教皇ベネディクト十六世、降誕祭メッセージ(ローマと全世界へ)(2012.12.25)

12月25日(火)正午に、サンピエトロ大聖堂バルコニーから、教皇ベネディクト十六世は降誕祭のメッセージを発表しました。メッセージは「ローマと全世界へ(ウルビ・エト・オルビ)」と呼ばれ、毎年、降誕祭と復活祭に発表されます。 […]


12月25日(火)正午に、サンピエトロ大聖堂バルコニーから、教皇ベネディクト十六世は降誕祭のメッセージを発表しました。メッセージは「ローマと全世界へ(ウルビ・エト・オルビ)」と呼ばれ、毎年、降誕祭と復活祭に発表されます。以下はその全訳です(原文イタリア語)。
メッセージの発表の後、65か国語による祝福が述べられました。教皇は53番目に日本語で次のように述べました。「クリスマスと新年おめでとうございます」。最後の祝福は、メッセージの中でも引用されていることばを用いて、ラテン語で行われました。「まことは地から萌えいでた(Veritas de terra orta est!)」。


 「まことは地から萌えいでた(Veritas de terra orta est!)」(詩編85・12)。
 ローマと全世界の親愛なる兄弟姉妹の皆様。皆様とご家族に降誕祭のお慶びを申し上げます。
 「信仰年」にあたり、詩編の一つからとったこのことばをもって、降誕祭のごあいさつを申しあげます。「まことは地から萌えいでた」。実際には、詩編のテキストにおいて、このことばは未来形でいわれています。「まことは地から萌えいでるであろう」。このことばは告知であり約束です。このことばには次の表現が伴います。「いつくしみとまことは出会い/正義と平和は口づけし、まことは地から萌えいで/正義は天から注がれます。主は必ず良いものをお与えになり/わたしたちの地は実りをもたらします。正義はみ前を行き/主の進まれる道を備えます」(詩編85・11-14)。
 今日、この預言のことばが実現しました。ベツレヘムでおとめマリアから生まれたイエスのうちに、いつくしみとまことが本当に出会い、正義と平和が口づけします。まことは地から萌えいで、正義は天から注がれます。聖アウグスティヌス(Augustinus 354-430年)は感嘆すべき簡潔さをもって解説していいます。「まこととは何か。神の子である。地とは何か。肉である。キリストはどこから生まれたのかと問うがよい。そうすれば、まことが地から萌えいでたことが分かるであろう。・・・・まことはおとめマリアから生まれたのだ」(『詩編注解』:Enarrationes in Psalmos 84, 13)。アウグスティヌスは降誕についての説教でいいます。「それゆえ、毎年行われるこの祭日により、われわれは預言が成就した日を祝うのである。『まことは地から萌えいで、正義は天から注がれる』。御父のふところにおられた真理は、母のふところにいたかのように地から萌え出た。世の全体を治める真理は、女の手に支えられていたかのように地から萌え出た。・・・・天が収めきれない真理は、飼い葉桶に横たえられるために、地から萌え出た。だれのために至高の神がかくも低くなられたのか。いうまでもなく、ご自身のためではない。それは、もしわれわれが信じるなら、われわれの大いなる益のためである」(『説教』:Sermones 185, 1)。
 「もしわれわれが信じるなら」。ここに信仰の力があります。神はあらゆることができます。神にできないことはありません。神は肉となります。神の愛に満ちた全能は、人間の理解を超えたことを実現しました。無限なかたが幼子となられ、人類の中に入って来られたのです。しかし、もしわたしが門を開けなければ、神もわたしの心に入って来ることができません。それが「信仰の門」(Porta fidei)です。わたしたちはこの自分たちの逆の全能性に驚かされます。人間が神に心を閉じる力に恐れを抱きます。しかし、ここにこの暗い考えを吹き飛ばす現実があります。恐れに打ち勝つ希望があります。まことは地から萌えいでました。神が生まれました。「大地は作物を実らせました」(詩編67・7)。そうです。それはよい土地でした。健全で、あらゆる利己主義と自己閉塞からも自由な土地でした。世には、神が来て、わたしたちのただ中に住むために用意した土地があります。神が世に現存するための住まいがあります。この土地は存在します。そして、2012年の現代においても、この地からまことが萌えいでました。だから世界には希望があります。きわめて困難なときと状況においても、より頼むことのできる希望があります。まことは萌えいで、愛と正義と平和をもたらします。
 そうです。紛争によって傷つき、分裂したシリア国民のために平和が萌えいでますように。この紛争は、無防備な人々も容赦せず、罪のない犠牲者のいのちを奪っています。わたしはあらためて呼びかけます。流血がやみ、難民や避難民に支援がなされ、対話を通じて紛争の政治的な解決が追求されますように。
 あがない主が生まれた地に平和が萌えいでますように。そして、主がイスラエルとパレスチナの人々に長年の戦争と対立を終わらせ、交渉の開始を決断する勇気を与えてくださいますように。
 新たな未来を求める大きな移行期にある北アフリカ諸国、とくにイエスの幼年期によって祝福された、愛する地エジプトで、市民がともに、正義と、自由とすべての人格の尊厳の尊重に基づく社会を建設することができますように。
 広大なアジア大陸で平和が萌えいでますように。幼子イエスが、アジアに住む多くの人々、とくにイエスを信じる人々にいつくしみのまなざしを注いでくださいますように。中華人民共和国の新しい指導者がこれからの課題を果たしていけるよう、平和の君が目を向けてくださいますように。この新指導者のかたがたが、諸宗教の貢献を評価し、すべての宗教を尊重してくださることを希望します。こうして諸宗教が、この高貴な国と全世界の善益のために、連帯した社会を築くために貢献できますように。
 キリストの降誕が、マリの平和とナイジェリアの一致の回復をもたらしてくれますように。この国々では、残酷なテロ攻撃がとくにキリスト信者の中で犠牲者のいのちを奪い続けているからです。あがない主がコンゴ民主共和国東部地域からの難民に助けと慰めを、ケニアに平和を与えてくださいますように。これらの国では流血の攻撃が市民と礼拝所を襲っているからです。
 幼子イエスが、ラテンアメリカでイエスを祝う多くの信者を祝福してくださいますように。どうかイエスが彼らの人間的・キリスト教的徳を高め、家族と土地を離れることを余儀なくされた人々を支え、発展と犯罪との戦いに努める政府指導者を強めてくださいますように。
 親愛なる兄弟姉妹の皆様。いつくしみとまこと、正義と平和は出会い、ベツレヘムでマリアから生まれた人間のうちに受肉しました。このかたこそが神の子であり、歴史の中に現れた神です。この幼子の誕生は、全人類のための新しいいのちの芽生えです。すべての地がよい土地となり、いつくしみとまことと正義と平和を受け入れ、萌えいでさせますように。皆様、クリスマスおめでとうございます。

PAGE TOP