教皇ベネディクト十六世の2010年4月25日の「アレルヤの祈り」のことば 世界召命祈願の日

教皇ベネディクト十六世は、復活節第4主日の4月25日(日)正午に、教皇公邸書斎の窓から、サンピエトロ広場に集まった信者とともに「アレルヤの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です(原文イタリア語)。


 親愛なる兄弟姉妹の皆様。

 「よい牧者の主日」とも呼ばれる今日の復活節第4主日に、「世界召命祈願の日」が行われます。今年の「世界召命祈願の日」のテーマは「あかしすることが召命を呼び起こす」です。このテーマは「司祭と奉献生活者の生活と使命に密接に結びついています」(「第47回『世界召命祈願の日』メッセージ(2009年11月13日)」)。召命を呼び起こす第一のあかしの形は、祈りです(同参照)。それは聖モニカ(332頃-387年)の模範が示すとおりです。聖モニカは、へりくだって、ねばり強く神に願い求めることによって、息子のアウグスティヌス(354-430年)がキリスト信者となるのを見る恵みを得ました。聖アウグスティヌスは述べます。「あなたの祈願によって、神がわたしにあの精神を、すなわち、わたしが何ものも真理の発見にまさるものとせず、他の何ものも欲せず、他の何ものも考えず、他の何ものも愛さないという精神を賜ったということを、わたしは疑わずに信じているし、またきっぱりといおうと思います」(『秩序』:De ordine II, 20, 52, CCL 29, 136〔清水正照訳、『アウグスティヌス著作集1 初期哲学論集(1)』教文館、1979年、320頁。ただし文字遣いを一部改めた〕)。それゆえわたしは両親の皆様にお願いします。子どもたちが心を開いてよい羊飼いのことばに耳を傾けるように、そして、「一つひとつの召命の小さな種・・・・が大きな木に育ち、教会と全人類のために豊かなよい実りをもたらす」(「第47回『世界召命祈願の日』メッセージ」)ように祈ってください。わたしたちはどのようにすれば主の声を聞いて、それを見分けることができるでしょうか。使徒とその後継者の説教を通じてです。使徒とその後継者の説教の中には、キリストの声が鳴り響いているからです。キリストは、わたしたちを神との交わりと完全ないのちへと招いてくださいます。今日の聖ヨハネによる福音書の中でいわれているとおりです。「わたしの羊はわたしの声を聞き分ける。・・・・彼らはわたしに従う。わたしは彼らに永遠のいのちを与える。彼らは決して滅びず、だれも彼らをわたしの手から奪うことはできない」(ヨハネ10・27-28)。よい羊飼いだけが、限りない愛をもって自分の羊の群れの世話をし、彼らを悪から守ってくださいます。そして、信じる者はよい羊飼いだけをどこまでも信頼することができます。
 今日の特別な「召命祈願の日」にあたり、わたしはとくに叙階された奉仕者の皆様に勧めます。「司祭年」に促されながら、「現代世界にあってより力強く、はっきりと福音をあかしする」(「『司祭年』開催を告示する手紙」)という務めを自覚してください。司祭は「地上であがないのわざを続ける」のだということを思い起こしてください。「厳しい禁欲生活を実践することによって自分の召命と使命をとことん忠実に果た」してください。進んで人々に耳を傾け、ゆるしてください。自分にゆだねられた民をキリスト者として教育してください。「兄弟的関係」(同)を深めるよう心がけてください。賢明で熱心な牧者の模範に倣ってください。たとえばナジアンゾスの聖グレゴリオス(325/330-390年頃)の模範です。ナジアンゾスの聖グレゴリオスは、敬愛する友人である司教聖バシレイオス(330頃-379年)にこう書き送っています。「わたしたちに教えてください。羊の群れに対するあなたの愛を。あなたの気遣いと、理解する力と、目覚めた心を。・・・・優しさのうちにある厳しさを、活動のうちにある落ち着きと柔和を。・・・・羊の群れを守るための戦いを。キリストに結ばれて勝ち取った・・・・勝利を」(『講話集』:Oratio IX, 5, PG 35, 825A-B)。
 ここにお集まりくださった皆様と、祈りと愛情をもってペトロの後継者としてのわたしの奉仕職を支えてくださるすべてのかたがたに感謝します。一人ひとりのかたがたに、おとめマリアの天上からのご保護を祈り求めます。このかたに今、祈りをささげます。

略号
CCL Corpus Christianorum Series Latina
PG Patrologia Graeca

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