2009年灌仏会に際しての 教皇庁諸宗教対話評議会から仏教徒の皆様へのメッセージ

4月3日(金)、教皇庁諸宗教対話評議会のジャン=ルイ・トーラン議長は、恒例に従い、世界の仏教徒に対して2009年のウェーサク祭/花祭り(灌仏会)のメッセージを送りました。原文は英語ですが、メッセージはイタリア語、フランス […]

4月3日(金)、教皇庁諸宗教対話評議会のジャン=ルイ・トーラン議長は、恒例に従い、世界の仏教徒に対して2009年のウェーサク祭/花祭り(灌仏会)のメッセージを送りました。原文は英語ですが、メッセージはイタリア語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、そして日本語(カトリック中央協議会事務局訳)でも発表されました。
「ウェーサク祭」はインドの月名のウェーサク月に行われる南方仏教(上座部仏教)の祭典で、ブッダ(釈尊)の生誕・成道(悟り)・入滅を合わせて記念します。ウェーサク祭を祝う日は年によって異なりますが、今年は5月2日です。日本、台湾、韓国では、釈尊の誕生のみ灌仏会(4月8日〔ただし韓国は旧暦に従い、今年は5月2日〕)に祝います。日本語版では、日本の状況に合わせて、「灌仏会(花祭り)」とのみ表記しています。


貧しさの精神のあかし――キリスト教徒と仏教徒の対話

親愛なる仏教徒の友人の皆様

1 灌仏会(花祭り)を前にして、教皇庁諸宗教対話評議会を代表して、心からのお祝いとごあいさつを申し上げます。この祝いの時が、世界中の仏教徒の皆様の心にあらためて喜びと平安をもたらしますように。恒例の灌仏会は、カトリック信者が仏教徒の友人の皆様とあいさつを交し合い、そこから、すでに築かれた友好関係を強め、さらに新たな友好関係を作り出すためのよい機会となります。この友愛のきずなによって、わたしたちは互いに喜びと希望と霊的な宝を分かち合うことができるのです。

2 仏教徒の皆様。皆様との親近感を新たにしながら、この時期にますます明らかになってきたことがあります。それは、わたしたちがともに、それぞれの霊的伝統に忠実に従いながら、自国の共同体の福祉のためだけでなく、世界の人類共同体にも役立ちうるということです。わたしたちは、わたしたちすべての前に置かれた問題を痛切に感じています。この問題は、さまざまな形でいっそう拡大しつつある貧困の現象、また、物質的な富の飽くなき追求と、消費主義の暗い側面の広がりに代表されます。

3 教皇ベネディクト十六世が最近述べたとおり、二つのまったく異なる種類の貧困があります。すなわち、「選び取るべき」貧しさと、「克服すべき」貧困です(「説教」、2009年1月1日)。キリスト教徒にとって、選び取るべき貧しさは、イエス・キリストの後に従って歩むことを可能にします。貧しさを選ぶことによって、キリスト教徒はキリストの恵みを進んで受け入れます。キリストは「豊かであったのに、わたしたちのために貧しくなられた。それは、主の貧しさによって、わたしたちが豊かになるためだったのです」(二コリント8・9)。この貧しさは、何よりも自分を空しくすることを意味します。けれどもそれは、自分の才能も限界も含めて、自分をありのままに受け入れることでもあります。このような貧しさは、わたしたちのうちに、すすんで神と兄弟姉妹に耳を傾け、兄弟姉妹に心を開いて、彼ら一人ひとりを尊重する態度を生み出します。わたしたちは人間の技術を含めて、全被造物を尊びます。しかしその際、わたしたちは、自由と感謝、配慮と尊重、離脱の精神をもとうと努めます。この離脱の精神によって、わたしたちは、「無一物のようで、すべてのものを所有している」(二コリント6・10)かのようにこの世の富を用いることができるのです。

4 同時に、教皇ベネディクト十六世が指摘するとおり、「神が望まれず、克服すべき貧困、すなわち窮乏があります。この貧困は、人々や家族がその尊厳にふさわしい生活を送ることを妨げます。それは正義と公平に反し、それ自体として平和的な共存を脅かします」(上掲「説教」)。さらに、「発展した豊かな社会にも、貧困化や、情緒的・道徳的・霊的貧困が見られます。こうした貧困は、内面生活が方向づけを見失った人々や、経済的に豊かであるにもかかわらずさまざまな不安を経験している人々に見いだされます」(教皇ベネディクト十六世「2009年『世界平和の日』メッセージ」2)。

5 親愛なる仏教徒の友人の皆様。わたしたちカトリック信者はこのような形で貧しさと貧困の意味を考察しますが、皆様の霊的経験にも目を向けます。わたしたちは、皆様が無執着や知足のあかしを示してわたしたちを力づけてくださることに感謝したいと思います。皆様仏教徒の僧、尼、多くの在家信者が「選び取るべき」貧しさを守っておられます。この貧しさは人の心に霊的な糧を与え、人生の意味についての深い洞察をもって生活を豊かにし、人類共同体全体の善意を高めようとする努力を支えます。あらためて灌仏会のお祝いとごあいさつを心から申し上げたいと存じます。

教皇庁諸宗教対話評議会議長
ジャン=ルイ・トーラン枢機卿
同局長
ピエル・ルイジ・チェラータ大司教

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