教皇ベネディクト十六世の2006年7月16日の「お告げの祈り」のことば カルメル山の聖母について

教皇ベネディクト十六世は、7月16日(日)正午に、休暇先のヴァッレ・ダオスタ州レ・コーンブで、集まった5,000人の信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です(原文はイ […]

教皇ベネディクト十六世は、7月16日(日)正午に、休暇先のヴァッレ・ダオスタ州レ・コーンブで、集まった5,000人の信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です(原文はイタリア語)。
「お告げの祈り」の後、教皇はイタリア語で、戦火の拡大する中東情勢について次のように述べて、聖地と中東の平和のための祈りを呼びかけました。
「この数日、聖地から届く知らせは、すべての人に新たな深刻な懸念を呼び起こしています。特にレバノンでも戦争行為が拡大し、また、市民の間に多数の犠牲者が生じているからです。残念なことに、これらの残酷な対立の根源には、法と正義の客観的な侵犯があります。しかし、テロ行為も報復も、特にそれらが市民に悲惨な結果をもたらす場合に、正当化できるものではありません。苦い経験が示しているように、こうした方法によって積極的な成果をもたらすことはできません。
 今日はカルメルの聖母にささげられた日です。カルメルは、レバノンから数キロメートルのところにある聖地の山です。カルメル山はイスラエルの町ハイファにそびえ立っています。このハイファも最近攻撃を受けました。平和の元后であるマリアに祈ろうではありませんか。マリアが根本的な和解のたまものを神に願い求めてくださいますように。こうして政治指導者が理性に基づく道に立ち帰り、対話と合意のための新たな可能性が開かれますように。このような見地に基づいて、わたしは、地方教会が聖地と中東全体の平和のために特別な祈りをささげてくださるようにお願いします」。


親愛なる兄弟姉妹の皆様。
 今年もヴァッレ・ダオスタのこの地で――それも、わたしたちの敬愛するヨハネ・パウロ二世を何度も迎えた家で、休暇の時を過ごすことができることをうれしく思います。わたしはすぐに、このすばらしいアルプスの景色に浸りました。それはからだと心に新たな力を与えてくれます。また今日、わたしはこの家族的な集いを体験できたことを喜ばしく思います。当地の住民と滞在者の一人ひとりの皆様に心からごあいさつ申し上げます。
 まずわたしは、このヴァッレ・ダオスタの教会の司牧者であるアオスタの司教、ジュゼッペ・アンフォッシ司教と、教区共同体の司祭、男女修道者、そして信徒の皆様にごあいさつと感謝を申し上げたいと思います。わたしは皆様の一人ひとりを、特に病者と苦しむ人を、祈りにおいて思い起こすことを約束いたします。さらにわたしは、教皇が使うためにこの家を提供してくださった、サレジオ会の皆様に感謝しております。国と地域の行政担当者、市の担当者、警備担当者、そしてわたしが静かに滞在することができるためにさまざまなかたちで協力してくださっているすべてのかたがたに心からごあいさつ申し上げます。主が皆様に報いてくださいますように。
 幸いな偶然の一致によって、今日の日曜日は7月16日です。7月16日は、典礼においてカルメル山の聖母を記念する日です。地中海東岸にそびえる、ガリラヤの高峰カルメル山の斜面には、多くの天然の洞窟があり、隠遁者たちはそこに好んで住みました。
 こうした隠遁者の中でもっとも有名なのが、偉大な預言者エリヤです。エリヤはキリスト紀元前9世紀の人です。エリヤは、唯一の真の神への純粋な信仰を、偶像崇拝の堕落から勇気をもって守りました。エリヤの姿から霊感を受けて、観想修道会のカルメル会が生まれました。この修道会の会員には、アビラのテレジア、十字架のヨハネ、幼いイエスのテレジア、十字架のテレサ・ベネディクタ(入会前の名前はエディット・シュタイン)などの偉大な聖人がいます。
 カルメル会士たちは、キリスト信者の民に、カルメル山の聖なるおとめへの信心を広めました。彼らはこの聖なるおとめを、神への祈りと観想と献身の模範として示したのです。実際、マリアは、受肉したみことばであるイエスこそが、人間の神との出会いの頂点であり、頂であることを、最初に、またこの上ないしかたで、信じ、また体験しました。
 みことばを完全に受け入れたマリアは、「幸いにも聖なる山に達し」(カルメル山の聖母の記念日の集会祈願)、魂においてもからだにおいても、主とともに永遠に生きておられます。このカルメル山の元后に、今日わたしは、世界中の観想生活を送る共同体――特にカルメル会を委ねたいと思います。わたしはカルメル会の中でも、当地からほど近くにあるクワルト修道院のことを心にとめます。マリアの助けによって、すべてのキリスト信者が沈黙と祈りのうちに神と出会うことができますように。

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