教皇ベネディクト十六世は、主の公現の祭日の1月6日（日）正午に、教皇公邸書斎の窓から、サンピエトロ広場に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です（原文イタリア […]
教皇ベネディクト十六世は、主の公現の祭日の1月6日（日）正午に、教皇公邸書斎の窓から、サンピエトロ広場に集まった信者とともに「お告げの祈り」を行いました。以下は、祈りの前に教皇が述べたことばの全文の翻訳です（原文イタリア語）。
この日教皇は、午前9時からサンピエトロ大聖堂で、主の公現の祭日のミサをささげ、ミサの中で新たに4名の司教叙階を行いました。新たに叙階されたのは、ヴォルトゥルノ名義大司教となり、教皇庁教育省次官に任命されたアンジェロ・ヴィンチェンツォ・ツァーニ師（62歳）、アクアヴィーヴァ名義大司教となり、在ニカラグア教皇大使に任命されたドルトゥナトゥス・ヌワチュクウ師（52歳）、教皇個人秘書で、ウルビサリア名義大司教となり、教皇公邸管理部室長に任命されたゲオルク・ゲンスヴァイン師（56歳）、エクラノ名義大司教となり、在グアテマラ教皇大使に任命されたニコラ・アンリ・マリー・ドニ・テヴナン師（54歳）です。
親愛なる兄弟姉妹の皆様。
遅くなって申し訳ありません。サンピエトロ大聖堂で4名の新しい司教を叙階し、式がすこし長くなりました。さて、今日わたしたちは何よりも主の公現を祝います。主の公現とは、主が諸民族に現されたことです。しかし、この日、多くの東方教会は、ユリウス暦に従って、主の降誕を祝います。二つの出来事を重ねるこの小さな相違は、次のことを強調します。ベツレヘムの貧しい洞窟で生まれた幼子は、すべての民の歩みを導く、世の光です。これは信仰の観点をも反映する組み合わせです。一方で、わたしたちは降誕祭に、イエスのみ前で、マリアとヨセフと羊飼いたちの信仰を見いだします。今日の主の公現にわたしたちが見いだすのは、ユダヤ人の王を拝むために東方から来た、三人の占星術の学者たちの信仰です。
おとめマリアは夫ヨセフとともに、そこからメシアが生まれる、イスラエルの「株」、預言者があらかじめ告げた「残りの者」を代表します。これに対して、占星術の学者たちは諸国民を代表します。諸国民とは、いわば神の平和と正義と真理と自由による支配を求めて、神への道を歩む、諸文明、諸文化、諸宗教だということができます。それには、何よりもまず「シオンの娘」マリアに体現された中心が存在します。それはイスラエルの中心です。イスラエルは、歴史の歩みの中で太祖たちに現された神を知り、信じた民です。この信仰が、時が満ちて、マリアにおいて完成します。「信じたがゆえに幸いなかた」であるこのマリアのうちに、みことばは肉となり、神は世に「現れました」。マリアの信仰は、新しい契約の民である教会の信仰の初穂であり、模範です。しかし、この新しい契約の民は、最初から普遍的です。わたしたちはそのことを占星術の学者たちの姿のうちに見いだします。彼らは星の光と聖書の指示に従ってベツレヘムにたどり着くからです。
大聖レオ（400頃－461年、教皇在位440－没年）は述べます。「もろもろの民とは、聖なる太祖アブラハムに約束された、肉によってではなく信仰の力によって生まれる、数えきれないほど多くの子孫のことである」（『主の公現についての説教3』：Sermo 3 in Epiphania, 1, PL 54, 240〔熊谷賢二訳、『キリストの神秘――説教全集』創文社、1965／1993年、273頁〕）。マリアの信仰はアブラハムの信仰になぞらえられます。それは、同じ約束の、すなわち、変わることのない同じ神の計画の新しい始まりです。この神の計画は、今やキリスト・イエスのうちに完全に実現します。キリストの光はあまりにも明るく強いため、宇宙の言語も聖書のことばも理解できるようになります。そして、占星術の学者たちと同じように、真理に心を開くすべての人は、この言語を知り、世の救い主を仰ぎ見るに至ります。聖レオはさらにいいます。「したがって、異邦人よ、その数が満ちるまで入れ。太祖たちの家族に入れ。････すべての民は････万物の創造主を礼拝せよ。そして、ユダヤだけでなく、全世界が神を知らんことを」（同：ibid.〔前掲熊谷賢二訳、274頁〕）。このような観点から、今朝、サンピエトロ大聖堂で行うことができた司教叙階のことも考えることができます。新司教のうち、二人は聖座への奉仕を続け、残りの二人は諸国家における教皇大使となるために出発します。彼らとその奉仕職のために祈りたいと思います。キリストの光が全世界に輝きますように。
略号
PL Patrologia Latina