宣教するシノドス的教会となるには−−第2会期に向けて神学的に深められるべき五つの視点

PDFダウンロード(451KB) シノドス事務局 宣教するシノドス的教会になるには シノドス第16回通常総会 第2会期に向けて神学的に深めるべき五つの視点 序文  「教会は宣教を有している、というよりもむしろ、教会は宣教 […]

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シノドス事務局

宣教するシノドス的教会になるには

シノドス第16回通常総会
第2会期に向けて神学的に深めるべき五つの視点


序文

 「教会は宣教を有している、というよりもむしろ、教会は宣教『である』と断言します。『父がわたしをお遣わしになったように、わたしもあなたがたを遣わす』(ヨハネ20・21)。教会はおん父が遣わしたキリストから、自らの宣教を受け取ります。聖霊に支えられ、導かれる教会は、福音を知らない人々、受け入れない人々に福音を告げ知らせ、あかしします。人々はこれを、イエスの宣教に根ざした、貧しい人の優先的選択をもって行います。このようにして、教会は神の国の到来にともに働き、教会はその『種』なのです(『教会憲章』5項参照)」(世界代表司教会議第16回通常総会『第1会期「まとめ」報告書』8a項)。シノドス的教会として成長することは、この召命と使命に、一人ひとりが、そしてすべての人がともに応えるための具体的な方法なのです。

 シノドスの集いに参加したわたしたちの兄弟姉妹、とりわけ第1会期に参加した兄弟姉妹は、教会の一致と多様性を実際に体験しました。不平等が拡大し、対立が激化し、紛争が絶え間なく爆発しているわたしたちの時代にあっても、教会は、キリストにあって、神との一致と人々の間の一致のしるしであり、道具であり、また、これまで以上に目に見える形で、そうあるよう求められているのです。聖霊に耳を傾け、聖書のあかしを受け入れ、信仰をもって時のしるしを読むことによって、教会は、キリストの神秘の尽きることのない豊かさの表現として、違いを調和させることができるのです。このように、多様性における一致の実践としてのシノドスの体験は、平和と一致が可能であることを信じようともがく世界に向けられた、預言者的なことばを表しています。

1.指針となる質問

 シノドスの歩みは、わたしたちの使命をますます認識させるものでした。第1会期では、この自覚が徐々に「受肉」し、第2会期(2024年10月)に向けての道しるべとなりました。文書『2024年10月に向けて』(2023年12月11日)は、第1会期と第2会期の間に、わたしたちは次の問いに導かれながら、再び意見聴取のときを迎えると説明しています。つまり、わたしたちはどのようにして宣教するシノドス教会となることができるでしょうか。

この新たな考察の目的は、復活した主とその福音を現代世界にのべ伝えるという一つの使命の中で、洗礼を受けた一人ひとりと各教会の独自の貢献を発展するために、わたしたちがそれぞれの状況や文脈の中でたどることのできる道筋と、採用することのできる手段を明らかにすることです。したがって、これは、教会組織をより効率的なものにするための技術的、あるいは手続き的な改善計画に限定するような要請ではなく、むしろ、わたしたちが呼ばれている宣教への専心の具体的な形、すなわち、シノドス的教会にふさわしい、一致と多様性の間のダイナミズムを表現するものについて考察するようにとの呼びかけです(『2024年10月に向けて』1項)。

 したがって、イエス・キリストを世界にのべ伝えるという一つの使命に、多様な召命、カリスマ、奉仕職をもつすべての人が参加するというテーマが焦点となります。使徒的勧告『福音の喜び』にある、「新しい福音宣教は、洗礼を受けた一人ひとりが新たな主人公であることを意味しなければなりません」(120項)という教会の宣教的変革に照らして、わたしたちは、神の民一人ひとりの具体的なたまものを認め、促進することから生まれる宣教への貢献と、共通の働きと権威ある司教の奉仕職との関係について考えます。交わりと宣教の地平における、「全員」の参加と、「幾人か」の権威との間のダイナミックな結びつきは、その神学的意味において、またそれを動かす実践的方法において、そして教会法上の構造の現実において、深められるでしょう。この探求は、地方教会、教会諸グループ(全国、地域、大陸)、ローマの司教の首位権、司教の団体性、教会のシノダリティの関係における全教会の、それぞれ異なるものの、相互に依存する三つのレベルで明確にされます。この三つのレベルを識別することは、第2会期を視野に入れた働きを組織することを可能にしますが、それは、宣教するシノドス的教会の生活という、一元的で有機的な現実を見るための三つのつながった視点であることを忘れてはなりません。

2.第2会期のための文書作成に向けたステップ

 『2024年10月に向けて』文書で説明されているように、この指針となる問いに基づいて、シノドスの歩みの第1フェーズとは性格を異にする新たな意見聴取のプロセスが開始され、司教協議会と東方教会の位階的組織がこのプロセスのこの部分の参照点となり、教区と東方教会教区からの意見の収集を調整し、その方法と時期を定めるよう要請されました。司教協議会、東方教会の位階的組織、およびどの司教協議会にも属さない教区によるこの意見聴取の成果を集めた「まとめ」は、2024年5月15日までにシノドス事務局に送付され、次会期の『討議要綱』起草の基礎となるものです。

 国際会議「シノドスのための小教区司祭」(サクロファノ[ローマ]、2024年4月28日~5月2日)の結果を皮切りに、他の資料もまとめに加えられる予定です。この国際会議は、第1フェーズ、および第1会期中に繰り返し表明された、地方教会で司牧に携わる司祭の体験を聞き、その体験を高め、シノドスの歩みへの司祭の参画を深めるという必要に応えるために招集されたものです。

 最後に、シノドス事務局が始動した五つの作業部会によって行われた神学的研究の結果も、総会から数回にわたって要請されたことを受けて、また使徒憲章『エピスコパリス・コムニオ』10項が予見する精神に基づいて、『討議要綱』の資料に含まれることになります。これらの部会は、出身地、性別、教会的立場など、必要な多様性を尊重した専門家で構成され、シノドス的方法で働きます。とりわけ、3部会は主に上記の三つのレベルに焦点を当て(各レベルに一つの部会)、他の2部会は、次の段落に要約された概要に従って、レベル間の相互接続と相互依存を強調しながら、二つの横断的な軸に取り組みます。

3.探求すべき視点

Ⅰ.地方教会が示す、宣教するシノドス的姿
 第1会期の終わりに承認された「まとめ」報告書は、宣教におけるすべての人の共同責任は、「キリスト教共同体、そして、そのすべての奉仕、すべての機関、各司牧団体を含む地方教会全体の構造の基礎となる基準でなければなりません」(「まとめ」18b項)と認めています。福音をあかしする任務は、共通する洗礼の尊厳によって、所属する諸教派を超えて、すべての受洗者を一つにするものであることを忘れないでください。地方教会レベルで、宣教するシノドス的教会の視点を担うこの作業部会は、次のような点を研究します。

  1. )教区司教にゆだねられた教会の「一致の目に見える根源であり、基礎」(『教会憲章』23項)としての教区司教の奉仕職の意義と形状、とくに宣教的視点における、司祭、参加諸団体、奉献生活、教会の諸集団との関係性について(「まとめ」12項参照)。

  2. )教区司教と、地方教会で奉仕職を担う人々(叙階されているか否かにかかわらず)の働きを定期的に検証する仕組みとプロセスを導入し、さまざまな方法で、すべての人々による説明責任(責任を果たすこと)を促進すること(「まとめ」12j項参照)。

  3. )参加型組織のスタイルと運営方法について。とくに、「意思決定に向け論じ合う(decision-making)」過程における意見聴取の場と熟議の場との関係に注意を払い(「まとめ」18g項参照)、まだそうでない場合には、女性も「意思決定に向け論じ合う(decision-making)」過程に参加し、司牧的ケアと奉仕職における責任ある役割を担うことができるようにすること(「まとめ」9m項参照)。

  4. )制度化された奉仕職と「事実上の」奉仕職の存在と内容について。それらは、地域と文化間における地方教会の福音化の活動を、より調和のとれた、効果的な仕方で展開し、教会の宣教を遂行するカリスマと信徒の役割を高めることに貢献することができます(「まとめ」8d−e項参照)。それは、それら奉仕職の特殊性を尊重しながら(「まとめ」8f項参照)、また、この世の現実の聖化という使命と教会内の任務や奉仕職の実行との間の緊張関係(「まとめ」8j項参照)と関連しながら行われるもので、さらに、新たな奉仕職を確立する機会をも検討しています(「まとめ」8n項、16p項参照)。

    「女性の積極的貢献が認識、評価され、その司牧上のリーダーシップが教会の生活と宣教のあらゆる領域で増大するように」、とくに注意が払われるべきです。「すべての人のカリスマをよりよく表現し、司牧上の必要によりよく応えるために、教会はどのようにすれば既存の役割や奉仕職に、より多くの女性を加えることができるでしょうか。新たな奉仕職が必要な場合、だれが、どのようなレベルで、どのような方法で、それらを識別すべきでしょうか」(「まとめ」9i項)。



Ⅱ.さまざまな教会グループが示す、宣教するシノドス的姿
 2015年、教皇フランシスコは、世界代表司教会議設立50周年記念式典における演説の中で、「(シノダリティの)第2のレベルは『教会管区』『教会地方区』『部分教会会議』であり、またとくに『司教協議会』です」と断言し、部分教会のグループ化に関する『新教会法典』第495−514条に言及しました。そして、「わたしたちはこれらの組織を通して、『団体性』の中間形態をさらに実現化していくことを考え」る必要性と緊急性を強調しました。「そのために、古代の教会の組織の一部を現代化し、統合することも考えられます。こうした組織が、司教団の『団体性』の精神の促進に貢献することができるようにという、第二バチカン公会議の願いは、いまだに十分に実現されていません。わたしたちはまだ道半ばであり、途上にあるのです」。このように、使徒的勧告『福音の喜び』(16項)ですでに表明され、のちに使徒憲章『プレディカテ・エバンジェリウム』(Ⅱ, 2)で取り上げられた「健全な『脱中央集権』」の方向性を指し示しています。この作業部会は、諸教会グループのレベルでの宣教に関するシノドス的教会の視点を担うものであり、以下のような点を研究します。

  1. )「霊的な富、使徒的働き手、物質的援助」(『教会憲章』13項)を分かち合う、教会間のたまものの効果的な交換を可能にする方法と条件について(「まとめ」4m項参照)、

  2. )宣教するシノドス的教会における司教協議会の規約について。それは、すべてのシノドス的教会における団体性の行使の主体として、また、自らの教義的、弟子としての権威を増大させることによって、司教協議会が成長できるようにするものであり、その際、各司教が所属する教会にふさわしい権能も、全教会の目に見える原理であり一致の基盤であるローマの司教の権能も制限されることはありません(「まとめ」19項参照)。

  3. )教会間の交わりの構造を司教協議会のレベルを超えて拡大する機会について。その際、宣教の観点から、文化や社会との実りある対話の必要を考慮に入れながら、大陸または亜大陸地域の地方教会をグループ化する組織の地位をどのように規定するかを検討することになります(「まとめ」19項参照)。



Ⅲ.普遍教会が示す、宣教するシノドス的姿
 現在進行中のシノドスの歩みは、ペトロの奉仕職を行使する新しい方法をもたらしています。したがって、普遍教会のレベルでは、教会的なシノダリティと司教の団体性、そしてローマの司教の首位権との関係という問題が浮上しつつあります(「まとめ」13a項参照)。この視点を取り上げる作業部会は、次のような点を研究します。

  1. )司教の団体性と、教会のシノダリティとの本質的な結びつきを明らかにしつつ、東方諸教会がペトロの首位権の教義を深めるために提供できる貢献について(「まとめ」6d項参照)。

  2. )「首位権、団体性、シノダリティや、それらの相互関係に関するカトリックの理解」(「まとめ」13b項)に対するエキュメニカルな歩みの貢献について。

  3. )シノドス的教会における、ローマの司教の全世界のための奉仕職に仕える組織としての、教皇庁の役割について。そこでは、教皇庁と各地方教会、教皇庁と各国司教協議会、教皇庁と世界代表司教会議との関係性を、使徒憲章『プレディカテ・エバンジェリウム』の精神に照らしながら検討します(「まとめ」13c−d項参照)。

  4. )第二バチカン公会議の教義と公会議後の神学的・教会法的発展を考慮に入れた、シノドス的教会における司教の団体性を行使する方法について。

  5. )世界代表司教会議の特別なアイデンティティ、とりわけ司教の特別な役割と、シノドスの歩みのすべての段階への、神の民の参加を明確化すること(「まとめ」20項参照)。



Ⅳ.シノドス的方法
 自らの霊のうちに現存するキリストを迎え入れるよう心を開くために、わたしたちは、個人と共同体の回心の準備として、聖書の黙想、祈り、そして互いに耳を傾け合うよう招かれています。とくに、互いに耳を傾けることは、教会生活のあらゆるレベルにおいて、「霊的、組織的、手続き的、典礼的」という四つの次元を明確にするための実践を絶えず行うことを必要とします。

 これまでの旅を通して、とりわけ第1会期の歩みにおいて、「霊における会話」の実践は試され、わたしたちが歩んでいる旅の「霊的次元」を支え、表現することができると認識されてきました。「霊における会話」の実践は、定式化された技法に従うことを意味するのではなく、会話に基づく(colloquial)教会の本性自体を表現する道に着手することを意味しています。その本性とは、神自身が自らのいのちを伝え、「友に対するように人々に語りかけ、彼らと話を交わす」(『神の啓示に関する教義憲章』2項)対話から生まれるのです。

 同時に、シノドス的方法では、教会の生活と使命が表現される団体や活動にふさわしい「組織的な次元」と、「意思決定に向け論じ合うこと(dicision-making)」と「最終的に決定を下すこと(dicision-taking)」との関係にとくに注意を払う「手続き的な次元」に配慮することが求められます。

 これら三つの次元は別個のものとして考えるべきでありません。それぞれ異なる側面であり、それぞれが特別な注意を必要とし、ダイナミックな一致の中で考え、生きるべきものです。最後に、典礼は教会生活の鏡であると同時に糧でもあるので、この活動は典礼の次元にも関わるものです。「もし、エウカリスチアがシノダリティを形づくるのであれば、まず最初にすべきは、キリストのうちに真の友情を感じながら、そのたまものにふさわしい仕方でミサを祝うことです」(「まとめ」3k項)。

 シノドス的方法の横断的な視点に立つ作業部会は、以下のような点を研究します。

  1. )教会のシノドス的生活である典礼と秘跡に根ざしたもの(みことばに耳を傾け、エウカリスチアを祝う)と、教会的な識別の実践との間の実りある関係について。

  2. )複数存在する教会の霊性や異なる文化的文脈の経験から分かっている多様な傾きを考慮に入れながら、「霊における会話」の構成をより明確にすること(「まとめ」2i−j項参照)。

  3. )一方で、「神学的思考や人間科学・社会科学の貢献をどのように統合できるかを明らかにする」(「まとめ」2h項)ように、他方、「ささまざまな分野の専門家が、その個人的霊性とともに自らの専門知識をもち寄り、彼らが提供するものが真に教会の奉仕となる」(「まとめ」15i項)ようにという、シノドス第1会期が定式化した呼びかけについて。

  4. )わたしたちが生きる「時代の変化」という視点の中で、神の民の「信仰の感覚(sensus fidei)」と司教の教導職との間の円環的な関係を、黙示録に従い、時のしるしに耳を傾けながら明らかにし、神学的・学問的識別の基準に焦点を当てること。

  5. )教会論的な観点から、「意思決定に向け論じ合うこと(dicision-making)」と「最終的に決定を下すこと(dicision-taking)」を明確化し、全員の参加と幾人かによる具体的な権限行使の関係を明らかにし、異なる教会的主体の権限領域(教義的、司牧的、文化的)を特定し、シノダリティの実践が表現される、さまざまな組織や活動を特定すること。

  6. )それぞれの役割、カリスマ、奉仕職の固有性を尊重、促進しながら、すべての人に共通する参加を体験し、あかしすることを可能にする、シノドス的教会にふさわしい祭儀の形態を促進すること。



Ⅴ.宣教におけるシノドス的教会の「場」
 現在のシノドスの歩みは、地方教会と普遍教会との間の「相互内面性(mutual interiority)」の原則に言及することが、異なるレベル(地方、地域、普遍)におけるシノダリティ、団体性、首位権の交響的な行使にいかに有利であるかを明確に示しています。教会が交わり、参加し、宣教を生きるように召されている「場」は、多くの「場」によって構成されています。これは事実であるだけでなく、「神は、そのいつくしみと知恵をもってご自身を啓示し(人格的に現され)、ご自分のみ心の神秘を知らせることをよしとされた」(『神の啓示に関する教義憲章』2項)方法に対応しています。仲介者であり、啓示全体の十全なるものであるイエス・キリストとの関係は、つねに文脈に即したものです。この意味での「場」は、信じる体験を生み出すものです。それはまた、「伝えられた事物やことばの理解が深ま」(同、8項)り、救いの真理の告げ知らせがつねに新しい表現を見出す、解釈学的な空間でもあるのです。

 わたしたちは、人と共同体との関係の空間的次元が大きく変化している時代に生きています。人間の移動性、異なる文化や宗教的体験が同じ文脈に存在すること、そしてデジタル環境(インフォスフィア)の普及は、見極めるべき「時のしるし」と考えることができます。
 起こりつつある変化と、神の民の多様な姿への認識によって、互いの、またローマの司教との交わりのうちに、神の教会、一、聖、公、使徒継承の教会を構成している諸地方教会間の関係にあらためて注意を払うよう呼びかけられています。暴力と分断が顕著な世界において、社会正義、平和、和解、共通の家のケアに向けた協調的かつ友愛的な連帯の中で、人類の一致、その共通の起源、共通の運命をあかしすることは、このように、その地、その住民、その文化への言及を理解するいくつかの誤った方法がもつ分裂の可能性を克服することとなり、それはますます緊急性を帯びているように見えます。

 地方、地域、普遍という三つの異なるレベルの教会関係を横断するこの視点をもつ作業部会は、以下のような点を研究します。

  1. )神の民の文化的次元に配慮した教会論の発展について(教皇フランシスコが『福音の喜び』115項で、「恵みは文化を想定し、神からのたまものはそれを受け取る人の文化の中に根を下ろします」と述べていることを参照)。実際、「地域的なもの」が分裂の理由となることなく、また「普遍的なもの」が覇権主義の一形態となることなく、地域の解釈学に空間を与えながら、文化の福音化と信仰のインカルチュレーションの間の相互性のダイナミズムを、組織レベルでも理解する必要があるように思われます。

  2. )福音告知のダイナミズムにおける「場」へ言及することについて。これは「啓示されたことばをこのように適応させて告げ知らせることは、あらゆる福音宣教の原則でなければならない」という原理との関連性のうちにあります。「こうして初めて、すべての国においてキリストのメッセージをその国に合った方法で表現する能力が養われ、同時に、教会と諸民族の種々の文化との交流が促進される」(『現代世界憲章』44項)のです。

  3. )主要な道徳的・司牧的課題に取り組む際の、「場」の特殊性と、(さまざまなレベルにおける)教会的交わりの要件に言及することについて。

  4. )「各地方教会が、異文化共同体として再構築され」る移住現象の影響について。「難民や移住者は、その多くがルーツを奪われた傷や、戦争や暴力の傷を負っていますが、彼らを受け入れる共同体にとっては、刷新され豊かにされるための源泉となり、地理的に離れた教会と直接つながる機会となることが多くあります」(「まとめ」5d項)。

  5. )デジタル環境と新技術の文化が「地域」の概念に与える影響について。たとえば、オンラインで行われる、教会を含むすべての関係や取り組みは、「伝統的に理解されてきた地域の境界を越えて広がる空間と広がりをもっています」(「まとめ」17h項)。

  6. )東方諸教会の信者がラテン教会の信者が多数を占める地域へ大幅に移住することによってもたらされる、教会法上および司牧上の課題について。そのためには、「ラテン典礼の地方教会が、シノダリティの名のもとに、移住してきた東方諸教会の信者が同化の過程を経ずに、自らのアイデンティティを保ち、固有の遺産を育てられるように援助する必要があります」(「まとめ」6c項)。


4.いくつかの横断的な参照点

 ここで示した観点を深めるには、それぞれに適用されるいくつかの原則を参照することが有益です。

 「第一の原理は、教会の原動力であり存在意義である福音化の使命です」。教会の姿とシノドス的な活力を促進することは、すべての識別の究極的な基準である教会の使命を信頼できる形で効果的に現し、支持することを目的としています。福音を告げ知らせるという点でもっとも効果的なことを優先し、有用でないもの、あるいは障害となるものを捨てる勇気を見出さなければなりません。シノドスの歩みが、教会が鏡を見て自分たちのバランスを心配するような運動ではなく、世界と人類全体に向かって投影され、神の民の各メンバーが自分自身のかけがえのない貢献をするよう求められることを保証するのは、この宣教への推進力なのです。「血のエキュメニズム」(「まとめ」7d項参照)は、いのちを捧げるまでに福音をあかしするのは、教派の所属の区別なく、洗礼を受けたすべての人であることを、力強い方法で思い起こさせてくれます。したがって、キリスト教一致へと向かう道のベクトルを構成するのは、具体的な協力の形から出発する共通の使命であり、わたしたちはそれを推進し、体験し続けなければなりません。

 宣教への意欲が教会を構成するものであり、教会の歴史のあらゆる瞬間を特徴づけるものであるならば、宣教の課題は時代とともに変化します。それゆえ、今日の世界の課題を識別する努力をしなければなりません。もしわたしたちがそれを識別し、対応できなければ、わたしたちの宣教は関連性と魅力を失ってしまうでしょう。このニーズに根ざしているのが、若者やデジタル文化への注目であり、貧しい人や社会から疎外された人をシノドスの歩みに参加させるニーズです。教会組織のいかなる変更も、今日の世界における宣教の課題に効果的に対応できるように設計されなければなりません。

 「第二の原理は、洗礼を受けたすべての人が、司教団による権威の奉仕職の実践と相まって、『信仰の感覚(sensus fidei)』とそれぞれのカリスマを積極的に発揮する中、すべての洗礼を受けた人のたまものであり責任である宣教への参加を促進することです」。

「すべての信者が授けられている『信仰の感覚(sensus fidei)』の『循環性』、シノダリティが機能するさまざまなレベルで実施される識別、そして一致と統治の司牧的奉仕職を実践する人々の権威は、シノダリティの原動力を表しています。この循環性は、すべての人の洗礼による尊厳と共同責任を促進し、神の民のうちに存在する、聖霊によって与えられたカリスマを最大限に生かし、ローマの司教との団体性的・位階的交わりのうちにある司教の特定の奉仕職を認め、教会の宣教刷新のため、シノドスの歩みと活動が、『信仰の遺産(depositum fidei)』に適合して、聖霊に聞き従うように展開することを保証するのです」(教皇庁教理省国際神学委員会『教会の生活と宣教におけるシノダリティ』72項)。

 したがって、シノドス的次元と位階的次元は競合するものではありません。両者を結びつける緊張関係は、ダイナミズムの重要な源泉です。とりわけ意思決定プロセスは、この緊張関係を創造的に処理する場であり、その結果、それぞれが特定の責任を奪われることなく行使することが許されるのです。

 「第三の原理は、中間レベルの多元性と一貫性を考慮しつつ、『地方』と『普遍』を明確化することです」。一、聖、公、使徒継承の教会は、互いとの、またローマの教会との交わりのうちに、各地方教会のうちに存在し、そして各地方教会から成り立っています(『教会憲章』23項参照)。各教会は、キリストのうちに、聖霊を通して主体となる共同体であり、それはみことばによって呼び起こされ、秘跡によって啓発され、その中で、神のたまものが受肉される特定の文化的・社会的文脈の中で、神の民が生き、歩むのです。同時に、各教会は、自らの豊かなたまものを他のすべての人々と分かち合うよう求められています。このことは、教会全体の奉仕のために、他の司教との団体性的な交わりのうちに、すべての人がシノドス的に参加するその宣教において、一致の原理であり保証者である司教の奉仕職を通して達成されるものです(国際神学委員会『教会の生活と宣教におけるシノダリティ』61項参照)。それゆえ、シノダリティは、司教の団体性を理解し、促進するための適切な教会的文脈を構成し、各教会と諸教会の交わりにおいて進むべき道を識別する際に、一致と普遍(カトリック)性を促進するためにたどるべき道を示しています。わたしたちが求めているのは、多様性の中の一致を生きるという今日の世界にふさわしい方法であり、違いや特殊性をつぶすことなく、互いの結びつきを体験することです。

 「第四の原理は」、もっとも急進的で要求度の高いものでありながら、同時に希望と次世代育成能力(generativity)を与えることができるもので、「シノドスの歩みがもつ絶妙に霊的な特徴です」。父なる神によって、イエス・キリストによって、聖霊の力によって集められ、信仰の姉妹と兄弟が出会い、互いに耳を傾けるのです。こうして出会い、耳を傾けることはそれ自体が目的なのではなく、聖霊の声を識別し、その呼びかけを受け入れることがともに可能となる空間を開くものです。主がわたしたちに何を求めているかを理解し、それを実行する準備をすることです。弟子たちの任務、実際、まさに彼らのアイデンティティとは、師が行くと決めたところならどこへでもついて行き、本来、師のものである救いの使命に協力することなのです。

5.2024年10月に向けてともに歩む

 世界代表司教会議第16回通常総会第2会期の準備が進む中、ここで策定された方向性のおかげで、第1会期の「まとめ」報告書から特定された他の二つの指針についても作業が続けられています。

 第1の指針は、より多くの人々がシノドスのダイナミズムを直接体験できるよう、地方教会においてシノドスのダイナミズムを生かし続けることです。わたしたちは、すべての教区に対して、自分たちの状況にとってもっとも重要な要請を特定するために、「まとめ」報告書を読み直し、それに基づいて、「神の民全体を巻き込むためのもっとも適切な取り組み」(『2024年10月に向けて』2項)を活性化するよう、繰り返し呼びかけます。

 第2の指針は、「全教会レベルで、ローマ教皇庁の諸省と協力しながら検討される必要がある」(同、序文)非常に重要な一連の課題を、シノドス的な方法で深めることにあります。本文書と同時に配布された、『シノドス第16回通常総会第1会期で提起され、教皇庁各省と協力して検討されるべき諸課題に関する研究部会』という文書でより明確に規定されているように、特定されたテーマの詳細な研究を行うために研究部会が設置されています。さらに、シノドス事務局は、より広い意味でのシノドスの歩みのために、教会のシノダリティの神学的、教会法的、司牧的、霊的、コミュニケーション的な側面を深めるための「常設フォーラム」を活性化させ、また、「まとめ」が考案した適切なフォーラムにおいて、「シノダリティの概念と実践に関する用語的・概念的理解を神学的に深めること」(「まとめ」1p項)という要請に応えていきます。この任務を遂行するにあたっては、国際神学委員会と法制省とが合意して、シノドスへの奉仕のために設立された教会法に関する委員会の支援を受けます。

 活性化された多くの部会の作業によってカバーされる主題の間に明確な境界線を引くことは不可能です。多くのつながり、接点、さらには異なるレベルと異なる軸に沿って重複しています。シノドス事務局の任務の一つは、作業が調整された形で進められるようにし、2024年10月の総会に適切な情報を提供できるよう、さまざまな分野で徐々に達成される結果に耳を傾けることとなります。

バチカン、2024年3月14日

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