教皇ベネディクト十六世の2012年11月11日の「お告げの祈り」のことば やもめの信仰

教皇ベネディクト十六世は、年間第32主日の11月11日(日)正午に、教皇公邸書斎の窓から、サンピエトロ広場に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です(原文イタ […]


教皇ベネディクト十六世は、年間第32主日の11月11日(日)正午に、教皇公邸書斎の窓から、サンピエトロ広場に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です(原文イタリア語)。

「お告げの祈り」の後、教皇はイタリア語で次のように述べました。
「昨日、スポレートでマリア・ルイーザ・プロスペリ(Maria Luisa Prosperi 1799-1847年)が列福されました。19世紀前半の人であるマリア・ルイーザ・プロスペリは、トレヴィのベネディクト修道院の修道女また女子大修道院長です。全ベネディクト修道家族とスポレート=ノルチャ教区共同体とともに、このキリストの受難と特別なしかたで一致したいと望んだ主の娘のゆえに主を賛美したいと思います」。


 親愛なる兄弟姉妹の皆様。

 今日の主日のことばの典礼は、二人のやもめを信仰の模範として示します。二人は並行して示されます。一人は列王記上(17・10-16)のやもめ、一人はマルコによる福音書(12・41-44)のやもめです。二人の女はともにきわめて貧しく、そしてまさにこの貧しい状態の中で神への深い信仰を示します。第一のやもめは預言者エリヤの物語との関連で登場します。飢饉のとき、エリヤは主からシドン近郊に行くよう命じられます。シドンはイスラエルの外の、異邦人の地域です。エリヤはそこでこのやもめと出会います。そして彼女に、飲み水と少しのパンをくれるように願います。女はエリヤにこたえます。自分には一握りの小麦粉とわずかな油しかありません。しかし、いうことを聞くなら小麦粉と油が尽きることはないと預言者がいい、約束したがゆえに、彼女はエリヤのことばどおりにして、報いを得ました。福音書に登場する第二のやもめは、エルサレム神殿の賽銭箱のところにいるのをイエスに見いだされます。人々は賽銭箱に供えものを入れていました。イエスはこの女が賽銭箱に二枚の硬貨を入れるのをご覧になります。するとイエスは弟子たちを呼んで説明します。この女の献金は金持ちたちの献金よりも多い。なぜなら、金持ちは自分の有り余る中から入れたが、やもめは「自分のもっている物をすべて、生活費を全部入れたからである」(マルコ12・44)。
 この二つの聖書の箇所に思慮深く耳を傾けることによって、信仰に関する貴重な教えを引き出すことができます。この教えは、自分の生活の基盤を神とそのみことばの上に置き、完全に神に信頼する人の内的な態度について示されます。古代のやもめは、やもめであること自身によって、きわめて困窮した状態に置かれていました。そのため、聖書の中で、やもめと孤児は、神が特別な配慮を示す人々です。彼らは地上の支えを失いましたが、神が彼らの夫また親であり続けます。しかし聖書はいいます。客観的な意味で貧しい状態(この場合はやもめであること)だけでは不十分です。神はつねにわたしたちが信仰をもって聞き従うことを求めます。この信仰は、神と隣人への愛によって表されます。だれも何も与えることができないほど貧しくはありません。実際、今日取り上げた二人のやもめはともに、愛のわざを果たすことを通して自らの信仰を示します。一人は預言者に愛のわざを果たし、もう一人は施しを行います。こうして二人は、信仰と愛が切り離しえないしかたで結びついていることをあかしします。それは、先週の主日の福音が示してくれたとおり、神への愛と隣人への愛が結びついているのと同じです。わたしたちが昨日記念した教皇大聖レオ(Leo Magnus 400頃-461年、教皇在位440-没年)はいいます。「神の正義の秤(はかり)では、たまものの量よりも心の意向が計られる。福音に見られるやもめは、献金箱に二つの銅貨を入れただけであったが、他のどんな金持ちの献金にもまさるものをささげたのである。神のもとでは、どのような慈善のわざもつまらないものは一つもなく、どのようないつくしみも実を結ばないものは一つもない」(『十二月の断食についての説教』:Sermo de jejunio dec. mens. 90, 3〔熊谷賢二訳、『キリストの神秘――説教全集――』創文社、1965/1993年、562頁〕)。
 おとめマリアは、神に信頼しながら自分のすべてをささげる者の完全な模範です。マリアはこのような信仰をもって天使に「はい」とこたえ、主のみ心を受け入れます。「信仰年」にあたり、マリアの助けによって、わたしたちが皆、神とみことばへの信頼を強められますように。

PAGE TOP