2005年ウェーサク祭にあたっての仏教徒へのメッセージ

教皇庁諸宗教対話評議会のマイケル・フィッツジェラルド議長は、5月16日、仏教徒に対してウェーサク祭のメッセージを送りました。以下はその全訳です(原文は英語)。 ウェーサク祭はインドの月名のウェーサク月に行われる南方仏教( […]

教皇庁諸宗教対話評議会のマイケル・フィッツジェラルド議長は、5月16日、仏教徒に対してウェーサク祭のメッセージを送りました。以下はその全訳です(原文は英語)。
ウェーサク祭はインドの月名のウェーサク月に行われる南方仏教(上座部仏教)の祭典で、ブッダ(釈尊)の生誕・成道(悟り)・入滅を合わせて記念します。ウェーサク祭を祝う日は、南アジアでも地域によって異なり、5月15日に行われる場合と、5月22日に行われる場合があります。ちなみに日本では、釈尊の誕生のみ、灌仏会(4月8日)に祝っています。
メッセージの中で、フィッツジェラルド議長は、昨年2004年12月26日のスマトラ沖地震による津波の被害に言及し、復興支援でも協力し合った、仏教徒とキリスト教徒が、今後も人間の尊厳と人権の擁護のために協働する必要があることを述べています。

仏教徒とキリスト教徒の連帯について

親愛なる仏教徒の皆さん

1 今年もまたウェーサク祭が巡ってまいりました。この機会に皆さまに心からのご挨拶を申し上げたいと存じます。この日が、皆さまお一人ひとりにとって、また、ご家族と、皆さまの共同体にとって、喜びに満ちた日となりますように。この機会を用いて、仏教徒とカトリック信者が、ともに生活している多くの場所で、すでに両者のあいだに存在する良好な関係を深めていけることをわたしは確信しています。

2 カトリック教会は今年、第二バチカン公会議の『キリスト教以外の諸宗教に対する教会の態度についての宣言』発布40周年を祝います。この文書は、ある意味で、カトリック信者が他の伝統に属する人々との間で持つ関係を導く憲章と考えられます。本文書は、仏教や他の多くの宗教について言及しながら、「普遍なる教会は、これらの諸宗教の中に見出される真実で尊いものを何も退けない」(『キリスト教以外の諸宗教に対する教会の態度についての宣言』2)と述べています。したがって、仏教徒とカトリック信者は、多くのさまざまな形の対話を行いながら、開かれた心と誠実さと相互に対する尊敬をもって、互いに出会うことができるのです。

3 仏教徒とカトリック信者が協力し合いながら生活し、働いている国々において、彼らは「いのちの対話」を通じて、それぞれの信仰をあかししながらも、互いの理解を深め、善意を育み、隣人としての精神を促進することができます。実際、多くの仏教徒の僧侶とカトリックの男女修道者のあいだで、特別な絆が深められてきました。両者はそれぞれの僧院や修道院にお互いを迎え入れて、ともに沈黙、瞑想、考察を行ってきました。ある共同体のあいだでは、社会的な分野で協力することが可能になりましたし、また、暴力に特徴づけられた世界で平和のためにともに働いている共同体もあります。

4 2004年12月26日に起きた地震とその後の津波による被害に遭った、南アジアと東南アジアの国々においてほど、互いに協力し合う必要性を切実に感じたことはほかにありません。この惨事は、溢れ出る祈りと、憐れみの表明と、寛大な行為とを、今までに見たことのない規模で引き出しました。仏教徒とキリスト教徒は、被災者を助けるために手を取り合ってともに働いてきました。緊急の支援を行い、将来必要なものを評価するうえで、さまざまな宗教組織が協力しています。しかし、長期にわたる再建の必要性は、こうした形に現れた宗教間の連帯が、継続的に行われることを求めています。人間の尊厳を守り、人権を尊重するための解決が見つかるように、善意の人々のあいだでの協力が必要な状況は、ほかにも数多くあります。

5 今年のウェーサク祭には、家族の誰かが行方不明になった家庭がたくさん見られます。これらの家族の皆さまに対して、わたしは、この愛する家族の人々をけっして忘れず、かならず彼らを祈りのなかで思い起こすことを申し上げたいと思います。『キリスト教以外の諸宗教に対する教会の態度についての宣言』が促進しようとしてきた対話は、喜びのときも悲しみのときも、互いに語り合うようにと、わたしたちを励ましています。このような精神をもって、わたしはあらためて皆さますべてに対して、ウェーサク祭のお喜びを申し上げます。

教皇庁諸宗教対話評議会議長
  マイケル・フィッツジェラルド大司教

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