FABC(アジア司教協議会連盟)第8回総会 閉会メッセージ

2004年8月23日 アジアの神の民とすべての善意の人びとへ  わたしたち司教、司祭、修道者、信徒は、アジアのさまざまな国から、韓国・テジョン(大田)で行われたこのアジア司教協議会連盟第8回総会に集まり、神と、アジアの家 […]

2004年8月23日

アジアの神の民とすべての善意の人びとへ

 わたしたち司教、司祭、修道者、信徒は、アジアのさまざまな国から、韓国・テジョン(大田)で行われたこのアジア司教協議会連盟第8回総会に集まり、神と、アジアの家庭の声に耳を傾ける精神のもとで、「いのちの文化をめざすアジアの家庭」というテーマを考察しました(1)。総会が終わるにあたり、わたしたちは家庭が神のたまものであり、アジアに与えられた祝福であることを確信しています。

 わたしたちはアジアの家庭のうちに希望のしるしが満ち溢れていることを祝います。宗教的・文化的価値観に力づけられながら、多くの家庭が家庭生活の理想を守ろうと努力しています。多くの家庭はアジアの価値観によって強められています。すなわち、いのちへの深い畏敬の念、自然との親しみと自然の尊重、強い家族のきずな、人間関係、親切さ、もてなしの心、高齢者に対する尊敬、親への孝心、若者への気遣いといった価値観です。家庭内に保たれた霊性と宗教心、また結婚、家庭、子どもの聖性に対する感覚は、喜びの源となり、また多くの家庭を召命の揺籃としています。大きな困難に直面しても、アジアの家庭は立ち直る力と忍耐を示しています。アジアの家庭は、こうした価値観に強められると同時に、それらを伝達してもいます。先住民や他宗教の価値観がどれほどアジアの家庭を豊かにしているかにわたしたちは驚かされます。文化・宗教を異にする者どうしの結婚も、霊的豊かさを深める機会となり、また、こうした結婚が直面する複雑な文化的・宗教的諸問題のただ中で、愛に制限がないことを表す象徴となっています。真の価値観を守ってきてくれたことに対して、わたしたちはアジアの家庭に感謝するとともに、これからもアジアの家庭がこうした努力を続けてくれるよう励ましたいと思います。

 同時にわたしたちは、アジアの家庭に関して抱いている不安も表明したいと思います。新たな現実が多くの家庭の福祉を脅かしています。世界規模の新自由主義的文化が、家庭に脅威を与えています。この文化は、物質主義と世俗主義に影響された生活様式とものの考え方をもたらしながら、個人主義、自己中心主義、貪欲を掻き立てているからです。エリートが主導するグローバル化が、はかり知れない規模の貧困と移民を生み出してきました。数々の戦争と紛争も、人びとを故郷から追い立てています。広報手段と、強制的な人口計画が家庭の価値観に与える影響にも、家庭はさらされています。HIV/AIDS、非合法の薬物、ポルノグラフィーの拡大は、家庭を蝕んでいます。こうした悪影響は特に、最も傷つけられやすい若者たちに及んでいます。離婚と家庭崩壊の増加は、家族のきずなの衰弱を示す兆候です。人工妊娠中絶や、その他の生命操作の試みは、深刻な問題を提起しています。避妊への傾向は、本来の婚姻における愛を損っています。女性と子どもにたえず虐待が行われていることは悲しむべきことです。家庭の基礎として機能してきた価値観が恐るべき速さで失われつつあります。その一つの現れは、ある国々における召命の数の減少です。単親家庭、別居夫婦、または再婚した両親と、その子どもに与える影響を含めた、家庭の複雑な状況も無視することができません。わたしたちは、こうしたむずかしい諸問題に果敢に立ち向かっているアジアの家庭と連帯したいと思います。

 イエス・キリストに従う者として、わたしたちは、すべての家庭が神から与えられた愛によって生きていると考えます。神の愛だけが、いのちを強め、養うからです。神は愛です(1ヨハネ4・8)。そして、神の愛から、御子がわたしたちにいのちをもたらすために遣わされました(1ヨハネ4・9)。神の救いの計画に基づいて、御子は聖霊によって人となり、マリアとヨセフの家族の一員となりました。わたしたちは、イエスが教えてくださった神の国の価値観(マタイ5-7)がアジアの家庭の中に根づき、いのちの文化を花開かせることを望みます。いのちの文化は、神のたまものである人間のいのちを、受精から死にいたるそのあらゆる段階において尊重し、守ります。いのちの文化は、人のいのちを破壊し、搾取し、虐待するあらゆる力に断固として反対します。いのちの文化は、両親の責任ある態度と、人のいのちとその尊厳が、効率・資本・利益よりもまず第一に優先されることを積極的に推進します。いのちの文化は、先住民や他宗教がもつ家庭の価値観の保護に努めます。祈りと霊性に満たされた家庭は、愛を忠実に与え合い、いのちを確実に生み、育み、守るための聖域であると、わたしたちは考えます。アジアの家庭は、愛と交わりと互いに仕えあうことを通して、信仰共同体においても社会においても、交わりと連帯を育てるための助けとなることができます。こうしてわたしたちは一つの家族としての人類を作り上げるのです。

 神の尽きることのない愛を信じる、教会の司牧者として、わたしたち司教は、あらゆる機会を用いて家庭がより幸福になるよう努めたいと思います。わたしたちは家庭への奉仕職を強化するよう努力します。すべての家庭、特に極度の困窮に見舞われた家庭を助け、彼らの生活が満たされるまでともに歩みたいと思います。特別な意味で、わたしたちは中国(中華人民共和国)と北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)におけるカトリック信者の家庭に対して、わたしたちの愛と関心を表明したいと思います。教会を一つの神の家族に変えるという課題に挑戦している、中国におけるカトリック信者の兄弟・姉妹とわたしたちは一つです。

 共同体の建設者として、わたしたちは政府、家庭の福祉に携わる団体、教育機関、マスメディアの制作者・事業者、他の宗教を信じる兄弟・姉妹、そしてすべての善意の人びとに呼びかけたいと思います。わたしたちとともに、愛に基づく文明といのちの文化を育むための中心である、家庭を強めていこうではありませんか。
 わたしたちはアジアの家庭を、愛といのちの泉である神に委ねます。わたしたちは、あなたがたが「愛を身に着ける」ことができるように祈ります。「愛は、すべてを完成させるきずなです」(コロサイ3・14)。アジアの家庭よ、本来の姿になりなさい(教皇ヨハネ・パウロ二世『家庭――愛といのちのきずな』17参照)。家庭は、神がアジアに与えた、愛といのちのたまものだからです。

(カトリック中央協議会 司教協議会秘書室研究企画訳)

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