2019年カトリック教会から神道の皆さまへの新年のご挨拶

2019年カトリック教会から神道の皆さまへの新年のご挨拶 「倫理観をともにはぐくむキリスト教と神道の信者」 親愛なる神道の皆さま 1. 日本のすべての人々、とりわけ神道の皆さまにとって大切な祝日である新年に際し、教皇庁諸 […]

2019年カトリック教会から神道の皆さまへの新年のご挨拶
「倫理観をともにはぐくむキリスト教と神道の信者」

親愛なる神道の皆さま

1. 日本のすべての人々、とりわけ神道の皆さまにとって大切な祝日である新年に際し、教皇庁諸宗教対話評議会は心からご挨拶申し上げます。この喜ばしい機会に、わたしたちは自らの伝統に再び目を向け、皆さまとすべての日本の人々に親愛の意を表します。明けましておめでとうございます。

2. 今年は、それぞれの倫理観を信者に伝えるという課題についてともに考えたいと望みつつ、挨拶のことばを述べさせていただきます。倫理観の現代社会への影響力は、次第に弱まっているように思われます。人々の生活の中心から宗教の存在が薄れることにより、倫理観と社会交流に関する共通理解が失われることは明らかです。倫理的な発展と宗教的な姿勢が互いに手を携えれば、社会的、宗教的な責務への貢献につながると、わたしたちはともに考えています。

3. ご存じのように、新年には大勢の参拝者が神社を訪れます。こうした宗教的、文化的な行事が何十万もの信者を引き寄せることは、人々が霊性を求めていることの表れです。わたしたちは今、これらの重要で意義深い宗教上の祭日が、参加者の中に倫理観を生み出し、はぐくむためにどれほど役立っているかという複雑な問いを突き付けられています。実際、「宗教」は人々の生活にどれほど影響を与えているでしょうか。倫理観から離れつつある世界の中で、宗教は、責任感のある誠実な市民を育てるためにどれほど貢献し、社会への無私無欲な奉仕をどれほど促すことができるでしょうか。人間の尊厳、人権、生態系などの世界規模の重要な問題に対して、かけがえのない強固な信念をはぐくむために、宗教はどのように貢献できるでしょうか。

4. わたしたちは皆、宗教を正しいかたちで実践し、遵守することにより人の人格は完成に近づくことができると考えています。真の宗教生活は、誠実で正しく親切で、愛と敬意にあふれる人をはぐくむために大いに役立ちます。伝統に従って儀式を行うだけでは、もちろん十分ではありません。古来の儀式には多くの場合、豊かな意味と素晴らしい霊的な美が含まれていますが、その倫理的な意味にも触れるべきです。聖書の中のこの神のことばは、そのことに気づかせてくれます。「この民は、口でわたしに近づき、唇でわたしを敬うが、心はわたしから遠く離れている」(イザヤ29・13)。教皇フランシスコは次のように述べています。「実際、虚栄心や強欲に染まり、傲慢である一方で、自分が信心深いと思い込み、そう見せかけ、他者を非難さえする人こそが偽善者です」(「『お告げの祈り』でのことば」2018年9月2日)。

5. 神道の皆さま、新年の初めにあたり、さまざまな宗教上の祭日や行事を祝うために訪れる信者と、わたしたちが信仰者として、ともにかかわりをもてるよう望みます。そうすれば、その祭日に象徴される教えが、いかに日常生活の一部となっているかを、ともに伝えることができるでしょう。そのためにも、わたしたちが自分の信仰を生活の中であかししていることを強調し、よりよい世界への希望の真の基盤をそれぞれの信者に伝えましょう。

6. そして、正しい倫理観をもって宗教を通して人々を養成し、世界に善を広めるために貢献するという宗教指導者の務めを果たしながら、新年を喜びのうちに祝いましょう。こうした共通の願いとともに、皆さまと皆さまの家族と共同体に、あらためて心からご挨拶申し上げます。

お正月おめでとうございます。

教皇庁諸宗教対話評議会次官
ミゲル・アンヘル・アユソ・ギクソット司教

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