教皇ベネディクト十六世の2010年12月5日の「お告げの祈り」のことば 洗礼者聖ヨハネ

教皇ベネディクト十六世は、待降節第二主日の12月5日(日)正午に、教皇公邸書斎の窓から、サンピエトロ広場に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です(原文イタリ […]


教皇ベネディクト十六世は、待降節第二主日の12月5日(日)正午に、教皇公邸書斎の窓から、サンピエトロ広場に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です(原文イタリア語)。

「お告げの祈り」の後、教皇はイタリア語で次の呼びかけを行いました。
「わたしたちは待降節に、主への期待を深め、主を自分たちのただ中に受け入れるよう招かれます。このときにあたり皆様にお願いします。世界中の暴力、不寛容、苦難の状況にあるすべての人々のために祈ってください。イエスの到来が慰めと和解と平和をもたらすためです。わたしは、多くの困難な状況に思いを致します。たとえば、イラクでキリスト教徒とイスラーム教徒に対して絶えず行われている暴行、死者とけが人を生じたエジプトにおける衝突です。また、人身売買商人や犯罪者の犠牲となった人々にも思いを致します。たとえば、シナイ砂漠におけるエリトリアや他の国籍の人の人質の悲劇です。すべての人の権利を尊重することが、市民の共存の条件です。わたしたちが主にささげる祈りと連帯が、苦難のうちにある人々に希望をもたらすことができますように」。
エジプトでは11月24日(水)、ギザ近郊タルビヤの聖堂建設承認をめぐってコプト教会のキリスト教徒が行った抗議行動に公安当局が出動し、信者2名が死亡しました。
エジプトとイスラエルの国境付近ではこの30日間に80名以上のエリトリア人難民が誘拐され、身代金の支払いが要求されています。


 親愛なる兄弟姉妹の皆様。

 今日の待降節第二主日の福音(マタイ3・1-12)は洗礼者聖ヨハネの姿を示します。洗礼者聖ヨハネは、有名なイザヤの預言(イザヤ40・3参照)がいうとおり、ユダヤの荒れ野に現れて説教を行い、悔い改めて、近づいているメシアの到来に備えるよう民に呼びかけました。聖グレゴリウス・マグヌス(540頃-604年、教皇在位590-没年)は解説していいます。洗礼者聖ヨハネは「正しい信仰とよいわざをのべ伝える。・・・・それは、恵みの力が人々の心を貫き、真理の光が輝き、神への道がまっすぐにされ、善へと導くみことばを聞いた魂のうちに誠実な思いが生まれるためである」(『福音書講話』:Homiliae XL in Evangelia XX, 3, CCL 141, 155)。旧約と新約の間に立って、イエスに先立つヨハネは、キリストという太陽が昇る前に現れる星のようです。もう一つのイザヤの預言によれば、このキリスト「の上に主の霊がとどまる。知恵と識別の霊、思慮と勇気の霊、主を知り、畏れ敬う霊」(イザヤ11・2)。
 待降節の間、わたしたちも神の声に耳を傾けるよう招かれます。神の声は、世の荒れ野の中で、聖書を通して語りかけます。それはとくに聖書が聖霊の力をもってのべ伝えられるときに語りかけます。実際、信仰は、神のことばに照らされることによっていっそう強められます。使徒パウロが述べるとおり、「書かれたことがらは、すべてわたしたちを教え導くためのものです。それでわたしたちは、聖書から忍耐と慰めを学んで希望をもち続けることができるのです」(ローマ15・4)。おとめマリアは耳を傾けることの模範です。「わたしたちは、神の母の生活が完全にみことばによって形づくられていたのを仰ぎ見ることによって、次のことを見いだします。わたしたちも信仰の神秘に入るよう招かれています。それは、この信仰の神秘を通して、キリストがわたしたちの生活の中に住んでくださるためです。聖アンブロシウス(339頃-397年)が述べるとおり、すべてのキリスト信者は、ある意味で、神のことばを宿し、産み出すのです」(教皇ベネディクト十六世シノドス後の使徒的勧告『神のことば』28)。
 親愛なる友人の皆様。ロマーノ・グアルディーニ(1885-1968年)がいったとおり、「わたしたちの救いは一つの到来にかかっています」(『聖夜――降誕から公現まで』:La santa notte: Dall’Avvento all’Epifania, Brescia 1994, p. 13)。「救い主は神の自由から到来します。・・・・それゆえ、信仰の決断は、近づいてこられるかたを受け入れることのうちにあります」(同:ibid., p. 14)。グアルディーニは続けていいます。「あがない主は一人ひとりの人のところに来られます。喜びと悲しみのうちに。はっきりとした認識のうちに。また混乱と誘惑のうちに。すなわち、人の本性と人生をなすすべてのもののうちに」(同:ibid., p. 15)。
 いと高きかたの御子はおとめマリアの胎内に住まわれました。今週の水曜日の12月8日に、わたしたちは無原罪の聖マリアの祭日を祝います。おとめマリアに願い求めようではありませんか。待降節の霊的旅路を歩むわたしたちを支えてください。信仰と愛をもって主の到来を迎えることができますように。

略号
CCL Corpus Christianorum Series Latina

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