教皇ベネディクト十六世の2007年11月11日の「お告げの祈り」のことば トゥールの聖マルチノ

教皇ベネディクト十六世は、年間第32主日の11月11日(日)正午に、教皇公邸書斎の窓から、サンピエトロ広場に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です(原文はイ […]

教皇ベネディクト十六世は、年間第32主日の11月11日(日)正午に、教皇公邸書斎の窓から、サンピエトロ広場に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です(原文はイタリア語)。
「お告げの祈り」の後、教皇は、レバノンの情勢について次の呼びかけを行いました。
「レバノン国民議会は間もなく新しい国家元首を選出するよう求められています。最近の数日間に行われたさまざまな取組みが示すように、今はレバノンとレバノンの国家組織の存続そのものがかかった重大な時期です。わたしは最近マロン典礼教会の総大司教のナスララー・スフェイル枢機卿が表明した懸念と、新たに選出された大統領がすべてのレバノン国民を認めてほしいという望みを自分のものとします。ともにレバノンの聖母に願い求めようではありませんか。どうか聖母が、関係するすべての勢力に、必要とされている個人的利害からの離脱と、共通善への真の情熱を与えてくださいますように」。
レバノンではエミール・ラフード大統領(1998年11月就任、2004年9月の憲法改正で3年間の任期延長)の任期が11月23日に満了します。大統領選は今年9月25日、10月23日と実施が2回にわたり延期されたのに続いて、11月10日には、11月12日の実施予定が21日に三度延期されています。


親愛なる兄弟姉妹の皆様。
  今日の11月11日に教会はトゥールの司教聖マルチノ(Martinus Turonensis 336頃〔または316/317〕-397年)を記念します。聖マルチノはヨーロッパで最もよく知られ、また崇敬されている聖人の一人です。316年頃パンノニア(現在のハンガリー)で異教徒の両親の間に生まれたマルチノは、父によって兵役に就かされました。まだ若いときに、マルチノはキリスト教に出会い、多くの困難を乗り越えて、洗礼を準備するために洗礼志願者となりました。20歳頃洗礼の秘跡を受けましたが、さらに数年間軍務を続けなければなりませんでした。軍務に就いている間、マルチノは新たな生活のしかたをあかししました。すなわち彼はすべての人を尊敬また理解し、奴隷を兄弟のように扱い、粗野な振舞いを避けました。軍務を離れると、マルチノはガリア(フランス)に行き、ポワティエの聖なる司教ヒラリオ(Hilarius Pictaviensis 315頃-367年)のところに滞在しました。マルチノはヒラリオから助祭と司祭の叙階を受け、修道生活を送ろうと決め、何人かの弟子とともにリギュジェにヨーロッパ最古のものとして知られる修道院を創立しました。約10年後、司牧者なしで過ごしていたトゥールのキリスト信者が、マルチノをトゥールの司教としました。そのときからマルチノは地方での福音宣教と聖職者の教育に熱心に取り組みました。聖マルチノは多くの奇跡を起こしたとされますが、何よりも兄弟愛のわざによってよく知られています。まだ若い兵士だったとき、マルチノは道で寒さに凍え震えていた貧しい人に出会いました。マルチノは外套を脱ぎ、剣で二つに引き裂くと、この貧しい人に半分を与えました。その夜、夢の中でイエスが現れ、マルチノが与えたのと同じ外套をまとって微笑みました。
  親愛なる兄弟姉妹の皆様。聖マルチノの愛のわざは、イエスを促したのと同じ精神を示しています。イエスは飢えた群衆のためにパンを増やしました。何よりもイエスは聖体のうちにご自身を糧として人類に与えました。聖体は神の愛の最高のしるし、すなわち愛の秘跡(Sacramentum caritatis)だからです。この分かち合いの精神によって、隣人愛は真の意味で表されます。聖マルチノの助けによって、わたしたちが、共同で分かち合いのわざに取り組むことによってのみ、現代の大きな課題にこたえることができることを悟ることができますように。それは、すべての人が尊厳をもって生きることができる、平和と正義に基づく世界を築くという課題です。このような世界を実現するためには、真の連帯に関する国際的なモデルを実行に移さなければなりません。すなわち、地球のすべての住民に食糧、水、必要な医療だけでなく、労働とエネルギー資源、文化財、科学技術の知識を保障しなければなりません。
  今わたしたちはおとめマリアに向かいます。どうかマリアの助けによって、すべてのキリスト信者が聖マルチノと同じように、愛の福音を惜しみなくあかしし、うむことなく連帯に基づく分かち合いを実践することができますように。

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