む方法も勧められています。

貧しい人のための世界祈願日(年間第33主日)

 いつくしみの特別聖年(2015年12月8日~2016年11月20日)の閉年にあたり公布された使徒的書簡『あわれみあるかたと、あわれな女』(2016年)で教皇フランシスコは、年間第33主日を「貧しい人のための世界祈願日」とするよう定めました。

 ご自分を小さい者や貧しい者と等しい者とみなされたキリストに倣い、わたしたちも、貧しい人、弱い立場にある人に寄り添い、奉仕するよう求められています。

 不平等や不正義のない世界の実現に向けて、具体的なわざを通して神のいつくしみのあかし人となれるよう、祈り求めていかなければなりません。

世界青年の日(王であるキリストの祭日)

 1984年、あがないの特別聖年に、教皇ヨハネ・パウロ二世は大十字架(380cm)を聖ペトロ大聖堂の祭壇脇に設置し、それを「主イエスの人類への愛のしるし」として青年らに託しました。以来、この十字架は巡礼のシンボルとして諸国を旅しています。国連が定めた国際青年年(1985年)の受難の主日に、青年らはこの十字架とともに教皇のもとに集まりました。そして教皇は、毎年受難の主日を「世界青年の日」として祝うよう定め、以後2~3年に一度WYD(ワールドユースデー)が開かれるようになりました。
 2020年に教皇フランシスコは、各方面の要望を踏まえ協議を重ねた結果、次年より世界青年の日を王であるキリストの祭日に変更すると発表しました。祝われる日は変わりますが、この日の中心にあるのはつねに、人類のあがない主イエス・キリストの神秘です。

宣教地召命促進の日・献金(12月の第1日曜日)

 キリストを知らない人に救いの福音を伝えることは、キリスト者一人ひとりに課せられた使命であり、神からの呼びかけにこたえること(召命)です。それゆえ、宣教地である日本において、すべての信徒がその使命を果たせるよう、また宣教に従事する司祭・修道者がよりいっそう増えるよう祈ることは、とても大切なことです。

 この日、わたしたちは、世界中の宣教地における召命促進のために祈り、犠牲をささげます。当日の献金はローマ教皇庁に集められ、全世界の宣教地の司祭養成のための援助金としておくられます。

(『カトリック教会情報ハンドブック』より)

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