2017年灌仏会にあたり教皇庁諸宗教対話評議会から 日本の仏教信者の皆様あてのメッセージ

灌仏会にあたり教皇庁諸宗教対話評議会から 日本の仏教信者の皆様あてのメッセージ 「共に人類の和解を目指して」 親愛なる日本の仏教信者の皆様 1.釈尊の生誕を記念する灌仏会(花祭り)が4月8日に祝われるにあたり、教皇庁諸 […]

灌仏会にあたり教皇庁諸宗教対話評議会から
日本の仏教信者の皆様あてのメッセージ
「共に人類の和解を目指して」

親愛なる日本の仏教信者の皆様

1.釈尊の生誕を記念する灌仏会(花祭り)が4月8日に祝われるにあたり、教皇庁諸宗教対話評議会は喜びのご挨拶を申し上げるとともに、この祭日が、皆様の家族とさまざまな仏教宗派に喜びと平和をもたらすものとなるようお祈りいたします。

2.今年は、平和な社会を築くために和解の重要性と力について皆様と一緒に考えたいと思います。和解の重要な要素の一つは、過去の戦争による歴史的な傷という繊細な問題を解決することです。この点について、米国のバラク・オバマ前大統領による広島訪問と、その後に行われた安倍晋三首相による真珠湾米国海軍基地訪問が物語っているのは、戦争は終わるものであり、敵対する者も共通の利益と価値観の基に友になりうるということです。これらの象徴的な行いは、戦争の苦しみを思い起こさせると同時に、戦争を二度と繰り返さないために確かな対策を講じるよう促します。教皇フランシスコは次のように述べています。「非暴力主義の指導者の努力のおかげで、一部の人々だけでなく国全体さえもが自由と正義を平和的に獲得しました。これは現在、そして未来にたどるべき道です。これこそが平和の道です。この平和は、たとえことばで宣言されていても、実際には、多くの人が生活必需品に事欠く状況の中で、法外な軍事支出に支えられた支配戦略を推し進めることによって否定されている平和とは違います。」(教皇フランシスコ、挨拶、2016年12月15日)。

3.わたしたちは皆、祈りと対話と和解が互いに結びついていることを知っています。「和解」という今年のテーマは、8月3日から4日まで行われる比叡山宗教サミットが30周年を迎えるにあたり、特別な意味をもちます。祈りと対話には、憎しみと報復によって汚染された心と知性を清める力、傷ついた記憶をいやす力、敵対関係から友好関係に移行させる力、さらには途絶えたコミュニケーションや崩壊した社会構造を回復させる取組みを支援するようわたしたちを促す力があります。わたしたちは深く「分裂した世界」に生きています。したがって、宗教指導者であるわたしたちには争いを防ぎ、紛争を解決し、分裂した社会を和解させるという道義的責務があります。

4.武力紛争の根本的な原因が複数あることは明らかであり――政治、経済、軍事、そして文化的、宗教的な影響など――、和解を育む取組みは、社会のあらゆる部門とあらゆる関係者による共同作業で行われなければなりません。したがって、この傷つき壊れた現代社会の中で、わたしたちは共通の責務を担っています。それらの責務には、犠牲者と加害者双方に手を差し伸べ、彼らが失った人間性を取り戻せるよう助けること、紛争や暴力行為の原因を根絶するために努力すること、そして非人間的な社会を和解に満ちた社会に変えるためにすべての宗教者と善意の人と協力することが含まれます。

5.ご承知のように、暴力的な争いはとりわけ子どもたちの人生に悪影響を及ぼします。争いにおいては、歴史、文化、尊い伝統が先入観と領土的野心によってしばしば傷つけられたり、ゆがめられたり、誤って解釈されたりします。したがって、暴力的な争いによって分断された社会、団体、個人――とりわけ子どもたち――を和解させるためには、教育が非常に重要な役割を果たします。宗教指導者であるわたしたちには、子どもたちを受容性に富んだ普遍的な価値観に導く責務があります。

6.仏教信者の皆様、こうした思いのうちに、皆様に灌仏会のお祝いの言葉を改めて心から申し上げます。

2017年4月8日、バチカン市国
諸宗教対話評議会議長
ジャン=ルイ・トーラン枢機卿
同評議会次官
ミゲル・アンヘル・アユソ・ギクソット司教

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