教皇ベネディクト十六世の2012年7月1日の「お告げの祈り」のことば 人間をいやすイエス

教皇ベネディクト十六世は、年間第13主日の7月1日(日)正午に、教皇公邸書斎の窓から、サンピエトロ広場に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です(原文イタリア […]


教皇ベネディクト十六世は、年間第13主日の7月1日(日)正午に、教皇公邸書斎の窓から、サンピエトロ広場に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です(原文イタリア語)。

なお、6月30日(土)、教皇庁公邸管理部は、7月の教皇の休暇の予定について発表しました。教皇は7月3日(火)から夏季滞在先のカステル・ガンドルフォ教皇公邸に移ります。夏季休暇中、すべての個人謁見は行われません。7月の水曜一般謁見はありません。一般謁見は8月1日(水)から定期的に再開されます。夏季休暇中も、日曜と祭日の「お告げの祈り」はカステル・ガンドルフォ教皇公邸中庭で行われます。


 親愛なる兄弟姉妹の皆様。

 今日の主日に、福音書記者マルコは、イエスが二人の女性のために行った二つの奇跡的ないやしに関する記事を示します。二人の女性とは、会堂長の一人でヤイロという名の人の娘と、出血で苦しむ女です(マルコ5・21-43参照)。この二つの話の中では、二つの次元の解釈が示されます。一つは純粋に身体的な次元です。イエスは人間の苦しみに身をかがめ、からだをいやします。もう一つは霊的な次元です。イエスが来たのは、人間の心をいやし、救いをもたらすためです。イエスはご自身への信仰を求めるのです。実際、第一の話の中で、ヤイロの娘が死んだという知らせを聞くと、イエスは会堂長にいいます。「恐れることはない。ただ信じなさい」(36節)。イエスは娘のいるところに会堂長を伴い、叫んでいいます。「少女よ、わたしはあなたにいう。起きなさい」(41節)。すると少女は立ち上がって、歩き出しました。聖ヒエロニュムス(Hieronymus 347-419/420年)はこのことばを解説して、イエスの救いをもたらす力を強調します。「少女よ、わたしのゆえに起きなさい。あなたのいさおしのゆえにではなく、わたしの恵みのゆえに起きなさい。それゆえ、わたしのゆえに起きなさい。いやされたのは、あなたの徳のためではない」(『マルコ福音書講解』:Tractatus in Marci Evangelium 3)。出血に苦しむ女についての第二の話は、イエスが人間の全体を解放するために来られたことをあらためて強調します。実際、奇跡は二段階で生じます。第一の段階は身体のいやしです。しかし、身体のいやしは、もっと深いいやしと密接に結びついています。この深いいやしは、信仰によって神に心を開く人に神の恵みをもたらします。イエスは女にいいます。「娘よ、あなたの信仰があなたを救った。安心して行きなさい。もうその病気にかからず、元気に暮らしなさい」(マルコ5・34)。
 この二つのいやしに関する記事は、単なる水平的・功利的な人生観を乗り越えるようにわたしたちを招きます。わたしたちはしばしばさまざまな問題や具体的な困窮の解決を神に願います。それは正しいことです。しかし、わたしたちが粘り強く願わなければならないのは、信仰をますます強めていただくことです(なぜなら、主はわたしたちの人生を新たにしてくださるからです)。神の愛に、わたしたちを見捨てることのない神の摂理に、ゆるぎない信頼を置くことです。
 わたしたちは、人間の苦しみに目を留めるイエスにより、自分たちの十字架を担う病人を助けるすべての人々のことも考えさせられます。とくに医師、医療従事者、介護施設で宗教的な支えを与える人々です。これらの人々は、苦しむ人々に平安と希望をもたらす「愛の奉仕者」です。回勅『神は愛』の中でわたしはこう述べました。このような貴重な奉仕を行うに際して、何よりもまず必要なのは専門的な能力です。専門的な能力は第一の基本的な条件ですが、しかしそれだけでは不十分です。実際、わたしたちが相手にするのは人間です。人間は、人間性と、心のこもった配慮を必要としています。「したがって、専門的な教育に加えて、教会の愛のわざを行うスタッフは『心の教育』を必要とします。すなわち、彼らはキリストの内に神との出会いへと導かれなければなりません。この神との出会いによって、愛が呼び覚まされ、心を人に開くことができるようになるからです」(同31)。
 おとめマリアに願い求めようではありませんか。わたしたちの信仰の歩み、とくに困っている人々に対する具体的な愛のわざに同伴してください。そして祈り求めようではありませんか。身体と心の苦しみのうちに生きる兄弟のために、どうか母として執り成してください。

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