教皇ベネディクト十六世の2011年1月16日の「お告げの祈り」のことば 世界難民移住移動者の日

教皇ベネディクト十六世は、年間第二主日の1月16日(日)正午に、教皇公邸書斎の窓から、サンピエトロ広場に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です(原文イタリア […]


教皇ベネディクト十六世は、年間第二主日の1月16日(日)正午に、教皇公邸書斎の窓から、サンピエトロ広場に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です(原文イタリア語)。

「お告げの祈り」の後、教皇はイタリア語で次のように述べました。
「親愛なる兄弟姉妹の皆様。ご存じのとおり、来る5月1日にわたしの敬愛する前任者である尊者教皇ヨハネ・パウロ二世を列福できることをうれしく思います。列福のために選ばれた5月1日はたいへん意義深い日です。実際、5月1日は復活節第二主日です。ヨハネ・パウロ二世はこの日を『神のいつくしみの主日』と名づけました。そして、その前晩に教皇は地上の生涯を終えました。ヨハネ・パウロ二世を知り、尊敬し、愛する人は、教会とともにこの列福を喜ばずにはいられません。なんとうれしいことでしょうか。
 最近洪水の被害に遭ったオーストラリア、ブラジル、フィリピン、スリランカの人々を祈りのうちに特別に心にとめることを約束したいと思います。主が、亡くなったかたがたの魂を受け入れ、避難しているかたがたを力づけ、人々の苦しみと困窮を和らげようと献身する人々の努力を支えてくださいますように」。
教皇は1月14日(金)、尊者ヨハネ・パウロ二世(カロル・ヴォイティワ)を5月1日に自らの司式により列福することを発表しました。
オーストラリア東部クインズランド州では大洪水により1月13日までに22人が死亡しています。ブラジル南東部リオデジャネイロ郊外の山間部で起きた集中豪雨による土砂崩れと洪水による死者は16日までに少なくとも626人に上っています。フィリピンでも中部や南部で2週間以上続く豪雨のため51人が死亡しています。スリランカでは13日までの1週間の大雨で全国で27人が死亡しました。


 親愛なる兄弟姉妹の皆様。

 今日の主日にわたしたちは「世界難民移住移動者の日」を行います。「世界難民移住移動者の日」は毎年、よりよい生活条件を求めて自国を離れる多くの人々と家族の経験を考察するようわたしたちを招きます。移住は、自発的に行われることもあれば、残念ながら、戦争や迫害によって強いられて行われることもあります。ご承知のとおり、こうした移住はしばしば悲惨な状況の中で行われます。このため国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が60年前に設立されました。主の降誕の直後の聖家族の祝日に、わたしたちは次のことを思い起こしました。イエスの両親も、彼らの幼子のいのちを救うために、自国を逃れてエジプトで難民とならなければなりませんでした。神の子であるメシアは難民だったのです。教会そのものもつねに移住を体験してきました。残念ながらキリスト信者は、時として、自分の土地を離れ、自分の祖先が暮らした国を貧しいものとしなければならない苦しみを味わっています。その一方で、キリスト信者が、さまざまな理由で、町から町へ、国から国へ、大陸から大陸へと進んで移住することは、神のことばの宣教的な力を強め、キリストの神秘体の中で信仰のあかしを広めるためのよい機会となります。こうして信仰のあかしが諸民族、諸文化を通過し、新しい土地、新しい環境にもたらされるからです。
 今年の「世界難民移住移動者の日」のためにわたしが書いたメッセージのテーマは「唯一の人類家族」です。このテーマは、世々にわたって行われる人類の偉大な旅の目的、目標を示します。それは、唯一の家族を作ることです。いうまでもなくこの唯一の家族には、この家族を豊かにするさまざまな違いが存在します。しかし、そこには隔ての壁はなく、すべての人が兄弟として認められます。だから第二バチカン公会議はこう述べたのです。「神は全人類を地の全面に住まわせられたので、すべての民族は一つの共同体をなし、唯一の起源を有する」(『キリスト教以外の諸宗教に対する教会の態度についての宣言』1)。公会議は続けて述べます。「教会はキリストにおけるいわば秘跡、すなわち神との親密な交わりと全人類一致のしるしであり道具である」(『教会憲章』1)。ですから、たとえ全世界に広がり、文化と伝統を異にしていても、キリスト信者が主の望まれたとおりに一つであることは根本的に重要です。これが、来週の1月18日から25日まで開催される「キリスト教一致祈祷週間」の目的です。今年の「キリスト教一致祈祷週間」に霊感を与えてくれるのは使徒言行録の一節です。「彼らは、使徒の教え、相互の交わり、パンを裂くこと、祈ることにおいて一つであった」(使徒言行録2・42)。キリスト教一致のための八日間の祈りに先立って、明日、「ユダヤ教とキリスト教の対話のための日」が行われます。この日は、ユダヤ教徒とキリスト教徒を結びつける共通の起源の重要性を思い起こさせてくれます。
 「お告げの祈り」によっておとめマリアに向かうにあたり、すべての移住者と、移住者のための司牧活動に従事する人々をマリアにゆだねたいと思います。さらに、教会の母であるマリアの執り成しによって、すべてのキリストの弟子が完全な交わりに向けて歩みを進める恵みが与えられますように。

PAGE TOP