『カトリック教会のカテキズム綱要』序文

教皇ベネディクト十六世は、6月28日(火)午前11時から教皇庁クレメンスホールで、『カトリック教会のカテキズム綱要』を公布しました。 『カトリック教会のカテキズム綱要』は、イタリア語で205ページ、598の問答から成りま […]

教皇ベネディクト十六世は、6月28日(火)午前11時から教皇庁クレメンスホールで、『カトリック教会のカテキズム綱要』を公布しました。 『カトリック教会のカテキズム綱要』は、イタリア語で205ページ、598の問答から成ります。内容は、『カトリック教会のカテキズム』と変わりありませんが、『綱要』では新たに15の図版と、補遺(キリスト教の基本的な祈りと、教えの要約)が加えられています。各国語への翻訳は、各司教協議会にゆだねられます。 以下は、教皇ベネディクト十六世による『カトリック教会のカテキズム綱要』の認可と公布のための自発教令(2005年6月28日)と、当時『カトリック教会のカテキズム綱要』編纂委員会委員長だったヨゼフ・ラッツィンガー枢機卿(現教皇ベネディクト十六世)による『カトリック教会のカテキズム綱要』序文(2005年3月20日)の全訳です(原文はともにイタリア語)。


1 1992年10月11日に、教皇ヨハネ・パウロ二世は『カトリック教会のカテキズム』を全世界の信者に与えました。教皇は同書を、信仰の生きた源泉によってカテケージスを刷新するための「参考書」(1)と呼びました。1985年の世界代表司教会議臨時総会で表明された、信仰と道徳に関するカトリックのすべての教えについてのカテキズムを求める要望が、第2バチカン公会議(1962-1965年)開会の30年後に実現されました。
 5年後の1997年8月15日、教皇は『カトリック教会のカテキズム』ラテン語規範版を公布し、その基本的な目的を次のように確認しました。それは、「カトリックの教え全般についての正当な説明を行うことによって、教会が何を宣言し、どのような祭儀を執り行い、どのような生き方をし、日々どのような生活方針をもって祈るべきかをすべての人に知らせること」(2)です。
 
2 『カトリック教会のカテキズム』の可能性をより完全に実現するため、また、2002年10月の国際要理教育大会で示された要望に応えるために、教皇ヨハネ・パウロ二世は2003年に、ヨゼフ・ラッツィンガー教皇庁教理省長官を委員長とする委員会を設置しました。同委員会に与えられた課題は、『カトリック教会のカテキズム』の信仰内容をより簡潔にまとめた『綱要』の草案を起草することでした。2年間の作業の後、『カトリック教会のカテキズム綱要』の草案が準備され、枢機卿と司教協議会会長に送付されて、助言が求められました。草案は、全体として、応答者の大多数から積極的な評価を得ました。そこで委員会は、示された改善点の提案を考慮しながら、草案の修正を行い、最終テキストを準備しました。

3 『カトリック教会のカテキズム綱要』には3つの主な特徴があります。すなわち、『カトリック教会のカテキズム』に忠実に基づいていること、問答形式の記述、カテケージスにおける芸術的図像の使用です。
 『カトリック教会のカテキズム綱要』は、独立した書物でもなければ、けっして『カトリック教会のカテキズム』に取って代わることを意図したものでもありません。それどころか、『綱要』は常に『カトリック教会のカテキズム』を参照しています。すなわち、欄外には参照個所が示されており、また、常に『カトリック教会のカテキズム』の構造、目次、内容に従っています。実際、『カトリック教会のカテキズム綱要』は『カトリック教会のカテキズム』への関心と熱意をあらためて呼び起こすことを目指しています。『カトリック教会のカテキズム』は、その賢明な説明と、深い霊性において、常に現代の教会におけるカテケージスのための基本的なテキストであり続けるからです。
 『カトリック教会のカテキズム』と同様に、『カトリック教会のカテキズム綱要』も、キリストにおける生活の4つの根本的な法に従って、4部に分かれます。
 「信仰宣言」という標題の第1部は、「信仰の法」をまとめています。「信仰の法」とは、使徒信条で表明され、さらにニケア・コンスタンチノープル信条でより詳細に述べられた、カトリック教会の宣言する信仰です。典礼の中で信仰宣言を行うことによって、キリスト信者の会衆は、信仰の基本的な真理を生き生きと記憶にとどめるのです。
 「キリスト教の神秘を祝う」という標題の第2部は、「祭儀の法」の本質的な要素を示します。福音の告知に対して、本来の意味での応答を行うのは、秘跡における生活です。秘跡における生活を通じて、キリスト信者は、生活のあらゆる側面にわたって、救いをもたらす過越の神秘を経験し、あかしします。この過越の神秘によって、キリストはわたしたちのあがないを成し遂げてくださったからです。
 「キリストと一致して生きる」という標題の第3部は、「生活の法」を扱います。「生活の法」を通じて、洗礼を受けた者は、行動と倫理的選択を通じて、自分たちが告白し、祭儀によって祝う信仰への忠誠を示します。主イエスは、キリスト信者が、聖霊の愛により、父の子らとしての尊厳にふさわしいしかたで行動するように招いているからです。
 「キリスト教の祈り」という標題の第4部は、「祈りの法」、すなわち祈りの生活を要約します。祈る人の完全な姿を示す、イエスの模範に従って、キリスト信者も、祈りによって神と対話するように招かれています。「主の祈り」は、特別な意味をもった祈りの定式です。それは、イエスがわたしたちに教えてくださった祈りだからです。

4 『カトリック教会のカテキズム綱要』の第2の特徴は、問答形式の記述であることです。それは、古代からある、問答形式の要理教育書の形式を反映しています。目指しているのは、師と弟子の間の理想的な対話の再現です。鋭い質問を次々に投げかけられることを通して、読者は、自分の信仰の真理の新たな側面をあらためて見いだすまでに成長するよう招かれます。問答形式の記述はまた、テキストを簡潔にし、記述を本質的なことだけに限定するのに役立ちます。それは、読者が内容を把握し、場合によって、それを暗記する助けともなります。

5 第3の特徴は、いくつかの芸術的な図像を掲載したことです。これは、『カトリック教会のカテキズム綱要』が苦心した点です。図像は、キリスト教の聖画像(イコン)の豊かな遺産の中から選ばれました。数世紀にわたる公会議の伝統は、画像もまた、福音の宣教であることをわたしたちに教えています。どの時代の芸術家も、輝かしい色彩や、完璧な美の表現を通じて、救いの神秘の重要な要素を示し、信者はそれらを観想し、畏敬してきました。このことは、映像文化の時代である現代において、これまでにまして、どれほど聖画像が、ことばで表現しうる以上のことを表現することができ、福音のメッセージをきわめて効果的にかつ生き生きと伝える手段となるかを示しています。

6 第2バチカン公会議閉会から40年後、また聖体の年にあたり、この『カトリック教会のカテキズム綱要』は、あらゆる年齢と境遇のキリスト信者の真理への渇きと、信仰をもたない人々の真理と正義への渇きとを満たすための、新たな源泉となるものです。『カトリック教会のカテキズム綱要』の発表は、聖パウロ・聖ペトロ使徒の祝日に行われます。二人は普遍教会の二つの柱であり、古代世界における福音宣教者の模範です。二人は自分たちがのべ伝えるものをその目で見、殉教に至るまで、キリストの真理をあかししました。彼らの宣教者としての熱意に倣おうではありませんか。そして、教会が、信仰の輝かしい宣言を与えてくれた使徒たちの教えに常に従うことができるように、主に祈ろうではありませんか。

2005年3月20日、受難の主日
『カトリック教会のカテキズム綱要』編纂委員会委員長
ヨゼフ・ラッツィンガー枢機卿

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