2024(令和6)年神道の皆さまへの新年のごあいさつ

「人類とわたしたちの共通の家の近未来について、深い懸念を分かち合いながら」 2024(令和6)年神道の皆さまへの新年のごあいさつ 親愛なる神道の皆さま  新年を迎えるにあたり、多くの日本の皆さまが神仏によるご加護を求めて […]

「人類とわたしたちの共通の家の近未来について、深い懸念を分かち合いながら」
2024(令和6)年神道の皆さまへの新年のごあいさつ

親愛なる神道の皆さま

 新年を迎えるにあたり、多くの日本の皆さまが神仏によるご加護を求めて神社にお参りされるこの時期に、心よりのごあいさつを申し上げます。この機会にわたしたちは、皆さまとともに世界の平和を祈りつつ、人類と共通の家の差し迫った将来について、深い懸念を分かち合いたいと思います。

 8年前、わたしたちは、地球の生態系の急速な悪化がもたらす差し迫った脅威について、皆さまとともに考えるよう呼びかけました。
そして今、去る10月4日付で「善意のすべての人」に宛てられた、教皇フランシスコ使徒的勧告『ラウダーテ・デウム』を受け、あらためて地球と人間のいのちに取り返しのつかない害をもたらすかもしれない人間行動のうち、危険で破滅的な流れを止めるため、具体的な活動が差し迫って必要であることを検討するよう、すべての人に促します。

 生態系の危機に加え、わたしたちは世界の多くの地域において、紛争と暴力の再燃を目の当たりにしており、それは、平和と正義を、武器と戦闘によって追い求めるという愚かな行動と結びついています。日本の歴史は悲惨な戦争経験と同時に、平和と非暴力への取り組みを通じてその傷をいやそうとする決意もまた反映しています。
皆さんの経験が示すように、戦争で引き裂かれた国々の人々が負ったトラウマを見れば、人類が戦争と暴力という世界モデルから、公正な平和と非暴力に根ざし、愛に満ちた社会をはぐくむという世界モデルへと、根本的に転換することが急務であることは明らかです。

 こうした危機的な動きに立ち向かうにあたり、わたしたちの行動の指針となるべき精神的動機について、あらためて考えてみたいと思います。神道には、自然の神聖な起源を尊重し、人間同士、人間と被造界との調和をはぐくむ、崇高な伝統があります。キリスト教の伝統も同様に、神による自然の創造を強調し、たとえ敵であっても互いに愛し合うようにという至高のおきてを説いています。「互いへのケアと地球へのケアは密接に結びついています」(『ラウダーテ・デウム』3項)。

 貧しい人、身寄りのない人、立場の弱い人に偏って悪影響が及ぼされ、将来世代の展望が危うくされる、差し迫った脅威から地球を守るために、わたしたちは宗教上の信念を分かち合うことで一つになるべきです。これらの問題に取り組み、これらの課題に立ち向かうために、法律、政治、技術の進歩、さらに利用可能なあらゆる人的資源を駆使して、ともに勇気ある一歩を踏み出すべきです。教皇フランシスコが思い起こさせているように、「真の信仰は、人間の心に力を与えるだけでなく、人生を変容させ、わたしたちの目標を変貌させ、他者との関係性や被造界全体との関係性に光を当てるのです」(同、61項)。

 個人間、および国家間の平和と正義のために尽力し続ける一方、世界の諸民族すべてが「家」と呼ぶ共通の空間を守るために働くことができますように。

 この祈りを胸に、あらためて、心よりの新年のご挨拶を申し上げます。新年、おめでとうございます。

教皇庁諸宗教対話省長官
ミゲル・アンヘル・アユソ・ギクソット枢機卿
同次官
インドゥニル・ジャナカラトネ・コディトゥワック・カンカナマラゲ神父

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