2018年 カトリック教会から神道の皆さまへの新年のごあいさつ

教皇庁諸宗教対話評議会 「世代間の断絶という課題に直面している現代、 神道の皆さまとキリスト者がともに手をたずさえて」 親愛なる神道の皆さま、 1.教皇庁諸宗教対話評議会より、日本の皆さま、とりわけ神道の皆さまに新年のご […]

教皇庁諸宗教対話評議会
「世代間の断絶という課題に直面している現代、
神道の皆さまとキリスト者がともに手をたずさえて」

親愛なる神道の皆さま、

1.教皇庁諸宗教対話評議会より、日本の皆さま、とりわけ神道の皆さまに新年のごあいさつを申し上げます。新年のおめでたい日を迎え、初詣により、青年たちも含め、多くの人々が神社を参拝されることと思います。

2.ことしのごあいさつの中で、今日課題となっている、広がりゆく世代間の断絶について考えてみたいと思います。カトリック教会では、「青年、信仰と召命の識別」と題された世界会議を、2018年10月に開催しようとしています。この会議の準備文書は次のように述べています。「今日の若者世代は、その両親や教師たちの世代とは異質の世界に暮らしている。経済的社会的変化は、責任とチャンス双方の全域に影響を及ぼし、青年たちの深い望み、ニーズ、感情、人間関係の持ち方もまた変化している」(2項)。さらに次の点を強調しています。「こうした背景の中、古いアプローチはもはや有効には働かず、前の世代が経験してきたことは早々と時代遅れになるのである」(3項)。

3.明らかに、世代間の断絶が拡大しているのは世界中での出来事ですが、とくに日本のような発展した国では顕著です。このことは、比較的年長の人と若い人が、その経験、意見、習慣や行動の違いによって理解し合うことが難しいことから分かります。異なる世代間の目に見える分断はまた、あらゆる世代を悩ます共通の問題、つまり孤独の問題を増大させます。両親と子どもたちは、現代の生活様式が足早に過ぎるので、ほとんどともに過ごす時間をもてないでいます。さまざまな人々の中で、コミュニケーションや交流がますます不足することにより、以前は、文化的宗教的遺産を継承し、高齢者の知恵を未来世代に伝える手段であった世代間の結びつきが弱まっています。

4.親愛なる友人の皆さま、こうした世代間の断絶に橋を架けるという共通の関心と務めを、わたしたちは共有しています。経験からわたしたちは、遺産として経済的繁栄を次の世代に残すだけでは、幸福も、世界の正義や平和も保障されないことを知っています。わたしたちが保持しているものは、次の世代に伝えられるべき真の宝です。つまりそれは、わたしたちそれぞれの宗教がもつ信仰の霊的遺産です。現在世界の問題となっている平和への脅威は、新たな世代が直視することが求められるものですが、軍事衝突や敵対心によって解決することはできません。知恵によって、また対話、忍耐、寛大さの力によってしか解決できないのです。これこそが、わたしたちが次の世代に継承すべき霊的遺産です。

5.教皇フランシスコは、青年たちがその祖父母や高齢者と密接な関係をはぐくむよう勧めています。生きる知恵を有する高齢者の声に耳を傾けるよう励ましています。また、祖父母の人たち自身、青年たちの大志や望みを理解するために、彼らに耳を傾けるよう指摘しています(バチカン放送局、2016年12月19日のニュース参照)。このように、それぞれの世代は相互のかかわりを通じて、他の世代を養い支援していくことができるのです。

6.結局わたしたちは、本質的に関係性の中に生き、他者と意味あるかかわりを必要とする人間です。これまで見たように、かつてないほど広がった世代間の断絶に対する解決手段は、顔をつきあわせた交流の中で表現され、またデジタル機器を介しても表現される、愛と理解です。デジタル機器は、そうした背景で行われるなら、意味ある関係性のためのよい手段となりえます。

7.この新年のお祝いが、青年も、年長者もともに自分たちの宗教や伝統文化の価値を再発見し、世代間の距離に橋を架ける、幸いな機会となりますように。世界におけるキリスト者と神道の皆さまとの協力、努力により、年長者と青年たちがそれぞれの世代のたまものを真に理解し、社会を強固なものとすることができますように。この共通の望みをもって、あらためて皆さま、皆さまのご家族、皆さまを取り巻く社会の方々へ、心より新年のごあいさつを申し上げます。

神道の皆さま、明けましておめでとうございます。

教皇庁諸宗教対話評議会議長
ジャン・ルイ・トーラン枢機卿
同次官
ミゲル・アンヘル・アユソ・ギクソット神父

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