2008年灌仏会に際しての 教皇庁諸宗教対話評議会から仏教徒の皆様へのメッセージ

教皇庁諸宗教対話評議会のジャン=ルイ・トーラン議長は、4月29日、仏教徒に対してウェーサク祭のメッセージを送りました。以下はその全訳です(原文は英語)。 ウェーサク祭はインドの月名のウェーサク月に行われる南方仏教(上座部 […]

教皇庁諸宗教対話評議会のジャン=ルイ・トーラン議長は、4月29日、仏教徒に対してウェーサク祭のメッセージを送りました。以下はその全訳です(原文は英語)。
ウェーサク祭はインドの月名のウェーサク月に行われる南方仏教(上座部仏教)の祭典で、ブッダ(釈尊)の生誕・成道(悟り)・入滅を合わせて記念します。ウェーサク祭を祝う日は、南アジアでも地域によって異なり、今年は5月12日と18日の間に祝われます。ちなみに日本では、釈尊の誕生のみ、灌仏会(4月8日)に祝っています。翻訳では、日本の状況に合わせて、「ウェーサク祭」を「灌仏会」と訳しました。

キリスト教徒と仏教徒――惑星地球への配慮

親愛なる仏教徒の友人の皆様

1 灌仏会にあたり、世界中の皆様と皆様の共同体に、わたしと教皇庁諸宗教対話評議会より心からごあいさつ申し上げます。

2 わたしは、カトリック信者と仏教徒が長年にわたり良好な関係を築いてきたことを思い起こし、たいへん喜ばしく思います。こうした関係の基盤が、相互理解を強め、深めてくれることを確信しています。こうしてわたしたちは、わたしたちにとってだけでなく、人類という家族全体にとってよりよい世界を作るために協働し続けることができます。経験が教えるとおり、対話は、個人と共同体のうちにある望みを育てます。すなわち、すでに存在する善意と一致を共有し、実際に他の人々に勇気をもって手を差し伸べ、生じうる問題や困難に進んで立ち向かいたいという望みです。

3 教皇ベネディクト十六世は「2008年世界平和の日メッセージ」の中で述べます。「人類という家族にとって、この住居は地球です。造り主である神は、この地球を、わたしたちが創造的に、また責任をもって住む環境としてわたしたちに与えました。わたしたちは環境に配慮しなければなりません。環境は人間にゆだねられています。それは人間が、責任を伴う自由をもって、またたえずわたしたちを方向づける基準となるあらゆる手段をもって、環境を保護し、耕すためです」(同7)。国連総会は2008年を「国際惑星地球年」と宣言しました。地球の住人と宗教者、キリスト教徒と仏教徒は、同じ被造物を尊重します。そして、わたしたち皆が共有する環境への配慮を推進したいという共通の関心を抱いています。

4 環境の保護、持続可能な発展の推進、そして気候変動への特別な注目は、すべての人にとって重大な関心事です。多くの政府、非政府機関(NGO)、多国籍企業、大学・研究機関は、あらゆる経済的・社会的発展が倫理的意味をもつことを認めながら、生物多様性、気候変動、環境の保護と保全に関して、資金を投じるとともに、専門知識を分かち合っています。宗教指導者も公的な議論の場で発言しています。当然ながら、このような発言は、地球温暖化に伴う最近の切迫した脅威にこたえるだけではありません。キリスト教と仏教は常に自然に対して深い畏敬の念を抱いてきましたし、感謝の心をもって地球を管理しなければならないと教えてきました。実際、造り主である神と、創造のわざと、被造物の関係について深く考察することを通じて、初めて環境問題への対応は、個人の欲望によって傷つけられることも、特定集団の利害によって阻害されることもなくなります。

5 実践的な次元で、わたしたちキリスト教徒と仏教徒は、さまざまな計画においてもっと協力できるのではないでしょうか。こうした計画は、わたしたち一人ひとりが、またわたしたち皆がもっている責任を強めます。リサイクル、エネルギーの節約、動植物の見境のない破壊の防止、そして水道の保護――これらは皆、地球の注意深い管理にかかわり、善意を促進し、諸民族間の心からの関係を深めます。こうしてキリスト教徒と仏教徒はともに、汚染のない、安全で、調和のある世界への希望を告げる者となることができるのです。

6 親愛なる友人の皆様。わたしたちは、それぞれの共同体の中で、学校教育と、自然を大事にし、わたしたちの共通の惑星地球に対して責任をもって行動するよい模範を通じて、このメッセージを推進できると信じています。あらためて心からのお祝いを申し上げるとともに、よい灌仏会を迎えられることをお祈りします。

教皇庁諸宗教対話評議会議長
ジャン=ルイ・トーラン枢機卿
同局長
ピエル・ルイジ・チェラータ大司教

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