教皇ベネディクト十六世の2005年9月11日の「お告げの祈り」のことば 十字架と聖体

教皇ベネディクト十六世は9月11日(日)正午に、カステル・ガンドルフォ教皇公邸の窓から、中庭に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前後に教皇が述べたことばの全文の翻訳です(原文はイタリア語)。 […]

教皇ベネディクト十六世は9月11日(日)正午に、カステル・ガンドルフォ教皇公邸の窓から、中庭に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前後に教皇が述べたことばの全文の翻訳です(原文はイタリア語)。
「お告げの祈り」の後、教皇は、9月14日から16日まで、第60回国連総会において開催される、2005年国連世界サミットが、貧困問題の解決のために具体的な貢献を果たすよう求めました。このサミットでは「国連ミレニアム開発目標」が審議されます。「国連ミレニアム開発目標」では、2015年までに世界の貧困を半減させるために、富裕国がGDP(国内総生産)の0.7パーセントを拠出することを求めています。
また、英語による祝福のことばの中で、教皇は、2001年9月11日の米同時多発テロ4周年にあたり、テロの犠牲者を追悼して、次の祈りをささげました。「今日の『お告げの祈り』のために集まってくださった、英語を話す巡礼者のすべての皆様に対して、心より歓迎のご挨拶を申し上げます。今日、9月11日にあたり、わたしたちは、世界中でテロによる暴力の犠牲となったかたがたを思い起こします。あらゆるところにいる、すべての善意の人々が、憎しみを捨て、正義と連帯と平和のある世界を築いていくことができるように、神が力づけてくださいますように」。


親愛なる兄弟姉妹の皆様。
 今週の水曜日、9月14日に、わたしたちは十字架称賛の祝日を祝います。聖体にささげた年の中で、この祝日は特別な意味をもっています。この祝日は、感謝の祭儀と十字架の神秘を結びつける、深く、切り離すことのできないきずなについて考察するよう、わたしたちを招くからです。実際、すべてのミサは、あがないをもたらすキリストのいけにえを現実のものとします。敬愛すべきヨハネ・パウロ二世は、回勅『教会にいのちを与える聖体』でこう述べています。「キリスト信者の会衆とともに聖なるミサを行うとき、司祭は皆」、ゴルゴタへと、すなわち十字架の死の「時」へと導かれます(4節)。
 それゆえ聖体は、過越の神秘全体の記念です。キリストは苦しみを受け、死に、陰府(よみ)に下り、復活して、天に昇りました。また、十字架は、わたしたちが触れることのできる、限りない愛のわざの現れです。このわざを通して、神の子は、人間と世界を罪と死から救いました。だから、十字架のしるしは、キリスト信者の祈りにおいて、基本的なしぐさとなるのです。十字架のしるしをすることによって、わたしたちは、わたしたちのために死んで復活した、神なるかたに、目に見えるかたちで、公(おおやけ)に「はい」と宣言します。神は、その愛のつつましさと弱さにおいて、全能であり、世のいかなる権力と知恵よりも強いからです。
 聖体の聖別の後、信者の会衆は、十字架につけられて復活したキリストが現実に自分たちとともにいることを意識しながら、こう唱えます。「主の死を思い、復活をたたえ、告げ知らせよう、主が来られるまで」。共同体は、信仰の目をもって、さまざまな受難のしるしのうちに、生けるイエスを認めます。また、トマスとともに、驚きに満たされながら、あらためてこういいます。「わたしの主、わたしの神よ」(ヨハネ20・28)。十字架と同じように、聖体は、死と栄光の神秘です。この神秘はたんなる過去の出来事ではありません。この過越を通して、キリストは栄光に入り(ルカ24・26参照)、あらゆる敵意を滅ぼして、全人類を和解させてくださったからです。だから、典礼はわたしたちに、揺るぎない希望をもってこう祈るよう招きます。「主よ、わたしたちとともにとどまってください」。主よ、あなたはあなたの聖なる十字架によって、世をあがなってくださったからです。
 カルワリオ(されこうべ)の丘で十字架のかたわらにおられたマリアは、同じように、教会とともにいてくださいます。またマリアは、教会の母として、わたしたちが感謝の祭儀を行うときに、いつもわたしたちとともにいてくださいます(『教会にいのちを与える聖体』57節参照)。だから、マリア以上に、信仰のうちに聖なるミサを理解し、体験できるように、わたしたちを教えてくださるかたはいません。マリアは、あがないをもたらすキリストのいけにえへと、わたしたちを結びつけてくださるからです。聖体拝領をするときにも、わたしたちは、マリアのように、マリアと心を一つにしながら、十字架の木を抱きます。イエスはその愛をもって、この十字架の木を救いの道具に変えました。そして、わたしたちは、「アーメン」と唱えます。それは、十字架につけられて復活した、愛である主への、わたしたちの「はい」なのです。

(「お告げの祈り」の後に述べられたことば)
 今週の水曜日(9月14日)から、ニューヨークの国連本部において、各国政府首脳のサミットが開催されます。このサミットでは、世界平和、人権の尊重、開発の促進、国連機能の強化に関するさまざまな重要課題が討議されます。恒例に従って、聖座もこの会議に招待されており、国務省長官のアンジェロ・ソダーノ枢機卿がわたしの代理として出席します。
 わたしは、この会議に集まる政治的指導者たちが、一致と寛大な連帯の精神に基づいて、すでに定められた大きな目標を達成するために、適切な決断を行ってくださることを、心から希望しています。特にわたしは、きわめて多くの人々を苦しめている、極度の貧困と病気と飢餓という、もっとも緊急を要する問題に対応するために、各国首脳が効果的で具体的な措置をしっかりと講じてくださることを望んでいます。

PAGE TOP