教皇ベネディクト十六世の2007年11月4日の「お告げの祈り」のことば 愛の福音

教皇ベネディクト十六世は、年間第31主日の11月4日(日)正午に、教皇公邸書斎の窓から、サンピエトロ広場に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です(原文はイタ […]

教皇ベネディクト十六世は、年間第31主日の11月4日(日)正午に、教皇公邸書斎の窓から、サンピエトロ広場に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です(原文はイタリア語)。
「お告げの祈り」の後、教皇は、最近のトルコ・イラク国境の情勢について次の呼びかけを行いました。
「ここ数日、トルコとイラクの国境地域での出来事に関する知らせは、わたしとすべての人にとって、心配の種となっています。それゆえわたしは、トルコとイラクのクルド人の間で生じた問題を平和的に解決するためにあらゆる努力を行ってくださるよう促します。
 この地域には、この数年間、政情不安とテロのためイラクでの生活が困難となり、そこから逃れた多くの人が避難していることを忘れることはできません。多くのキリスト教徒を含むこの難民の人々の善を考慮しながら、わたしはすべての関係者が平和的解決をもたらすために努めることを強く望みます。
 さらにわたしは移住者と地域住民の関係が高い市民道徳の精神に基づいて発展することを望みます。この市民道徳の精神は、すべての民族と国家の霊的・文化的価値観の成果だからです。治安維持と難民の受け入れの責任者が権利と義務を保障するために適切な手段を用いることができますように。この権利と義務が諸民族のあらゆる真の共存と出会いの基盤だからです」。
イラク北部ではクルド人武装組織のクルド労働者党(PKK)とトルコ軍の武力衝突が続いています。


親愛なる兄弟姉妹の皆様。
 今日の典礼は、エリコの町でのイエスとザアカイの出会いに関する福音の有名な話を黙想するように示します。ザアカイとはいかなる人だったのでしょうか。ザアカイは金持ちの「徴税人」でした。「徴税人」とはローマ当局に納める税金を集める人でした。だからザアカイは人々から罪人だと考えられたのです。イエスがエリコを通ると知って、イエスを見ようという強い願いに駆られたザアカイは、背が低かったので、木に登りました。イエスはこの木の下に立ち止まり、ザアカイを見上げ、ザアカイの名を呼びました。「ザアカイ、急いで降りて来なさい。今日は、ぜひあなたの家に泊まらなければならない」(ルカ19・5)。この簡単なことばの中にどれほど多くの意味がこめられていることでしょうか。「ザアカイ」。イエスは皆が軽蔑する人の名を呼びました。「今日」。そうです、まさに今、ザアカイにとって救いの時が来ました。「泊まらなければならない」。なぜ「なければならない」のでしょうか。憐れみ深い父は、イエスが行って、「失われたものを捜して救う」(ルカ19・10)ことを望まれるからです。思いがけないイエスとの出会いは、ザアカイの人生を完全に変えました。ザアカイはイエスに向かって宣言します。「主よ、わたしは財産の半分を貧しい人々に施します。また、誰かから何かだまし取っていたら、それを四倍にして返します」(ルカ19・8)。愛は神の心から流れ出て、人の心を通じて働きます。この愛が世界を造り変える力です。福音はあらためてこのことをわたしたちに語ります。
 この真理は、今日記念する聖人であるカロロ・ボロメオ(1538-1584年)のあかしによって特別なしかたで輝き出ます。カロロ・ボロメオはミラノの大司教です。聖カロロ・ボロメオの姿は16世紀において、愛のわざと教えと使徒的熱意と、また何よりも祈りにおける模範的な司牧者として浮かび上がります。カロロ・ボロメオはいいます。「わたしたちはひざまずくことによって魂に打ち勝ちます」。まだ25歳のときに司教に叙階されたボロメオは、司教が自分の教区に居住することを命じたトリエント公会議の教令を実践しました。そして彼はアンブロジオ教会に自分のすべてをささげました。ボロメオは教区全体を3回訪問しました。管区会議を6回、教区会議を11回招集しました。新たな世代の司祭を養成するために神学院を設立しました。病院を建て、家族の富を貧しい人への奉仕に用いました。権力者から教会の権利を擁護しました。修道生活を改革し、在俗司祭の会である「聖アンブロジオと聖カルロ献身者会」を創立しました。1576年、ペストがミラノで猛威をふるったとき、ボロメオは病人を見舞い、慰め、自分の財産をすべて彼らにささげました。ボロメオの標語は「謙遜(Humilitas)」の一語だけで表されます。主イエスと同じように、この謙遜に駆り立てられながら、ボロメオは、すべての人のしもべとなるために自分を捨てました。
 わたしの敬愛すべき前任者であるヨハネ・パウロ二世は、聖カロロの霊名をもち、聖カロロに信心をささげました。ヨハネ・パウロ二世を思い起こしながら、世界中のすべての司教を聖カロロの取り次ぎにゆだねたいと思います。すべての司教のために、教会の母である至聖なるマリアの変わることのない天からのご保護を祈り求めます。

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