教皇ベネディクト十六世の2011年7月24日の「お告げの祈り」のことば 聞き分ける心

教皇ベネディクト十六世は、年間第17主日の7月24日(日)正午に、夏季滞在先のカステル・ガンドルフォ教皇公邸の窓から、中庭に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻 […]


教皇ベネディクト十六世は、年間第17主日の7月24日(日)正午に、夏季滞在先のカステル・ガンドルフォ教皇公邸の窓から、中庭に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です(原文イタリア語)。

「お告げの祈り」の後、教皇はイタリア語で次のように述べました。
「残念ながら再び死と暴力に関するニュースが伝えられました。ノルウェーで先週の金曜日に起きた悲惨なテロ行為のゆえに深い悲しみを表したいと思います。犠牲者、けがをした人、そしてそのご家族のために祈ります。すべての人に悲しみをもって繰り返し呼びかけたいと思います。憎しみによる道を永久に捨て、悪の論理から逃れてください」。
7月22日(金)、ノルウェーの首都オスロ中心部の官庁街で大規模な爆破テロが起こり、その後、与党労働党の青年部の集会が開かれていた郊外のウトヤ島で男が銃を乱射しました。ノルウェーの警察当局は25日、計76人が死亡したと発表しました。


 親愛なる兄弟姉妹の皆様。

 今日の典礼の中で、旧約朗読(列王記上3・5、7-12参照)は、ダビデの子また後継者であるソロモン王の姿を示してくれます。わたしたちに示されるのは、彼がまだ若者だった、統治の初めの頃の姿です。ソロモンはたいへんむずかしい任務と責任を引き継ぎました。ソロモンは若い王だったので、この責任は彼の肩に重くのしかかりました。ソロモンは最初に神に荘厳な犠牲をささげました。聖書は「一千頭もの焼き尽くす献げ物」と述べます。すると主は夜の幻のうちに彼に現れて、祈りの中で願うことを与えると約束しました。ここにソロモンの心の偉大さが示されます。彼は長寿も富も、敵を追い払うことも願いませんでした。むしろ彼は主にいいます。「どうか、あなたの民を正しく裁き、善と悪を判断することができるように、このしもべに聞き分ける心をお与えください」(列王記上3・9)。主はソロモンの願いを聞き入れ、こうしてソロモンはその知恵と正しい裁きのゆえに全世界に知られる者となりました。
 それゆえソロモンは神に「聞き分ける心」を与えてくださるよう願いました。このことばは何を意味するのでしょうか。わたしたちは知っています。聖書の中で「心」は、からだの一部を表すのではありません。むしろそれは人格の中心、すなわち、意図し、判断を下す場所を表します。わたしたちはそれを良心と呼ぶことができます。ですから「聞き分ける心」は良心を意味します。良心は、耳を傾け、真理の声を感じ取ることができ、そこから、善と悪を識別することができます。ソロモンの場合、彼がこの願いを行ったのは、イスラエルという国を統治する責務のゆえでした。神はご自身の救いの計画を世に示すために、このイスラエルの民を選んだのです。それゆえ、イスラエルの王は、神のことばを聞きながら、つねに神と一致しようと努めなければなりません。それは、正義と平和の道である主の道のうちに民を導くためです。しかし、ソロモンの模範はすべての人にも当てはまります。わたしたちは皆、良心をもっています。それは、ある意味で「王」となるためです。すなわち、正しい良心に従って行動し、善を行い、悪を避けるという、人間の偉大な尊厳を実行するためです。道徳的良心は、真理の声を聞き、その指示に聞き従う力を必要とします。統治の任務を果たすよう招かれた人は、当然のことながらもっと大きな責務を帯びています。それゆえそのような人は、ソロモンが示すとおり、いっそう神の助けを必要とします。しかし、おのおのの人も、自分が置かれた具体的な状況の中で、なすべき自分の任務をもっています。誤った考え方は、わたしたちが神に有利なことがらや条件を願うよう勧めます。しかし実際には、わたしたちの個人生活と社会生活のまことの質は、各人の正しい良心にかかっています。すなわち、一人ひとりがもっている、善を見いだし、それを悪から区別し、忍耐強く実行しようと努める力にかかっています。
 このことのために、知恵の座であるおとめマリアの助けを願い求めようではありませんか。マリアの「心」は主のみ心を完全に「聞き分け」ました。マリアはつつましく単純な人だったにもかかわらず、神の目から見ると元后でした。わたしたちもマリアを元后としてあがめます。聖なるおとめマリアに助けられ、わたしたちが神の恵みによって、いつも真理に開かれ、正義を感じ取ることのできる良心を成長させることができますように。それは、わたしたちが神の国に仕えるためです。

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