教皇ベネディクト十六世の2007年1月14日の「お告げの祈り」のことば 世界難民移住移動者の日にあたって

教皇ベネディクト十六世は、1月14日(日)正午に、教皇公邸書斎の窓から、サンピエトロ広場に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です(原文はイタリア語)。 この […]

教皇ベネディクト十六世は、1月14日(日)正午に、教皇公邸書斎の窓から、サンピエトロ広場に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です(原文はイタリア語)。
この日の1月14日、ローマでは「世界難民移住移動者の日」が行われました(日本では、世界難民移住移動者の日を9月の第四日曜日――2007年は9月23日――に行います)。2007年の「世界難民移住移動者の日」のテーマは「移住者の家族」です。教皇の「2007年世界難民移住移動者の日メッセージ」(2006年10月18日付)は2006年11月14日に発表されています。
最後に言及された、聖フランチェスカ・サヴェリア・カブリーニ(1850-1917年)はイタリア生まれの修道女です。1888年にイエスのみ心の女子宣教会を創立。1889年に渡米し、ニューヨークで孤児院、学校、要理教室、病院を建設してイタリア移民のために働きました。さらに全米・南米またヨーロッパにも修道院、学校、孤児院、病院を建設しました。1946年列聖。


親愛なる兄弟姉妹の皆様。
 今日の主日は、毎年恒例の「世界難民移住移動者の日」を行います。この機会に、わたしはすべての善意の人びと、特にキリスト教共同体に、特別なメッセージを送ります。メッセージのテーマは「移住者の家族」です。
 わたしたちはナザレの聖家族に目を向けることができます。ナザレの聖家族はすべての家族のイコンです。それは神の像を映し出しているからです。この神の像は、すべての人間の家族の心の中で守られています。たとえ人間の家族が人生の試練によって弱められ、場合によってゆがめられたときもです。
 福音書記者マタイは語ります。イエスが誕生して間もなく、聖ヨセフは幼子とその母を連れてエジプトに行かなければなりませんでした。それは、ヘロデ王の迫害を逃れるためでした(マタイ2・13-15参照)。
 わたしたちはナザレの家族の悲劇のうちに、多くの移住者、特に難民、追放された人、避難民、亡命者、そして迫害された人の悲痛な状況をかいま見ることができます。とりわけわたしたちは移住者の家族そのものの困難を知ります。すなわち、生活の不自由、屈辱、困窮、よるべのない状態です。
 実際、人間の移動という現象は、きわめて広く、またさまざまな形で見られます。最近の国連の推計によれば、経済的な理由による移住者は約2億人、難民は約9百万人、留学生は約2百万人います。
 この多数の兄弟姉妹に、国内避難民と非正規の移住者を加えなければなりません。そして、彼らが皆、それぞれのしかたで家族をもっていることを考慮しなければなりません。ですから移住者とその家族に対して、特別な立法・司法・行政の保護の助けや、さまざまな施設、相談所、社会的・司牧的な援助機関のネットワークを通じた配慮を行うことが重要です。
 わたしは、移住者の流れとあらゆる人の移動に関して釣り合いのとれた管理が速やかに行われることを願います。それは、正規の移住者と家族の再統合に役立つ具体的な措置から始まります。また、女性と少数者に特別な注意を払わなければなりません。
 じつに、国際的な移住の分野においても、人間の人格が常に中心に置かれなければなりません。すべての移住者の人間の尊厳を尊重するとともに、移住者の側も、移住者を受け入れる社会の価値観を認めることによって、初めて、家族を、その国の社会的・経済的・政治的制度に公正なしかたで統合することが可能となります。
 親愛なる友人の皆様。移住という現実をたんなる問題として考えるのでなく、同時に、また何よりも、それを人類の進歩の大いなる源泉と考えなければなりません。移住者の家族は特別な意味でこうした源泉となります。そのために、移住者の家族をそれ自体として尊重し、家族が回復できないしかたで分断されることなく、一致を保ち、再統合できるようにしなければなりません。それは、移住者の家族が人生のゆりかごとしての、また人間の人格を受け入れ、教育する最初の場としての使命を果たすことができるためです。
 聖なるおとめマリアと、移住者の保護者である聖フランチェスカ・サヴェリア・カブリーニの執り成しによって、このことをともに主に願おうではありませんか。

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