教皇ベネディクト十六世の2005年10月16日の「お告げの祈り」のことば 教皇ヨハネ・パウロ二世教皇選出27周年に際して

教皇ベネディクト十六世は、10月16日(日)正午に、教皇庁公邸書斎の窓から、サンピエトロ広場に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です(原文はイタリア語)。 […]

教皇ベネディクト十六世は、10月16日(日)正午に、教皇庁公邸書斎の窓から、サンピエトロ広場に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です(原文はイタリア語)。
「お告げの祈り」の後、フランス語で述べた祝福のことばの中で、教皇は、翌日の17日に行われる「世界貧困撲滅のための日」に言及して、次のように述べました。「明日(10月17日)は世界貧困撲滅のための日です。貧困は、人類が絶えず根絶のために戦わなければならない災厄です。わたしたちは、誰一人として社会からのけ者にされることのないように、常にいっそう連帯するよう招かれています。わたしは、尊厳のある生を求めて勇気をもって戦い、家族と友人が必要とするものを気遣っている、貧しい人々とともに祈ります。わたしは、困窮した人々のために働くすべての人を祝福します。そして、政府機関や指導者が、貧しい人の叫びを聞き、貧困撲滅のための活動を強化してくださるように呼びかけます」。「世界貧困撲滅のための日」は、ヨゼフ・レシンスキ神父によって作られました。レシンスキ神父は、1967年にパリ近郊ノアジ・ル・グランの緊急キャンプに住む人とともに、国際NGO「国際運動ATD第四世界」(ATDは「すべての貧困への援助」の意味)を設立しました。「国際運動ATD第四世界」は、現在、世界26か国で、貧しい地域の子どもやコミュニティのために活動しています。


親愛なる兄弟姉妹の皆様。
 27年前の今日、主は、クラクフの大司教、カロル・ヴォイティワ枢機卿を、教皇選出からわずか1か月で逝去したヨハネ・パウロ一世の後継者として招きました。ヨハネ・パウロ二世が始めた教皇職は、教会の歴史の中で最長のものの一つとなりました。「遠い国から来た」ヨハネ・パウロ二世は、教皇在位中、多くのキリスト信者でない人や、無宗教の人々からも、道徳的な権威とみなされました。そのことは、人々が感動的なかたちで、教皇の病気を心配し、また、死後、深い哀悼の念を示したことからわかります。
 バチカンの地下墓地のヨハネ・パウロ二世の墓には、今なお多くの信者の巡礼者が途切れることなく訪れ続けています。このことはまた、わたしたちの敬愛するヨハネ・パウロ二世が、どれだけ人々の心を捉えたかを雄弁に語るしるしでもあります。ヨハネ・パウロ二世は何よりも、その愛のあかしと、自らを苦しみにささげたことによって、人々の心を捉えました。わたしたちは、ヨハネ・パウロ二世において、信仰と祈りの力をたたえます。わたしたちはまた、ヨハネ・パウロ二世が自らを至聖なるマリアへと完全に委ねたしかたをも、たたえます。マリアは、ヨハネ・パウロ二世を常に、特にその生涯においてきわめて困難で悲しみに満ちたときに、支え、守ってくださいました。
 ヨハネ・パウロ二世は、マリアを通してイエスへと完全にささげられた教皇だったということができます。それは、「すべてはあなたのものです」(Totus tuus)というヨハネ・パウロ二世の標語がはっきりと示しています。ヨハネ・パウロ二世は、ロザリオの月の最中に選出されました。ヨハネ・パウロ二世は、ほとんどロザリオを手放すことがありませんでした。 こうして、ロザリオは、ヨハネ・パウロ二世の教皇職の象徴の一つとなりました。ヨハネ・パウロ二世の教皇職は、原罪の汚れなきおとめの、母としての気遣いによって見守られていました。ラジオやテレビを通じて、世界中の信者は何度も、教皇とともにこのマリアの祈りをささげました。そして、教皇の模範と教えによって、この祈りが本来持っている、観想的であるとともにキリスト中心的な意味を再発見することができました(使徒的書簡『おとめマリアのロザリオ』9-17参照)。
 実際、ロザリオは、神のことばの黙想や、典礼の祈りと対立するものではありません。それどころか、ロザリオはそれらを自然に、また理想的なかたちで補います。特にそれは、感謝の祭儀の準備として、また感謝の祭儀への感謝として用いることができます。わたしたちは、福音や、秘跡の中でキリストに出会います。喜び、光、苦しみ、栄えの神秘によって、わたしたちはこのキリストを、マリアとともに、その生涯のさまざまな出来事を通して観想するのです。
 こうしてわたしたちは、マリアの学びやで、その神である御子に似たものとなり、わたしたちの生活を通して御子を告げ知らせることを学びます。感謝の祭儀は、キリスト信者にとって一日の中心です。そうであれば、ロザリオは、特別なしかたで、キリストとの交わりを深めるために役立ちます。ロザリオによって、わたしたちはキリストから心の目を離さずに生きることができるようになります。こうしてわたしたちは、すべての人に対して、またすべてのものに、キリストの憐れみ深い愛を輝かすようになるのです。
 観想的であるとともに、宣教者である。それが、わたしたちの敬愛する教皇ヨハネ・パウロ二世の姿でした。ヨハネ・パウロ二世がそのように生きることができたのは、その神との深い一致によるものでした。この一致は、日々の感謝の祭儀と、長い祈りによって育まれたのです。
 ヨハネ・パウロ二世は、「お告げの祈り」を唱えるのをとても大切にしました。この「お告げの祈り」の時にあたり、わたしたちは喜びをもって、また、わたしたちの務めとして、この教皇選出の記念日にヨハネ・パウロ二世を思い起こします。そして、使徒ペトロの後継者としてかくもふさわしい人を神が教会と世界に与えてくださったことを、あらためて感謝したいと思います。ヨハネ・パウロ二世の残した貴重な遺産を大切にしていくことができるように、おとめマリアがわたしたちを助けてくださいますように。

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