2008年4月10日の死刑執行に強く抗議します

内閣総理大臣 福田康夫 様 法務  大臣  鳩山邦夫 様   法務省は、4月10日に、坂本正人(41)=東京拘置所収容、秋永香(61)=同、中元勝義(64)=大阪拘置所収容、中村正春(61)=同=の各死刑囚4人の死刑を執 […]

内閣総理大臣 福田康夫 様
法務  大臣  鳩山邦夫 様

  法務省は、4月10日に、坂本正人(41)=東京拘置所収容、秋永香(61)=同、中元勝義(64)=大阪拘置所収容、中村正春(61)=同=の各死刑囚4人の死刑を執行しました。今回の執行は、前回同様多くの団体や死刑制度に疑問を投げかける中でのものです。福田政権の鳩山法務大臣は、すでに12月7日に3人、2月1日に3人、合わせて6人の刑を執行しており、さらに今回の4人の刑を合わせて合計10人の刑を執行したことになります。安倍政権と福田政権を合わせた1年6か月で、20人にも及ぶ死刑執行が行われました。あらためて自民党・公明党政権の人命軽視、人間の尊厳を破壊する姿勢がはっきりしました。また昨年末から2か月おきの死刑執行は、鳩山法務大臣の進めようとする「死刑執行の自動化」を明確に実施されたものです。現在、死刑が確定している人は104人という状況ですが、確定者が100人を超えれば自動的に死刑が執行される現状は、まさに「自動化」によって刑務所の効率化を追求するものです。人権を強く自負する法務省による、このような死刑の執行のありかたは、人命軽視であり許されるものではありません。

 聖書には、生殺与奪の権利は神の分野に属します。また神は、どんな罪人も悔いあらためるよう望まれると教えています。私たちは、前教皇の「正義なしに平和はなく、ゆるしなしに正義はありません」『2002年世界平和の日メッセージ』(教皇ヨハネ・パウロ二世)という精神にこそ、人間らしい道を生み出す力があると毎回訴えています。聖書には、十字架上でイエスにゆるしを求める場面がありますが、人は死にいたる直前まで、神にゆるしを求めることが大切なことであると教えています。それは犯罪者が本当に罪を償い、神のゆるしを得ることによって、安らかな死を向えるためです。

 昨年12月18日の国連総会で「死刑執行停止を求める決議」が、104か国の承認で採択されました。またG8サミット8か国中で日本と米国を除く6か国には死刑制度はありません。

 歴代法務大臣はたびたび、死刑存置の根拠として、「日本には、死によって償うという文化がある」と発言していますが、こうした精神風土は「暴力の連鎖」を容認し、「死には死を」という「復讐の精神」を育ててしまいます。現代世界を見るとき、私たちはいまだに「暴力の連鎖」を断ち切ることができないでいます。日本が死刑制度を認めるかぎり、「暴力の連鎖」の背景にある「復讐心」をあおることになってしまいます。私たちは未来ある子どもたちに「いのちの大切さ」を教えなければなりませんが、死刑が制度として存在する社会にあって、どうして「いのちの大切さ」を教えることができるでしょうか。

 以上、「いのちの尊厳」という観点から、死刑執行ましてその自動化に強く抗議し、政府が直ちに死刑執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた取り組みの中で、加害者と被害者の双方への対応を根本的に考え直していくことを求めます。

2008年4月16日
日本カトリック正義と平和協議会
死刑廃止を求める部会
委員長ホアン・マシア

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