教皇ベネディクト十六世の2008年8月24日の「お告げの祈り」のことば 教皇の使命

教皇ベネディクト十六世は、年間第21主日の8月24日(日)正午に、夏季滞在先のカステル・ガンドルフォ教皇公邸の窓から、中庭に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻 […]

教皇ベネディクト十六世は、年間第21主日の8月24日(日)正午に、夏季滞在先のカステル・ガンドルフォ教皇公邸の窓から、中庭に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です(原文はイタリア語)。
「お告げの祈り」の後、教皇は、グルジア紛争をめぐって緊張の高まる国際情勢に関して次の呼びかけをイタリア語で行いました。
「最近の数週間、緊張の高まる国際情勢は強い懸念を招いています。悲しむべきことに、諸国家間の信頼と協力の雰囲気がますます失われていることを認めなければなりません。しかし、こうした雰囲気こそ諸国家間の関係を特徴づけるべきものです。現在の状況において、自分たちが『諸国家の家族』であるという共通の意識を築くために行われる、人類のあらゆる努力を評価せずにいられるでしょうか。教皇ヨハネ・パウロ二世は国連総会においてこの共通の意識を理想として示しました。わたしたちは自分たちが同じ目的で結ばれているという共通の意識を深めなければなりません。この同じ目的こそが、最終的に、すべてを超えた目的です(教皇ベネディクト十六世「世界平和の日メッセージ(2006年1月1日)」6参照)。それは、国家主義的な対立に戻るのを避けるためです。こうした国家主義的対立がかつての歴史的な時期にきわめて悲惨な結果を生み出したからです。最近の出来事によって、多くの人は、このような経験が完全に過去のものとなったことを信頼できなくなりました。しかし、わたしたちは悲観主義に負けてはなりません。むしろ、古い手段で新たな状況に対処しようとする誘惑を退けるために、積極的に努めるべきです。暴力をけっして認めてはなりません。法の道徳的な力、領土の保全と民族の自決に関することから始まる、紛争を解決するための公平かつ透明な交渉、約束への忠実、共通善の追求――これらが、粘り強く、創造性をもって歩むべき主要な道の一部です。それは、実り豊かで誠実な関係を築き、現代と将来の世代の人々に和合と道徳的・文化的発展の時代を保障するためです。このような思いと望みを祈りに変えようではありませんか。国際社会のすべての人、とくに大きな責務を担う人々が、平和と正義という上位の目的を回復するために寛大な心で働くことを望みますように。平和の元后であるマリアよ、わたしたちのために執り成してください」。


親愛なる兄弟姉妹の皆様。
  今日の主日の典礼は、わたしたちキリスト信者に対して、また同時にすべての人に対して、イエスがある日、弟子たちに述べた二つの問いを示します。イエスはまず弟子たちに問います。「人々は、人の子のことを何者だといっているか」。弟子たちはイエスに答えていいました。「洗礼者ヨハネが生き返ったのだ」という人も、「エリヤだ」という人も、「エレミヤだ」とか、「預言者の一人だ」という人もいますと。すると主は十二人に向かって直接尋ねました。「あなたがたはわたしを何者だというのか」。十二人全員を代表して、ペトロが情熱をこめてはっきりと次のことばを述べました。「あなたはメシア(キリスト)、生ける神の子です」(マタイ16・13-20参照)。この荘厳な信仰告白を、教会も繰り返して述べ続けています。現代のわたしたちも、深い確信をもって宣言したいと望みます。「そうです、イエスよ。あなたはメシア(キリスト)、生ける神の子です」。このように宣言するとき、わたしたちはこう自覚しています。キリストはまことの「宝」です。この「宝」は、そのためにすべてのものを犠牲にする価値があります。キリストはわたしたちを見捨てることのない友です。キリストはわたしたちの心の奥深くにある願いを知っておられるからです。イエスは「生ける神の子」であり、約束されたメシアです。このかたが地上に来られたのは、人類に救いをもたらし、すべての人のうちにある、いのちと愛への渇きをいやすためでした。喜びと平和をもたらすこの知らせを受け入れることによって、人類はどれほど多くの益を得ることでしょうか。
  「あなたはメシア(キリスト)、生ける神の子です」。ペトロが聖霊に促されてこの信仰告白をしたのに対して、イエスは答えます。「あなたはペトロ。わたしはこの岩の上にわたしの教会を建てる。陰府(よみ)の力もこれに対抗できない。わたしはあなたに天の国の鍵を授ける」。このとき初めてイエスは教会について述べました。教会の使命は、キリストのうちに全人類を一つの家族として集めるという、神の偉大な計画を実現することです。ペトロとその後継者の使命は、まさに、ユダヤ人と異邦人から成るこの唯一の神の教会の一致に仕えることにほかなりません。ペトロがどうしても果たすべき役務はこれです。すなわち、教会がたんなる一つの国家や一つの文化と同じものになるのではなく、むしろ、すべての民の教会となるようにすることです。それは、多くの分裂と対立を特徴とする人類の中に、神の平和と、すべてのものを新たにする神の愛の力を現存させるためです。それゆえペトロの使命は、神の平和がもたらす内的な一致、すなわち、キリストのうちに兄弟姉妹となった人々の一致に仕えることです。これこそが、ローマ司教であり、ペトロの後継者である教皇の特別な使命です。
  この務めの大きな責任を前にして、わたしは、主がわたしにゆだねた教会と世界に奉仕すべき義務とその重大性とをますます感じます。親愛なる兄弟姉妹の皆様。そのために、皆様の祈りによってわたしを支えてくださるようお願いします。それは、わたしたちが、キリストに忠実に従いながら、現代にあってキリストの現存をともに告げ知らせ、あかしすることができるためです。わたしたちは信頼をこめて、教会の母であり、福音宣教の星であるマリアに願い求めます。マリアの執り成しによってこの恵みがわたしたちに与えられますように。

PAGE TOP