海の日曜日 2005年

船員の日を祝うにあたって、私たちの心と思いは、すべての船員、漁民、船の乗組員、船客、港湾労働者、航海競技者、ヨットに乗る人たち、そして彼らの家族たちへと向かいます。この機会にわたしたちの社会が、どれほどこれらの労働者に支 […]

船員の日を祝うにあたって、私たちの心と思いは、すべての船員、漁民、船の乗組員、船客、港湾労働者、航海競技者、ヨットに乗る人たち、そして彼らの家族たちへと向かいます。この機会にわたしたちの社会が、どれほどこれらの労働者に支えられているかを思い出しましょう。海からの食べ物、快適な暮らしのためのほとんどすべての必需品や消費物品を「わたしたちは彼らに依存しています」。現に国家間の貿易や商取引の90%以上が海路によるものです。これだけの必要性を満たすには、非常に勇気ある行動、専門的技術、犠牲、専門的意欲と力が求められます。しかし、大多数の船員たちは、世界経済に果たしている彼らの役割が理解されておらず、正当に報われていないと感じています。

 IMO(国際海事機関)、ILO(国際労働機関)、 FAO(国際食料農業機関)のような機関の努力や多くの労働組合、様々なNGOの抗議にもかかわらず、とくに漁民や船員たちの生活や尊厳に影響を及ぼしている、未だに解決されていない問題がたくさんあります。彼らすべてが平和で人間らしい生活が出来る状況を創り出す義務を社会が持っているにもかかわらず、移動者の苦しみの多くの部分は,特に人権侵害によるものです。

 それにもまして、わたしたちは、近年、船員が不当に拘束され、犯罪人とされるケースが増えてきていることを見聞きしています。チャプレンや司牧が訪船する際に、たとえそれがし牧場の目的であっても、乗組員に近づくことが非常に難しくなってきているという苦情がたくさん寄せられています。昨年、船員たちの上陸許可に厳しい制限が設けられ、それに対しても,各地で抗議が起こりました。しかし、今のところそれに対して状況が好転したということはありません。

 さらに、わたしたちは皆、HIV/AIDSが広範囲におよぶ人類の大惨事であることを知っています。船員や漁民をはじめ、共同体として世界中を旅する人たちは、重大な危機に直面しています。ですから、この世界的流行病に関しては、その問題に目覚め、これに取り組むことこそがわたしたちの義務です。そこで、わたしは世界中のAOS(注1)に、関係者を養成し、教会の道徳的教えに従って、取り組み、HIV/AIDSを患っている人たちに対して差別や偏見のあるところでは、それと闘うように励まします。わたしたちは彼らとゆらぐことのない連帯を示さなければなりません。教皇ヨハネ・パウロ2世は、HIV/AIDSで苦しんでいる人への差別的扱いについて、何度も話されました。かつて教皇は「神は差別することなく,限りなく、あなたがたすべてを愛しておられます。神はあなたがた病気の人、AIDSで苦しんでいる人を愛しておられます。神は病気の人の友人、親族、そして看病している人たちを愛しておられます。神は皆を無条件に永遠の愛で愛しておられます。」(ミッシオン・ドロレスでの演説)バシリカ、サンフランシスコ1987年9月17日)

 また、「フェア・トレード」の概念(注2)は徐々にではありますが確実に世界の多くのところで広がっていることを思い出しましょう。このことに敏感になっている消費者の数も増えてきています。海運は国際貿易の主要な部分ですので、海運、漁業、その他の領域でも「フェア・トレード」の考えがゆきわたる時が来ようとしています。

 この良き日にもう一度、海の人々に対して、教会が固い決意を持って課題に取り組み、彼らやその家族と深く連帯していることを伝えます。チャプレン、司牧者、ボランティアに対して、彼らと深く関わってくださるようにお願いします。使徒パウロの「悪に負けることなく、善を持って悪に勝ちなさい」(ロマ12・21)ということばにいつも導かれますように。これは、教皇ヨハネ・パウロ2世が繰り返し引用した聖書のことばです。

 「海の星」である聖母がいつもわたしたちの模範であり、わたしたちの「羅針盤」でありますように。すべての危機と危険からお守りくださいますよう、聖母のお取り次ぎを願います。

 神の祝福と御保護がみなさんの上にありますように。

2005年6月6日
濱尾文郎枢機卿 議長
アゴスティノ マルチェット 秘書

PAGE TOP