教皇ベネディクト十六世の2007年11月18日の「お告げの祈り」のことば 歴史と救いの計画

教皇ベネディクト十六世は、年間第33主日の11月18日(日)正午に、教皇公邸書斎の窓から、サンピエトロ広場に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です(原文はイ […]

教皇ベネディクト十六世は、年間第33主日の11月18日(日)正午に、教皇公邸書斎の窓から、サンピエトロ広場に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です(原文はイタリア語)。
「お告げの祈り」の後、教皇はまずイタリア語で、最近サイクロンの被害に遭ったバングラデシュへの支援を求める次の呼びかけを行いました。
「数日前、恐るべきサイクロンがバングラデシュ南部を襲いました。そのため多数の犠牲者と深刻な被害が生じました。ご遺族とわたしの心から愛するバングラデシュの全国民に深くお悔やみ申し上げます。そしてわたしは国際社会の支援を求める呼びかけを行います。すでに国際社会は緊急の必要にこたえる支援を行っています。厳しい試練のうちにあるバングラデシュの兄弟を救うためにできる限りの努力を行ってくださるようお願いします」。
11月15日(木)夜バングラデシュを直撃した大型サイクロン「シドル(目)」により、18日夕方までに2200人以上の死亡が確認されています。バングラデシュ政府によると被災者は270万人以上、住宅77万戸が被害を受けました。
続けて教皇は18日から始まる対人地雷禁止条約締約国会議に向けてイタリア語で次のように述べました。
「今日からヨルダンで、『対人地雷の使用、貯蔵、生産及び委譲の禁止並びに廃棄に関する条約』第8回締約国会議が開催されます。聖座は10年前に署名された本条約を実施する主要国の一つです。わたしは心から祝福を送るとともに、この会議がよい成果を上げることを願います。それは、多くの子どもを含む被害者を出し続けている地雷が完全に禁止されるためです」。
「対人地雷の使用、貯蔵、生産及び委譲の禁止並びに廃棄に関する条約」は1997年12月にカナダのオタワで署名され、1999年3月に発効しました。
さらに教皇は、18日午後列福されるアントニオ・ロスミニ(1797-1855年)について、イタリア語で次のように述べました。
「今日の午後、(北イタリア・ピエモンテ州の)ノヴァラで、敬愛すべき神のしもべアントニオ・ロスミニが列福されます。ロスミニは神と教会への熱烈な愛に導かれた、偉大な司祭であり、傑出した文化人です。ロスミニは愛徳をあらゆる面で、またその極みまであかししました。しかしロスミニをもっとも有名にしたのは、彼が「知的愛徳」と呼んだもの、すなわち信仰と理性の一致への惜しみない努力でした。ロスミニの模範の助けによって、教会、特にイタリアの教会共同体が、人間理性の光と恵みの光がともに歩むとき、これらが人間の人格と社会に対する祝福の源泉となることをますます自覚することができますように」。


親愛なる兄弟姉妹の皆様。
 今日の福音の箇所の中で聖ルカは聖書における歴史の見方をあらためてわたしたちに考察させるためにイエスのことばを示します。イエスは弟子たちに対して、恐れることなく、イエスに対する信頼と信仰をもち続けながら、さまざまな困難と誤解と迫害に立ち向かうよう招きます。主はいわれます。「戦争とか暴動のことを聞いても、おびえてはならない。こういうことがまず起こるに決まっているが、世の終わりはすぐには来ないからである」(ルカ21・9)。教会はこの主の勧告を心にとめて、初めから主の再臨を祈り、待ち望みながら生きてきました。そして、時のしるしを見分け、繰り返し生じる救世主待望から信者を守ってきました。救世主待望は、世の終わりが間近に迫っていると何度も告げてきたからです。実際、歴史は自らの歩みを進まなければなりません。この歩みはさまざまな人間的悲劇や自然災害も含みます。この歴史の中で、救いの計画が示されます。キリストはすでに受肉と死と復活によってこの救いの計画を実現しました。教会は、説教し、秘跡を授け、愛をあかしすることを通じてこの神秘を告げ知らせ、現実のものとし続けます。
 親愛なる兄弟姉妹の皆様。キリストの招きを受け入れ、キリストの摂理に満ちた愛を信頼しつつ、日々の出来事に立ち向かっていこうではありませんか。どれほどそれが暗く見えても、未来を恐れずにいようではありませんか。なぜなら、イエス・キリストは、この世を超越した完成に向けて開かれたものとするために、歴史を受け取られたからです。イエス・キリストの神は、アルファであり、オメガです。初めであり、終わりだからです(黙示録1・8参照)。すべての小さくても真実の愛の行いのうちに、全宇宙の意味がこめられています。キリストのために自分のいのちを失うことを惜しまない者は、完全な意味でこのいのちをもう一度与えられます(マタイ16・25参照)。このことを、イエス・キリストはわたしたちに保証してくださいます。
 奉献生活者はこの上なく効果的なしかたで、このようなものの見方を生き生きと保つようわたしたちを招きます。彼らは神の国に仕えるために生涯を惜しみなくささげているからです。奉献生活者の中で、わたしは特に隠世修道院において観想生活を行うよう招かれた人々を思い起こしたいと思います。教会は今週の11月21日の水曜日の、聖マリアの奉献の記念日を、特別に奉献生活者の日としています。信者の援助を通して摂理が与えたもので生きるこの人々に、わたしたちはきわめて多くのものを負っています。修道院という「霊的なオアシスは、現代社会にもっとも大事なことを思い起こさせてくれます。それはつまるところ、唯一、決定的に重要なことです。すなわち、人生を生きるに値するものとする究極的な理由が存在します。それは神とその限りない愛です」(教皇ベネディクト十六世「ハイリゲンクロイツ修道院でのあいさつ(2007年9月9日)」)。愛のうちに実践される信仰こそが、虚無主義の精神に対する真の解毒剤です。虚無主義は現代にあって、ますます世に対する影響力を強めているからです。
 受肉したみことばの母であるマリアが、地上を旅するわたしたちとともに歩んでくださいますように。わたしたちはマリアに願います。どうかマリアがあかしを行うすべてのキリスト信者を支えてくださいますように。すべてのキリスト信者がいつもゆるぎなく信仰を保ち続けることができますように。

PAGE TOP