教皇ベネディクト十六世の2005年10月30日の「お告げの祈り」のことば 第二バチカン公会議閉会40周年を前に

教皇ベネディクト十六世は、10月30日(日)正午(日本時間同日午後8時)に、教皇庁公邸書斎の窓から、サンピエトロ広場に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です […]

教皇ベネディクト十六世は、10月30日(日)正午(日本時間同日午後8時)に、教皇庁公邸書斎の窓から、サンピエトロ広場に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です(原文はイタリア語)。
お告げの祈りの後、教皇はまず、10月8日にパキスタンで起こった地震による被災者のためのさらなる復興支援を求めて、次のようにイタリア語で述べました。「ご存知の通り、去る10月8日、強い地震がカシミール地方、特にパキスタン周辺を襲いました。その結果、死者は5万人を越え、甚大な被害がもたらされました。今回の災害では、多くの形で支援活動が行われていますが、必要なものはこれまで行われた支援でまだ足りません。それゆえ、これだけ大きな被害を受けた人々を支援するために、国際社会がこれまでの数倍の努力を払ってくださるよう、あらためて呼びかけたいと思います」。


親愛なる兄弟姉妹の皆様。
 40年前の1965年10月28日、第二バチカン公会議の第7公開会議が開催されました。続いて3回の公開会議が速やかに開催されました。12月8日に開催された最後の(第10回)公開会議をもって公会議は終了しました。3年前から開始した、この教会にとっての歴史的な出来事の最終段階にあたるこの期間に、公会議文書の多くが承認されました。こうした文書のいくつかは、よく知られており、今でもしばしば引用されています。また、それほど知られていない文書もあります。けれども、公会議のすべての文書は記憶にとどめられるに値します。なぜなら、それらの文書はその価値を失っていないばかりか、ある意味ではかつてよりもいっそう、現代に通用する意味をもつことが明らかになってきたからです。
 今日、わたしは、神のしもべ、教皇パウロ六世と公会議教父たちが1965年10月28日に署名した5つの文書を思い起こしたいと思います。すなわち、『教会における司教の司牧任務に関する教令』、『修道生活の刷新・適応に関する教令』、『司祭の養成に関する教令』、『キリスト教的教育に関する宣言』、そして最後に、『キリスト教以外の諸宗教に対する教会の態度についての宣言』です。
 司祭の養成、奉献生活、司教の任務というテーマは、1990年と1995年と2001年に開催された世界代表司教会議通常総会のテーマでした。これらの通常総会は、第二バチカン公会議の教えをあらためて取り上げて、大きく進展させました。わたしの敬愛すべき前任者である、神のしもべ、ヨハネ・パウロ二世が書いた、シノドス後の使徒的勧告『現代の司祭養成』、『奉献生活』、『神の民の牧者』が示している通りです。

『キリスト教的教育に関する宣言』

 しかしながら、教育に関して書かれた公会議文書はあまり知られていません。教会は常に青年の教育に取り組んできました。公会議は、人間生活と社会の進歩にとって、教育が「重大な意義」をもつことを認めました(『キリスト教的教育に関する宣言』序参照)。世界規模のコミュニケーションが行われる時代である現代でも、教会共同体は教育制度の重要性を認めています。教育制度は、真理と善とに開かれた、人格としての人間をまず第一に優先するものでなければなりません。第一の、主たる教育者は、両親です。両親は、補助性の原則に従って、市民社会の補助を受けます(同3参照)。
 キリストによって、「いのちの道」(同3参照)を告げる任務を委ねられた教会は、教育について特別な責任を感じています。教会はこの使命をさまざまな場で果たします。すなわち、家庭、小教区、さまざまな団体、運動団体、養成や福音宣教のためのさまざまなグループ、そして、特別な意味で、学校、上級学校、大学においてです(同5-12参照)。

『キリスト教以外の諸宗教に対する教会の態度についての宣言』

 『キリスト教以外の諸宗教に対する教会の態度についての宣言』も、今日、重大な意味をもっています。この文書は、キリスト教以外の諸宗教に対する教会共同体の態度について述べているからです。「すべての民族は一つの共同体をなし」(『キリスト教以外の諸宗教に対する教会の態度についての宣言』1)、教会は「諸国民の間にも一致と愛を育む」使命をもっているという原則に従って、公会議は、「諸宗教の中に見いだされる真実で尊いものを何も退けません」。そして、「道であり、真理であり、いのちである」キリストをすべての人に告げ知らせます。人々はキリストのうちに「宗教生活の充満を見いだす」(同3)からです。『キリスト教以外の諸宗教に対する教会の態度についての宣言』によって、第二バチカン公会議の教父たちは、ある基本的な真理を提示しました。すなわち、教父たちは、キリスト信者とユダヤ人を結びつける特別なきずなをはっきりと思い起こし(同4)、イスラム教徒や(同3)その他の諸宗教を信じる人々を尊重することを確認しました(同2)。教父たちはまた、普遍的な兄弟愛の精神によって、宗教的な差別や迫害が禁じられることも確認しました(同5)。
 親愛なる兄弟姉妹の皆様。わたしは、皆様がこれらの文書を手にとって読んでくださるよう招きたいと思います。そして、わたしとともに、おとめマリアに祈ってくださるよう願います。すべての信者が、第二バチカン公会議の精神を生き生きと保つことができるように、マリアが助けてくださいますように。こうして、わたしたちが、神にかたどって創造された人間についての神のみ旨に答えて、世界の中に普遍的な兄弟愛を築くことに貢献することができますように。

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