2018年灌仏会に際しての教皇庁諸宗教対話評議会から日本へのメッセージ

灌仏会に際しての教皇庁諸宗教対話評議会から日本へのメッセージ 「天然資源の危機に直面して―― 節制と分かち合いに基づく生活に向けて協力する仏教徒とキリスト者」 親愛なる日本の仏教徒の皆様 1.釈尊の生誕を記念する灌仏会( […]

灌仏会に際しての教皇庁諸宗教対話評議会から日本へのメッセージ
「天然資源の危機に直面して――
節制と分かち合いに基づく生活に向けて協力する仏教徒とキリスト者」


親愛なる日本の仏教徒の皆様

1.釈尊の生誕を記念する灌仏会(花祭り)が4月8日に祝われるにあたり、教皇庁諸宗教対話評議会は、友愛の精神をもって共通の価値観を分かち合い、日本の仏教徒の皆様に改めて喜びのご挨拶を申し上げます。この機会に、人類全体のために互いの結びつきを強め、向上させることについて少し考えたいと思います。

2.ご存じのように、現代社会は多くの正義と平和の問題に直面しています。その中には文化的、霊的な弊害として、世界中で見られる天然資源の涸渇と、それによる生態系の危機が含まれます。社会的な不正義と環境面の不協和は密接に結びついています。したがって、わたしたちが互いに支え合うためには「エコ正義」、すなわち人間と人間以外の生物からなる生態系全体の協和に向けて協力しなければなりません。

3.教皇フランシスコは回勅『ラウダ―ト・シ』の中で次のように力説しています。「真の意味での『エコロジカルな債務』が存在し、なかでも世界の南北間におけるそれは大きく、環境に影響する貿易の不均衡や、ある国々によって長期間行われてきた天然資源の過度の使用につながっています」(51)。「生物圏の最重要指定保護区域を擁する開発途上国は、自国の現在そして将来を犠牲にして、富裕国の発展にさまざまなしかたで寄与し続けています」(52)。開発途上国で現地に被害を及ぼしながら操業している多国籍企業について、回勅『ラウダ―ト・シ』は次のように述べています。「大抵の場合、彼らが操業を停止し撤退すると、あとには人間と環境とに甚大な被害――失業、集落の過疎化、天然資源の枯渇、森林破壊、地方の農業・畜産業・養殖業の衰退、露天掘り方式の炭鉱鉱掘跡、切り崩された丘陵、汚染された河川、そしてもはや持続不可能となった一握りの社会福祉事業――が残されます」(51)。

4.釈尊とイエス・キリストの霊的な洞察における二つの根本的な要素は、人間の生活における節制の必要性と、人間の財を分かち合うことの重要性です。理解し、考え、行い、話し、生活し、努力し、注意し、集中する中で節制し、物惜しみしないよう仏教は説いています。回勅『ラウダ―ト・シ』は指摘しています。「キリスト教の霊性は、節度ある成長とわずかなもので満たされることを提言しています。……それには、支配の力学と、また単なる快楽の蓄積とを避けることが求められます」(222)。

5.経済政策は人間ではなく利益を中心として、利己的に展開しています。また浪費とぜいたくにまみれたライフスタイルが、全世界の天然資源の枯渇の大きな要因となっています。宗教は、節制を重視する生活様式と、愛と共感のもとに分かち合う姿勢を促すことにより、このような困難な状況に立ち向かうために重要な役割を果たすべきです。

6.わたしたちの祝祭日や記念日が、このような崇高な価値観を追求し続ける機会となりますように。永続的な平和と真の人間社会を築くのは、経済的な利益などではなく、真の繁栄とすべての人の幸せを確保するために尽力しながら、分かち合いの精神のもとに物的財を使用しつつ発展することです。人々がこのことを認識するのを、わたしたちは共に助けることができます。

7.仏教信徒の皆様、こうした思いのうちに、改めて灌仏会のお祝いのことばを心から申し上げます。

2018年4月8日
諸宗教対話評議会議長
ジャン=ルイ・トーラン枢機卿
同評議会次官
ミゲル・アンヘル・アユソ・ギクソット司教

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