教皇ベネディクト十六世の136回目の一般謁見演説 聖霊のわざと一致への奉仕

5月7日(水)午前10時30分から、サンピエトロ広場で、教皇ベネディクト十六世の136回目の一般謁見が行われました。この謁見の中で、教皇は、5月6日から9日までローマを公式訪問しているカレキン二世アルメニア公主教を迎えて […]

5月7日(水)午前10時30分から、サンピエトロ広場で、教皇ベネディクト十六世の136回目の一般謁見が行われました。この謁見の中で、教皇は、5月6日から9日までローマを公式訪問しているカレキン二世アルメニア公主教を迎えて、初めに英語であいさつを行いました。続いて、「聖霊のわざと一致への奉仕」についての講話をイタリア語で行いました。以下は教皇が行ったあいさつと講話の全訳です。
謁見の終わりに、教皇は、最近ミャンマーを襲ったサイクロンの被災者に対する国際社会の支援を呼びかけました。イタリア語で行われた教皇の呼びかけは次のとおりです。
「わたしは、愛するミャンマーの人々の、苦しみ、助けを求める叫び声を自分のものとします。ミャンマーの人々は、サイクロン『ナルギス』の猛威によって、突然、多くの人命と財産と生計の手段を失ったからです。
すでに(5月6日に)ミャンマー司教協議会会長あてに送った連帯のメッセージで述べたように、わたしは被災者のかたがたに霊的に寄り添います。またわたしは、すべての人にあらためてお願いします。あわれみと寛大さへと心を開いてください。そして、支援が可能で、支援を望む人々の協力によって、今回の大きな悲劇によって生じた苦しみを和らげることができますように」。
5月6日、ミャンマー国営ラジオは、2日から3日にかけてミャンマーを直撃したサイクロン「ナルギス」により、2万2000人以上が死亡、行方不明者は4万1000人に上ると伝えました。


カレキン二世公主教へのあいさつ

 全アルメニア教会の総主教・公主教カレキン二世と随行使節のかたがたをお迎えできたことをたいへんうれしく存じます。聖霊の光が、使徒ペトロとパウロの墓所への皆様の巡礼と、当地で行う重要な会合、とくに(9日に予定される)わたしたちの個人的な会談を照らしてくださるように祈ります。今日ここにおられる皆様にお願いします。どうかこの訪問を神が祝福してくださるようお祈りください。
  公主教様が、アルメニア使徒教会とカトリック教会の友好関係の発展のために努めておられることに感謝申し上げます。公主教様は、公主教として選出されてまもない2000年にローマに来られ、教皇ヨハネ・パウロ二世と会見されました。1年後、公主教様はご親切にもエチミアジンにヨハネ・パウロ二世を迎えられました。公主教様は教皇ヨハネ・パウロ二世の葬儀のために、多くの東方教会と西方教会の指導者とともに再びローマに来てくださいました。この友愛の精神が、これからの数日間を通じてさらに深まることを確信しております。
  サンピエトロ大聖堂の外壁の壁龕(へきがん〔ニッチ〕)には、アルメニア教会の創立者である照明者グレゴリオス(240頃-330年頃)の美しい立像があります。この立像は、とくに前世紀にアルメニア教会が受けた厳しい迫害を思い起こさせてくれます。アルメニアの多くの殉教者は、暗闇の時代にも聖霊の力が働くことを表すしるしであり、あらゆるところにいるキリスト信者の希望の保証です。
  公主教と主教と親愛なる友人の皆様。わたしは皆様とともに、照明者グレゴリオスの執り成しを通じて、全能の神に願い求めます。どうかキリスト教的信仰と希望と愛の唯一の聖なるきずなのうちに、わたしたちが一致を深めることができますように。

教皇の講話

親愛なる兄弟姉妹の皆様。
  ご覧のように、今日は全アルメニア教会の総主教であり公主教であるカレキン二世が、随行使節のかたがたとともに来ておられます。今朝、公主教様をお迎えできた喜びをあらためて表したいと思います。公主教様がここにおられることは、すべてのキリスト者の完全な一致への希望をわたしたちのうちにあらためてかき立ててくれます。この機会に、最近、公主教様が国務省長官の枢機卿を温かく歓迎してくださったことを感謝申し上げます。わたしも公主教様が選出の直後の2000年に行った、忘れることのできないローマ訪問を喜びのうちに思い起こします。わたしの敬愛すべき前任者であるヨハネ・パウロ二世は、公主教様との会見の中で、照明者聖グレゴリオスの聖遺物を贈り、続いて教皇もアルメニアを訪問しました。
  アルメニア使徒教会のエキュメニカル対話への取り組みはよく知られています。またわたしは、今回の全アルメニア教会の総主教であり公主教であるかたの訪問が、両教会を結ぶ兄弟愛のきずなを強めるために役立つことを確信しています。間近に迫った聖霊降臨の祭日を準備するこの日々は、聖霊の助けがエキュメニズムの道のりを前進させてくれることをあらためて希望するようわたしたちを促します。主イエスが、一致を求めるわたしたちを見捨てられないことを、わたしたちは信じています。主イエスの霊のわざが、あらゆる分裂を乗り越え、教会という生きた布のあらゆるほころびを繕おうとするわたしたちの努力を支えてくださるからです。
  地上での宣教の最後の日々にイエスが弟子たちに約束したのは、まさにこのことです。今しがた朗読された福音の箇所が述べるとおりです。イエスは弟子たちに聖霊の助けを保証します。イエスは、ご自分がともにいることを弟子たちが感じ続けることができるために聖霊を遣わすからです(ヨハネ14・16-17参照)。この約束は現実のものとなりました。復活の後、イエスは二階の広間に入り、弟子たちにあいさつしていわれました。「あなたがたに平和があるように」。そして、彼らに息を吹きかけていわれました。「聖霊を受けなさい」(ヨハネ20・22)。イエスは弟子たちに罪をゆるす権限を与えました。それゆえ聖霊は、罪をゆるし、わたしたちの心と生活を新たにする力として示されます。こうして聖霊は地を新たにし、分裂のあったところに一致を造り出します。その後、聖霊降臨のとき、聖霊は他のしるしによって示されます。すなわち、激しい風、炎のような舌、使徒たちがすべての国々のことばを話したことです。最後のしるしは、人々を分かれ分かれにした傲慢の結果である、バベルの分裂が、聖霊によって乗り越えられたことを示します。聖霊は愛であり、分裂のあるところに一致をもたらすからです。教会は最初の瞬間から――聖霊の力と、炎のような舌のおかげで――すべてのことばを話し、すべての文化の中を生きました。教会は、さまざまなたまものやカリスマをけっして破壊せず、すべてのものを新しい偉大な一致のうちにまとめました。この新しい偉大な一致は、一性と多様性を和解させました。
  聖霊は永遠の愛であり、三位一体のきずなです。それゆえ聖霊は、神の愛の力によって、ばらばらになった人々を一つにし、全世界に広がる多様で偉大な教会共同体を造り出します。主の昇天から聖霊降臨の主日にかけての日々、弟子たちはマリアとともに二階の広間に集まって祈っていました。弟子たちは、自分たちが教会を造り出し、設立することができないことを知っていました。教会は神の手によって生み出され、設立されなければなりませんでした。教会はわたしたちが造り出すものではなく、神から与えられたたまものです。一致も、こうして神から与えられることによってのみ造り出されます。このようにして一致は成長しなければなりません。教会はいつの時代にも、とくに昇天と聖霊降臨の間の9日間、霊的な意味で、使徒たちとマリアとともに二階の広間に集まり、聖霊が注がれることを絶えず祈り求めます。こうして聖霊の激しい風に促されることにより、教会は地の果てに至るまで福音を告げ知らせることができるのです。
  ですからキリスト信者は、困難や分裂を前にしても、あきらめたり、失望したりしてはなりません。主はわたしたちに求めます。絶えず祈り、信仰と愛と希望の炎を生き生きと保ちなさい。この信仰と希望と愛の炎が、完全な一致への望みを養う糧となるからです。主はいわれます。「一つにしてください(Ut unum sint!)」。キリストのこの招きが、わたしたちの心にいつも響き渡ります。わたしはこの招きを、最近のアメリカ合衆国への使徒的訪問の中であらためて告げました。そこでわたしは、エキュメニズム運動において祈りが中心的な意味をもつことを指摘しました。グローバル化と同時に細分化の進む時代の中で、「祈らなければ、エキュメニカルな組織、機関、計画は、その心と魂を失います」(ニューヨーク、セント・ジョゼフ聖堂でのエキュメニカル集会における講話、2008年4月18日)。聖霊のわざのおかげで、エキュメニカル対話を通じ、さまざまな到達点に達することができたことを主に感謝しようではありませんか。忠実に聖霊のことばに耳を傾けようではありませんか。それは、わたしたちの心が、希望に満たされながら、すべてのキリストの弟子の完全な交わりへと導く道を、遅れることなく歩むことができるためです。
  聖パウロはガラテヤの信徒への手紙の中でいいます。「霊の結ぶ実は愛であり、喜び、平和、寛容、親切、善意、誠実、柔和、節制です」(ガラテヤ5・22-23)。これらの聖霊のたまものを、わたしたちも今日、すべてのキリスト者のために願い求めたいと思います。それは、ともに惜しみなく福音に仕えることを通して、すべてのキリスト者が世において全人類に対する神の愛のしるしとなることができるためです。信頼をもって、聖霊の聖なる住まいであるマリアに目を向けようではありませんか。そして、マリアを通して祈ろうではありませんか。「聖霊来てください。信者の心を満たし、あなたの愛の火を燃え立たせてください」。アーメン。

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