2016年カトリック教会から神道への新年のご挨拶

教皇庁諸宗教対話評議会 「神道の皆様とキリスト教信者が共に暮らす家であるこの地球を大切に」 親愛なる神道の皆様 神道の皆様、あけましておめでとうございます。  すべての日本人の方々、そして特に神道の皆様にとって大切な祝日 […]

教皇庁諸宗教対話評議会
「神道の皆様とキリスト教信者が共に暮らす家であるこの地球を大切に」

親愛なる神道の皆様

神道の皆様、あけましておめでとうございます。

 すべての日本人の方々、そして特に神道の皆様にとって大切な祝日である新年に際し、教皇庁諸宗教対話評議会は心からご挨拶を申し上げます。神道の皆様がお祝いされるすべての行事や儀式が、皆様のご家族にだけでなく近隣の方々、そして日本国全体に平和と調和、そして幸せと繁栄をもたらされますように!

 今年、教皇庁諸宗教対話評議会は教皇フランシスコ回勅『ラウダート・シ』に啓発され、神道の皆様にお手紙申し上げます。現在、環境危機は地球規模で起っております。これは実に深刻な問題です。それは、誰一人自分の家であるこの地球から誰も逃れることができないからです。皆様もお気づきのように、環境危機は問題が起こっている特定の地域だけの問題ではありません。それどころか大気、水、食料、そして地質の汚染が広がり、これによってもはや人間だけでなく地球で生きるすべての生き物にとって、地球が健康的な生活をおくることができる場所ではなくなるという奥の深い恐怖をもたらしています。

 教皇フランシスコ曰く「私は聖フランシスコが弱き者への配慮と自然の生態系に忠実に、且つ喜びに満ちて生きた素晴らしい手本だと信じています。(中略)また聖フランシスコは、キリスト教信者ではない人々にも愛された人物です。特に彼は神が創造された者のために、そして貧しく見捨てられた人々のために心を尽くした人でした。(中略)彼は神秘家で巡礼者でもありました。シンプルな生活の中で、神と人とそして自然との素晴らしい調和を奏でた人でした。聖フランシスコは私たちに自然への配慮、貧しい人々に対する正義、社会貢献そして心の内なる平和が、切っても切れない関係にあるということを示しています。」(教皇フランシスコ回勅『ラウダート・シ』10)教皇はさらに「聖フランシスコはどんな小さな生き物でも「兄弟よ」「姉妹よ」と呼んでいました。」と書いております。(教皇フランシスコ回勅『ラウダート・シ』11)

 古代の日本人は夫婦神により万物が誕生し、すべての生きとし生けるものには霊性があると考えていると伺いました。したがって世界の自然環境と人間は、兄弟姉妹のような家族であると言えましょう。(Nature, It is Divine: Message from Shinto, Association of Shinto Shrines.自然、すなわち神なり:神道本庁よりいただいたメッセージより)したがって神道の皆様が深い畏敬の念を持って自然を鑑賞することの重要性を説かれるのは、神道と自然の不可分な関係に起因していると私たちは考えております。

 神道の皆様、神との関係、家族関係そして自然との関係は、人間の貪欲さが共に暮らす地球環境を略奪したため、今日、脅威に曝されています。神道の皆様とキリスト教信者が、この環境危機を好転させるためにできることはなんでしょうか? とりわけ霊的な問題に対する危機に関して、私たちができることはなんでしょうか?人間の心を根本的に変え、さらに地球規模で生態系を本来の姿に戻すことは急務と言えます。この方面で私たちには二つの使命があります。一つ目は神道とキリスト教のそれぞれの信者が環境問題に関心を示すように、彼らに神学的な新しい息吹を吹き込み、さらに政治活動を奨励するなど信者たちを啓発してゆくこと。二つ目は環境問題に責任を持った社会秩序を構築するために神道とキリスト教が共に働くことです。

 新年が来る度に、私たちは新しい希望や新しい夢を抱き、新しい計画を立て、そして決意も新たにします。新年は、ある人にとっては最初からもう一度やり直す機会であり、別の人にとっては何か別の事に挑戦する機会でしょう。神道とキリスト教という別々の霊性に導かれ、私たちは消費と生産というライフスタイルを変え、緑化を推進することで共に暮らす地球環境を保護していきましょう。

 神道の皆様、年の初めに際し、それぞれの宗教の伝統に従い、共に世界の平和を祈りましょう。そして私たちの地球のために共に祈りましょう。

 「全能の神は、全世界に存在されると同時に、最も小さな生き物の中にもおわします。(中略)私たちが飽食を止めることで世界を守り、破壊や汚染を止めることで美しい環境を育み、私たちに癒しをもたらすのです。 貧しい人々と地球を犠牲にして利益を貪る人の心に触れてください。それぞれの事柄に価値を見出せるように教えてください。畏敬の念に満ち、神様の無限の光に向かっていく旅のように、すべての生きとし生けるものと強固な絆で結ばれているのだと、私たちに気づかせてください。」(教皇フランシスコ回勅『ラウダート・シ』246)

 改めて、神道の皆様、お正月おめでとうございます。

 皆様のこの一年のご多幸を心よりお祈り申し上げます。

教皇庁諸宗教対話評議会議長
ジャン・ルイ・トーラン枢機卿
同次官
ミゲル・アンヘル・アユソ・ギクソット神父

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