教皇ベネディクト十六世の224回目の一般謁見演説 ポルトガル司牧訪問を振り返って

5月19日(水)午前10時30分から、サンピエトロ広場で、教皇ベネディクト十六世の224回目の一般謁見が行われました。この謁見の中で、教皇は、5月11日(火)から14日(金)に行ったポルトガル司牧訪問を振り返りました。以下はその全訳です(原文イタリア語)。


 親愛なる兄弟姉妹の皆様。

 今日は、数日前に行ったポルトガルへの使徒的訪問のさまざまな歩みをご一緒に振り返りたいと思います。この訪問はとくにおとめマリアへの感謝の念に促されて行われました。ファティマのマリアは、幻を見た人々と巡礼者にペトロの後継者への深い愛を伝えたからです。神に感謝します。神は、わたしがポルトガル国民と、彼らが信じ、キリスト教的あかしを行った長く輝かしい歴史に敬意を表することを可能にしてくださったからです。そこで、わたしは皆様に祈りをもってわたしの司牧訪問に同伴してくださるようお願いしました。それと同じように、今わたしは、司牧訪問が成功のうちに終わったことを、わたしとともに主に感謝してくださるようお願いします。この司牧訪問がポルトガルの教会共同体と全国民に今もこれからももたらしてくれる実りを主にゆだねます。ポルトガル共和国のアニーバル・カヴァコ・シルヴァ大統領と他の政府関係者にあらためて感謝の意を表します。このかたがたは丁重にわたしを迎えてくださり、万事が最善のうちに行われるよう手配してくださったからです。深い愛情をこめてポルトガル諸教区の兄弟である司教の皆様を思い起こします。わたしは喜びをもって現地で司教の皆様と会いました。司教の皆様がわたしの訪問を霊的また組織的に準備してくださったこと、訪問の実現のために多大な努力を払ってくださったことに、兄弟愛をもって感謝します。とくにリスボン総大司教のジョゼ・ダ・クルツ・ポリカルポ枢機卿、レイリア・ファティマのアントニオ・アウグスト・ドス・サントス・マルト司教、ポルトのマヌエル・マカリオ・ド・ナシメント・クレメンテ司教とその協力者の皆様、そしてジョルジ・オルティガ司教に率いられたポルトガル司教協議会の諸機関の皆様に思いを致します。
 幼い牧童ジャシンタとフランシスコの列福10周年を記念して行われた訪問の間中、わたしは、敬愛する前任者である尊者ヨハネ・パウロ二世の霊的支えを感じました。ヨハネ・パウロ二世はファティマを三回訪れ、このサンピエトロ広場での(1981年)5月13日の暗殺未遂で自分を死から救ってくれた「目に見えない手」に感謝をささげました。到着した日(5月11日)の晩、わたしはテージョ川のほとりにあるリスボンの美しい「テレイロ・ド・パソ(宮殿広場)」でミサをささげました。この希望の典礼には、多数の信者が喜びをもって参加しました。数世紀にわたり、福音を諸大陸にもたらすために、多くの宣教者が首都リスボンを旅立ちました。このリスボンで、わたしは地域教会を構成するさまざまな人々を励ましました。社会のさまざまな領域で力強く福音を宣教するようにと。それは、しばしば疑いによって特徴づけられる世に希望の種をまくためです。とくにわたしは信者の皆様に勧めました。キリストの死と復活を告げ知らせる者となってください。キリストの死と復活は、キリスト教の中心、わたしたちの信仰の支え、喜びの理由だからです。わたしはこの思いを、ベレム文化センターで行われた文化界の代表者のかたがたとの集いの中でも表明することができました(5月12日)。この集いの中で、わたしはキリスト教がさまざまな価値観の遺産をもってポルトガル国民の文化、芸術、伝統を豊かにしてきたことを示しました。キリスト教から深い影響を受けた他のすべての国と同じように、この高貴なポルトガルの地でも、互いに心を開いて真実で尊敬の念をこめた対話を行いながら、他文化との親密な理解と協力に基づく未来を築くことが可能です。
 それからわたしはファティマにまいりました(同日)。ファティマは真の意味で神秘的な雰囲気によって特徴づけられた町です。人はこの町で聖母の存在にいわば手で触れることができるからです。わたしはファティマの驚くべき巡礼所に向かう巡礼者たちとともに一人の巡礼者となりました。ファティマの巡礼所はポルトガルの霊的中心であり、世界のあらゆる地から多くの人がここを訪れます。わたしはコヴァ・ダ・イリアのご出現の礼拝堂で祈りと感動に満ちた瞑想のときを過ごし、聖なるおとめのみ心に、全世界の喜びと願いを、またさまざまな問題と苦しみとをささげました。その後、三位一体教会で聖なるおとめマリアの晩の祈りを司式できたことをうれしく思います。この大きな現代の聖堂で、わたしはポルトガル全土から来た司祭、男女修道者、助祭、神学生のかたがたを心からたたえました。そして、彼らがしばしば沈黙のうちに、またときには困難のうちにあかしを行い、福音と教会への忠実を示してくださっていることに感謝しました。「司祭年」が終わりに近づくにあたり、わたしは司祭の皆様を励ましました。アルスの聖なる主任司祭の輝かしい模範を仰ぎ見ながら、神のことばにうやうやしく耳を傾けること、キリストを深く知ること、感謝の祭儀を心をこめてささげることを第一に優先してくださいと。わたしはこの機会に、主の弟子のまことの模範であるマリアの無原罪のみ心に、全世界の司祭をゆだね、ささげました。
 夜、わたしは巡礼聖堂前の広場に集まった何千人もの人々とともに意味深いろうそく行列に加わりました。それは、ロザリオを唱えることにより、神への信仰と、神の母であり、わたしたちの母であるかたへの信心をすばらしい形で表すものでした。ロザリオの祈りはキリスト者の民に深く愛されてきました。ファティマは、ロザリオを唱えるよう、全教会と全世界を駆り立てる中心地となりました。6月13日に現れた「白衣の聖母」は、牧童たちにこう語りました。「どうか毎日ロザリオを唱えてください」。ファティマとロザリオはいわば同義語だということができます。
 この特別な地ファティマへの訪問は、5月13日に行われた感謝の祭儀で頂点に達しました。5月13日は、フランシスコ、ジャシンタ、ルチアに聖母が最初に出現した記念日です。わたしは預言者イザヤのことばを繰り返しながら、おとめの足元に深い愛と信心をもって集まった膨大な数の会衆に願いました。主によって心から喜びなさい(イザヤ61・10参照)。なぜなら、わたしたちと地上の歩みをともにしてくださる主のあわれみ深い愛こそが、わたしたちの偉大な希望の源だからです。聖母がファティマに残した約束と慰めのメッセージに満ちているのも、この希望です。このメッセージの中心にあるのは、祈りと悔い改めと回心です。このメッセージは、歴史のさまざまな脅威、危難、恐れを超えて呼びかけます。それは、人々をこう招くためです。神のわざに信頼しなさい。偉大な希望を深めなさい。主の恵みを味わいなさい。愛と平和の泉である主に心を捕らえられるために。
 このことに関連して、社会司牧に携わる諸団体との感動的な集会は意味深いものでした(5月13日)。わたしはこれらの団体の皆様に、よいサマリア人の生き方を示しました。それは、共通善を推進することを通じて、もっとも困窮した兄弟の必要にこたえ、キリストに仕えるためです。ファティマは信仰と希望の学びやです。多くの若者がこのファティマで無償の愛の重要性を学びます。それは、ファティマが愛のわざと兄弟への奉仕の学びやでもあるからです。このような信仰と希望の雰囲気の中で、ファティマ訪問の終わりに、ポルトガル司教団の皆様との重要かつ兄弟愛に満ちた集いが行われました(同日)。それは深い霊的交わりのときでした。わたしたちはともに、ポルトガルの教会に忠実でいてくださった主に感謝しました。そして、共通の願いと司牧的問題とをおとめにゆだねました。わたしはこの希望と司牧的展望について、歴史的・象徴的な意味をもつ「おとめの町」ポルトでささげたミサの中でもお話ししました(5月14日)。このミサが、わたしのルシタニアの地への巡礼の最後の行事でした。アリアドス大通りに集まった大勢の信者の皆様に、わたしは、どのようなときにも福音をあかししなければならないという務めを思い起こさせました。復活したキリストを世に示さなければなりません。それは、どんなに困難で、苦しく、恐ろしい状況も、聖霊により、成長といのちのための機会に変わるようにするためです。
 親愛なる兄弟姉妹の皆様。ポルトガルへの巡礼は、わたしにとって、多くの霊的たまものに満ちた感動的な体験でした。わたしの思いと心には、この忘れがたい旅でのさまざまな情景、心からの温かい歓迎、ポルトガル国民の熱意がそのままとどまっています。わたしは主を賛美します。三人の牧童に現れたマリアは、人々をいやし、救う、神のあわれみと出会うための特別な場を世に与えてくださったからです。ファティマの聖なるおとめはすべての人をこう招きます。地上を、天国という、決定的な祖国に向かって旅するための場所と考えなさい。実際、わたしたちは皆、旅人です。わたしたちは皆、わたしたちを導いてくださる母であるかたを必要としています。「知恵と宣教。わたしたちは希望のうちにあなたとともに歩む」。これが、今回のポルトガルへの使徒的訪問のテーマでした。ファティマの聖なるおとめマリアはわたしたちを招きます。偉大な希望をもって歩みなさい。イエスのうちに現された、「上から出た知恵」(ヤコブ3・17参照)、すなわち愛に基づく知恵に導かれなさい。イエスの光と喜びを世にもたらすために。それゆえわたしは皆様にお願いします。わたしとともに祈り、主に願ってください。この愛する国ポルトガルで、福音への奉仕と、人々、それもすべての人のまことの善の追求に努めるすべての人の努力が祝福されますようにと。さらに祈りたいと思います。至聖なるマリアの執り成しによって、聖霊がこの使徒的訪問を実り豊かなものとしてくださいますように。そして、全世界で教会の宣教を力づけてくださいますように。キリストは、真理と平和と愛の福音をすべての民に告げ知らせるために、この教会を創立したからです。

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