教皇ベネディクト十六世の2012年3月18日の「お告げの祈り」のことば キリストの十字架

教皇ベネディクト十六世は、四旬節第四主日の3月18日(日)正午に、教皇公邸書斎の窓から、サンピエトロ広場に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です(原文イタリ […]


教皇ベネディクト十六世は、四旬節第四主日の3月18日(日)正午に、教皇公邸書斎の窓から、サンピエトロ広場に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です(原文イタリア語)。

「お告げの祈り」の後、教皇はイタリア語で次のように述べました。
「昨日(3月17日)マルセイユで、第6回世界水フォーラムが閉幕しました。今週の木曜日(3月22日)は『世界水の日』です。今年の『世界水の日』は、貴重で限られた水資源と食糧安全保障の基本的なつながりを強調します。これらの行事が、すべての人に公平で安定した適切な水補給を保障し、そこから、すべての人の生存権と栄養摂取権、そして現在と未来の世代のための地球資源の責任と連帯に満ちた使用の推進に役立ちますように」。
第6回世界水フォーラム(World Water Forum)は3月12日(月)から17日(土)まで開催されました。「世界水の日」は1992年国連総会決議により定められました。


 親愛なる兄弟姉妹の皆様。

 復活祭に向かって旅するわたしたちは、四旬節第四主日に到達しました。この旅路は、イエスとともに「荒れ野」を通る道です。この期間の中で、わたしたちは神の声にますます耳を傾け、自分の中でささやくさまざまな誘惑を暴かなければなりません。この荒れ野を背景として、十字架が姿を現します。イエスは、十字架がご自分の使命の頂点であることを知っておられます。実際、キリストの十字架は、わたしたちに救いをもたらす、愛の頂点です。イエスご自身がこのことを今日の福音の中で述べます。「モーセが荒れ野で蛇を上げたように、人の子も上げられねばならない。それは、信じる者が皆、人の子によって永遠のいのちを得るためである」(ヨハネ3・14-15)。ここでいわれているのは、出エジプトの際に、ヘブライ人が毒蛇に襲われて、多くの人が死んだという出来事です。そのとき神はモーセに、青銅の蛇を造って、それを旗竿の先に掲げるよう命じました。蛇にかまれても、青銅の蛇を仰げばいやされました(民数記21・4-9参照)。イエスも十字架上に上げられます。それは、罪によって死の危険にさらされた人はだれでも、わたしたちのために死んだイエスに信仰をもって目を注ぐなら、いやされるためです。聖ヨハネはいいます。「神が御子を世に遣わされたのは、世を裁くためではなく、御子によって世が救われるためである」(ヨハネ3・17)。
 聖アウグスティヌス(354-430年)は解説していいます。「主は、医者がそうするように、病人をいやすために、やって来られた。医者の処方を守ろうとしない者は自らを滅ぼす。主は救い主として世にやって来られた。・・・・あなたは主によって救われたいと望まないのか。あなたは自らの手で裁かれるのだ」(『ヨハネ福音書講解』:In Johannis Evangelium tractatus 12, 12, PL 35, 1190〔水落健治訳、『アウグスティヌス著作集23 ヨハネによる福音書講解説教(1)』教文館、1993年、216頁〕)。それゆえ、神のあわれみ深い愛は、わたしたちのいのちをあがなうために御独り子を与えるほど限りないものです。そうであれば、わたしたちの責務も同じように重大です。実際、わたしたちは皆、自分が病気であることを認めなければなりません。いやされるためです。わたしたちは皆、自分の罪を告白しなければなりません。十字架上ですでに与えられた神のゆるしが、わたしたちの心と生活の中で働くためです。聖アウグスティヌスはさらに述べます。「神はあなたの罪を非難される。あなたもまた非難するそのとき、あなたは神と結ばれるのだ。・・・・あなたが自ら行ったことを不快に思うそのときから、あなたは自らの悪しき行いを非難し、かくしてあなたのよき行いが始まるのだ。よき行いは、悪しき行いの告白から始まる」(同:ibid. 12, 13, PL 35, 1191〔前掲邦訳、217頁〕)。人はときとして光よりも闇を愛します。自分の罪に捕らわれているからです。しかし、光へと心を開き、心から自分のとがを神に告白することによって初めて、まことの平和と喜びを見いだすことができます。ですから、とくに四旬節の間、ゆるしの秘跡に定期的にあずかることが大切です。それは、主のゆるしを受け、回心の歩みを深めるためです。
 親愛なる友人の皆様。明日わたしたちは聖ヨセフの祭日を祝います。わたしの霊名の祝日に、祈りのうちにわたしのことを思い起こしてくださるすべてのかたがたに心から感謝申し上げます。とくに皆様にお願いします。今週の金曜日に始める、メキシコとキューバへの使徒的訪問のために祈ってください。この使徒的訪問を、わたしがこれから訪れる両国で深く愛され、崇敬されている聖なるおとめマリアの執り成しにゆだねます。

略号
PL Patrologia Latina

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