教皇ベネディクト十六世の2009年1月18日の「お告げの祈り」のことば 移住者聖パウロ

教皇ベネディクト十六世は、年間第2主日の1月18日(日)正午に、教皇公邸書斎の窓から、サンピエトロ広場に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です(原文はイタリ […]

教皇ベネディクト十六世は、年間第2主日の1月18日(日)正午に、教皇公邸書斎の窓から、サンピエトロ広場に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です(原文はイタリア語)。

「お告げの祈り」の後、教皇は、パレスチナ自治区ガザの状況について、次のようにイタリア語で述べました。
「わたしは深い不安をもってガザ地区での紛争を見守り続けています。未曾有の暴力の犠牲となった、数百人の罪のない子ども、高齢者、女性、また怪我人、愛する人の死を悲しむ人々、財産を失った人々を、今日も主のみ前で思い起こしたいと思います。
  同時に皆様にお願いします。この悲劇を止めるために行われている多くの善意の人々の努力に祈りをもって同伴してください。わたしは、停戦を回復し、永続的な平和的解決に向かうために、知恵をもって、開かれた空気が用いられることを心から望みます。
  このことに関連して、わたしは、人々が、聖地はすべての人のための場であると互いに信じ、国民が廃墟と恐怖から立ち上がり、勇気をもって、正義と真理のうちに対話の道を再び歩むのを助けるよう、あらためて励まします。これこそが、この愛する地の子らに実効的なしかたで平和な未来を開くことのできる唯一の道です」。
イスラエル政府は、17日(土)夜、パレスチナ自治区ガザでの戦闘を一方的に停止することを発表し、18日午前2時(日本時間同日午前9時)から軍事作戦を停止しました。イスラエルがガザ地区への空爆を開始した12月27日以後22日間のパレスチナ人の死者は1300人超、イスラエル側の死者は13人となっています。

続いて教皇は、18日から25日(日)まで行われるキリスト教一致祈祷週間について、イタリア語で次のように述べました。
「今日からキリスト教一致祈祷週間が始まります。キリスト教一致祈祷週間は次の日曜日の1月25日に終わります。南半球では、レオ十三世が19世紀末に指示した9日間の祈りに従い、キリスト教一致のための祈りを主の昇天と聖霊降臨の間に行います。聖書のテーマはすべての人に共通です。今年のテーマは、韓国のエキュメニカルなグループの提案により、預言者エゼキエルの書からとられました。『それらはあなたの手の中で一つとなる』(エゼキエル37・17)。わたしたちもこの招きを受け入れ、キリスト者が完全な交わりに向けて速やかに歩めるように、いっそう力強く祈ろうではありませんか。特にわたしは世界中のカトリック信者の皆様に呼びかけます。心を合わせて祈り、いまだにキリストのすべての弟子の完全な交わりの妨げとなっているさまざまな障害を乗り越えるように、倦(う)むことなく努めてください。エキュメニズムの取り組みは現代、いっそう緊急に必要とされています。それは、悲惨な紛争と人々を苦しめる分裂によって特徴づけられる現代社会に、和解と平和に向かうしるしと促しを与えるためです。わたしは今年の一致週間が終わる、次の日曜日の聖パウロの回心の祝日に、サン・パオロ・フオリ・レ・ムーラ大聖堂で夕の祈りを行います。聖パウロはキリストのからだの一致をその宣教の中心としたからです」。


親愛なる兄弟姉妹の皆様。
  今日わたしたちは「世界難民移住移動者の日」を行います。今年はパウロ年が行われているため、偉大な旅する福音の宣教者である聖パウロを思い起こしながら、「移住者であり、異邦人の使徒である聖パウロ」をテーマとして選びました。サウロ――これがパウロのユダヤ人としての名です――は、キリキア州の重要な都市タルソスで、移民の家族から生まれました。そして、3つの文化――ユダヤ文化、ギリシア文化、ローマ文化――の中で、世界市民としての精神のうちに成長しました。パウロは、キリスト教徒の迫害者から福音の使徒に変わることによって、復活したキリストの「使者」となりました。そして、キリストをすべての人に知らせました。パウロは、すべての民がキリストのうちに神の子の偉大な家族を作るように招かれていると確信したからです。
  これは教会の使命でもあります。グローバル化した現代において、なおさらそのことがいえます。キリスト信者であるわたしたちが、イエスの愛のメッセージを、特にイエスを知らない人々や、困難で苦しい状況に置かれた人々に伝える必要を感じないでいることはできません。今日わたしは特に移民に思いを致します。移民の状況はじつにさまざまです。ある場合には、神のおかげで、状況は穏やかで、社会との統合がよく行われています。しかし、他の場合には、残念ながら、状況は苦しく、困難で、悲惨なことさえあります。わたしはお願いしたいと思います。キリスト教共同体はすべての人と家族に注意を向けてください。そして、世界のすべての地域で、民族、文化、宗教の異なる人々が平和的に共存できるようにあらためて努力する力が与えられるよう、聖パウロに願い求めてください。使徒は、自分の新しいいのちの秘密をわたしたちに語ります。パウロはいいます。「自分がキリスト・イエスに捕らえられているからです」(フィリピ3・12)。パウロは続けていいます。「わたしに倣う者となりなさい」(フィリピ3・17)。実際、わたしたちは一人ひとり、自らの召命と、生活と仕事の場に応じて、福音をあかしするよう招かれています。そして、さまざまな理由で他の国から来て、わたしたちとともに暮らす兄弟姉妹をいっそう心にかけ、移民という現象に文明の出会いの場としての価値を与えなければなりません。祈り、行動しようではありませんか。この文明の出会いが、尊敬と対話のうちに、平和的かつ建設的なしかたで行われ、紛争と虐待への誘惑を避けることができますように。
  わたしは船員と漁民の皆様のために特に申し上げたいと思います。皆様は一時的に大きな不自由を体験しておられるからです。皆様は、普通の困難に加えて、上陸することや、海上で船員付き司祭に同伴してもらうことを制限されたり、海賊の危険や違法操業の被害に直面しておられます。わたしは皆様のことを心にかけます。そして、皆様が寛大に行う海難救助活動が大いに認められて、報われることを願います。最後にわたしは、メキシコ・シティーで閉会しようとしている世界家庭大会と、今日から始まるキリスト教一致祈祷週間に思いを向けます。親愛なる兄弟姉妹の皆様。皆様にお願いします。これらの意向のために、おとめマリアの母としての執り成しを祈り求めてください。

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