教皇ベネディクト十六世の2007年7月29日の「お告げの祈り」のことば 核の平和利用について

教皇ベネディクト十六世は、年間第17主日の7月29日(日)正午に、夏季滞在先のカステル・ガンドルフォ教皇公邸の窓から、中庭に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻 […]

教皇ベネディクト十六世は、年間第17主日の7月29日(日)正午に、夏季滞在先のカステル・ガンドルフォ教皇公邸の窓から、中庭に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です(原文はイタリア語)。
「お告げの祈り」の後、教皇はイタリア語で、アフガニスタンで誘拐された韓国人グループの解放を求める呼びかけを行いました。教皇の呼びかけは次の通りです。
「今、アフガニスタンの韓国人の人質のための呼びかけを行います。自分たちの目標の要求のために、罪のない人を道具として用いる武装グループの活動が広まっています。このような行動は人間の尊厳の重大な侵害です。それは文明と法のあらゆる基本的な規範に反し、神法を深刻なしかたで侵すものです。わたしは、このような犯罪者が悪行をやめ、彼らが誘拐した人々を無事に帰すよう呼びかけます」。
7月19日(木)、アフガニスタン東部ガザニ州で、韓国の福音派の「セムムル(泉の水)教会」の牧師と信者23名がイスラーム原理主義勢力タリバンにより拉致され、そのうちペ・ヒョンギュ牧師(42歳)は25日(水)に殺害されています。
教皇は7月27日(金)に、休暇を過ごしていた北イタリアのヴェネト州ベッルーノ県ロレンツァーゴ・ディ・カドーレからカステル・ガンドルフォに移りました。


親愛なる兄弟姉妹の皆様。
  一昨日ロレンツァーゴから戻り、再びカステル・ガンドルフォに来ることができたことをうれしく思います。神のみ旨なら、この美しい町のなつかしい雰囲気の中に、わたしは残りの夏の間とどまるつもりです。カドーレの山地で静かな日々を過ごすことができたことを、あらためて主に感謝したいと感じています。カドーレでのわたしの滞在をよく準備し、注意深くご配慮くださったすべてのかたがたにも感謝しています。親愛なる巡礼者の皆様。同じ愛をもって、わたしは皆様にごあいさつ申し上げます。とくにカステル・ガンドルフォの住民の皆様にごあいさつ申し上げます。皆様は変わらぬ温かさでわたしを受け入れ、わたしが皆様と過ごす間、いつも慎み深くわたしとともにいてくださってきたからです。
  先週の日曜日、わたしは90年前の8月1日に教皇ベネディクト十五世が第一次世界大戦の交戦国に向けて発表した提案を思い起こしながら、平和の問題について考察しました。今、新たな理由に導かれて、わたしはこの問題に関わるもう一つの重要なテーマを考察します。実際、今日はちょうどIAEA(国際原子力機関)憲章発効50周年記念日です。IAEAは「全世界における平和、保健および繁栄に対する原子力の貢献を促進し、および増大する」(IAEA憲章第2条)ことを目的として設立されました。聖座はIAEAの目的を完全に承認し、設立以来その加盟国となり、その活動を支援し続けています。過去50年の画期的な変化が示すように、人類が置かれた困難な十字路において、核兵器の不拡散を奨励し、条約に基づく漸進的な核軍縮を促進し、本来の開発のための核技術の平和的かつ安全な使用を援助する――その際、環境を尊重し、発展途上国の人々に常に留意しなければなりません――という課題は、いっそう今日的かつ緊急のものとなっています。そのためわたしはこの3つの目的を断固として実現しようと努める人々の努力が実を結ぶことを願います。そして、「こうして節約される資源が、すべての人、とくに貧しい人のための開発プロジェクトに充てることができる」(教皇ベネディクト十六世「2006年世界平和の日メッセージ」13)ようになることを望みます。実際、この機会に次のことをあらためて強調することは適切です。「軍備拡張競争に代わって、『諸価値の優先順位や序列を見直して』倫理的・文化的・経済的発展を目標にして資源を集中させる共同の努力が必要です」(『カトリック教会のカテキズム』2438)。
  わたしたちの平和への祈願を、至聖なるマリアの執り成しにあらためて委ねようではありませんか。とくに科学技術の知識が、国際法を完全なしかたで尊重しながら、常に責任をもって、共通善のために用いられますように。祈りましょう。どうか人類が平和のうちに生き、すべての人が自らを兄弟として、すなわち唯一の神なる父の子として感じることができますように。

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