2015年灌仏会に際しての 教皇庁諸宗教対話評議会から日本へのメッセージ

灌仏会に際しての教皇庁諸宗教対話評議会からのメッセージ 「核兵器のない世界に向けて協力する仏教徒とキリスト教徒」(2015年4月8日、バチカン) 親愛なる日本の仏教徒の皆様 1. 釈尊の生誕を記念する灌仏会(花祭り)が4 […]

灌仏会に際しての教皇庁諸宗教対話評議会からのメッセージ
「核兵器のない世界に向けて協力する仏教徒とキリスト教徒」(2015年4月8日、バチカン)

親愛なる日本の仏教徒の皆様

1. 釈尊の生誕を記念する灌仏会(花祭り)が4月8日に祝われるにあたり、教皇庁諸宗教対話評議会は皆様に喜びのご挨拶を申し上げるとともに、皆様の心、皆様の家族、そして日本が平和と平穏と喜びに包まれるよう望みます。

2.  日本では広島と長崎への原爆投下70周年を迎える準備が進められています。したがって、今年は「核兵器のない世界にむけて協力する仏教徒とキリスト教徒」というテーマについて皆様と一緒に考えたいと思います。日本の人々は、平和がいかに重要で緊急を要するものであるかを深く胸に刻み、平和活動、特に核軍縮に向けた取り組みにおいて世界に多大な貢献をしてきました。長崎への原爆投下後の惨状を生き抜いた被爆者の一人である正木幸子さんは次のように語っています。「わたしは、起こったことをすぐにでも伝えなければならないと感じています。世界中のあらゆる人の前に立って戦争の狂気と恐怖を伝えたいのです」(Hibakusha Survivors of Hiroshima and Nagasaki, P147)。このことばは、より平和な世界を築くために協力するという共通の使命をわたしたちに思い起こさせてくれます。この証言を含むすべての被爆者の証言は、口述されたか否かにかかわらず、全世界にメッセージを発信しています。それは「もう誰も、自分たちのように苦しむことがあってはならない」というメッセージです。わたしたちは被爆者の皆様にも心から敬意と感謝の意を表します。

3. 教皇フランシスコは次のように述べています。「核兵器は、すべての国、これからの世代、そしてわたしたちの地球に影響を及ぼす世界的な問題です。核兵器廃絶を目指して核軍縮を進めるには、世界共通の倫理が必要です」(「人類への核兵器の影響に関するウィーン国際会議での演説」2014年12月7日)。教皇はさらに強調しました。「核兵器のない世界は、すべての国が目標とすべき世界です。それは世界中の指導者が提唱すべきことであると同時に、数え切れないほど多くの人々の願いでもあります。人間家族の未来と存続は、核兵器のない世界が理想で終わることなく、確かに実現するかどうかにかかっているのです」(同)。

4. 仏教の倫理は、「すべての生き物を大切にすること」を基本としています。釈尊は「この世の憎しみは憎しみによってやむことはなく、慈愛によってのみやむ。これは永遠の真実である」(法句経I, 5)と教えています。イエスの教えは、「心を尽くし、精神を尽くし、思いを尽くし、力を尽くして神を愛しなさい。そして隣人を自分のように愛しなさい」(マタイ22・35―40、マルコ12・28―34参照)というもっとも重要なおきてにまとめることができます。

5. 残念ながら、緊迫状態をもたらす新たな温床、軍拡競争、テロ、さまざまな形の原理主義や狂信的行為により、人間家族の尊厳と、個人及び国家間の平和的共存が危機に瀕しています。それでも、すべての人が心から平和を切望し続けています。したがって、アッシジと比叡山の精神のもとに、信頼と友愛的対話に満ちた環境を整えるためにつねに協力し続けましょう。そして、教皇フランシスコのことばにもあるように、「核兵器廃絶を目指して核軍縮を進めるのに必要な」世界共通の倫理を築くために協力できる方法を探し求めましょう。

6. 親愛なる仏教徒の皆様、こうした思いのうちに、あらためて皆様に心から灌仏会のお祝いを申し上げます。

諸宗教対話評議会議長
ジャン=ルイ・トーラン枢機卿
同評議会次官
ミゲル・アンヘル・アユソ・ギクソット神父

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