シノドス第16回通常総会第1会期中に提起され、教皇庁各省と協力し検討されるべき諸課題に関する研究部会

PDFダウンロード(536KB) シノドス事務局 シノドス第16回通常総会第1会期で提起され 教皇庁各省と協力し検討されるべき諸課題に関する研究部会 作業概要 1.シノドス第16回通常総会第1会期(2023年10月)は、 […]

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シノドス事務局
シノドス第16回通常総会第1会期で提起され
教皇庁各省と協力し検討されるべき諸課題に関する研究部会

作業概要

1.シノドス第16回通常総会第1会期(2023年10月)は、シノドス2021-2024の意見聴取と耳を傾けるフェーズで神の民から出された問いに取り組みました。第1会期の目的は、「シノドス的な教会として成長するために」、聖霊が「踏むようにわたしたちを招いている」1各段階に焦点を当て続けることでした。第1会期の成果は、20の要点にグループ分けされた「まとめ」報告書に集約されています。「まとめ」報告書各項は、これらの要点の一つに当てられ、「意見の合致点」「検討課題」「提案」に焦点を当てています。

2.第1会期の成果としては、教会の生活と宣教に関するさまざまな関連する課題がシノドス的な観点から浮上し、それに関して総会は一貫して、ほぼつねに90%以上の同意に達したことが挙げられます。これらの課題は、適切な時間枠の中で、「全教会レベルで、ローマ教皇庁の諸省と協力しながら検討される必要があります」2。さらに、それらは2021-2024年のシノドスの歩みとの二重の関係を維持しています。一方では、それらはシノドス的教会の形とスタイルに影響を与えるものであり、他方では、その詳細な研究は、すべての大陸からの専門家を巻き込みながら、真にシノドス的な方法で行われる必要があります。重要なのは諸課題だけでなく、聖霊の声に耳を傾けながら、どのように内省するかです。聖霊こそ、調和と交わりの真の支配者であり、わたしたちの予測や期待を打ち砕き、新しいものを創造してくれる方なのです。

3.2024年2月22日にシノドス事務局長に送られた書簡の中で、教皇はこれらの課題を10の要点にまとめ、特別に構成された研究部会によって「その性質上、詳細な研究が必要」な課題として示しました。以下、これらの要点を再掲します。

  1. 東方諸教会とラテン教会の関係性の諸相(「まとめ」6項)。
  2. 貧しい人の叫びに耳を傾ける(「まとめ」4, 16項)。
  3. デジタル環境における宣教(「まとめ」17項)。
  4. 宣教するシノドス的観点からの、『司祭養成基本綱要』改訂(「まとめ」11項)。
  5. 特定の奉仕職の形態に関する神学的・教会法的事象(「まとめ」8, 9項)。
  6. 宣教するシノドス的観点からの、司教・奉献生活・教会諸団体の関係性に関する文書改訂(「まとめ」10項)。
  7. 宣教するシノドス的観点からの、司教の人格と奉仕職の諸相(司教職候補者の選定基準、司教の法的機能、使徒座訪問[アドリミナ]の性質と経過)(「まとめ」12, 13項)。
  8. 宣教するシノドス的観点からの、教皇の代理者の役割(「まとめ」13項)。
  9. 議論の分かれる教義的、司牧的、倫理的諸課題について、共同識別するための神学的基準とシノドス的方法論(「まとめ」15項)。
  10. 教会実践における、キリスト教一致の旅がもたらす果実の受容(「まとめ」7項)。

 教皇はまた、シノドス事務局に、「各部会の任務を明確にするための作業要綱を準備する」役割をゆだねました。この働きを遂行するにあたり、当事務局は、研究されるべき課題の具体的な範囲と、その関与が優先されるべき主題を簡潔に述べました、これらの各課題の概要を以下に提示します。

4.教皇によって定められたこの一覧から除外されるのは、シノドス第16回通常総会第2会期(2024年10月)の討議にゆだねられる「まとめ」報告書に登場する諸課題です。シノドス事務局が2023年12月11日に発表した『2024年10月に向けて』によると、この総会は、「わたしたちが呼ばれている宣教への専心の具体的な形、すなわち、シノドス的教会にふさわしい、一致と多様性の間のダイナミズムを表現するもの」を明らかにするために、「どのようにすればわたしたちは、宣教においてシノドス的教会になりうるか」という点に焦点を当てます。こうして、宣教に奉仕する交わりの表現としての権威の行使に関連して、「復活した主とその福音を現代世界にのべ伝えるという一つの使命の中で、洗礼を受けた一人ひとりと各教会の独自の貢献」を高める、参加というテーマが取り上げられています。とりわけ、具体的な教会法上の構造や、その実際的な実践における、シノドス的教会のこの特別なダイナミズムは、三つのレベルで、その神学的な意味において深められるでしょう。すなわち、それぞれの地方教会レベル、教会のグループ(全国、地域、大陸の)レベル、そしてローマ司教の首位権、司教の団体性、シノダリティとの関係性の中にある全教会レベルです。

 これらの課題については、すでに世界中の諸教会との意見聴取のプロセスが開始されており、第2会期の『討議要綱』の起草は、これらの諸教会の貢献に基づいて行われる予定です。『2024年10月に向けて』文書には、この重要な作業の手順と時期が詳述されています。第2会期の作業する主題と、上記3項の一覧に含まれる主題との間に明確な境界線を引くことは不可能です。多くの接点があり、相互に関連し、重なり合っています。したがって、さまざまな軸に沿った作業を、協調的な方法で、また、さまざまな分野で達成されつつある成果に耳を傾ける姿勢で進めることが不可欠です。

5.このような理由から、また上記3項に列挙された課題がシノドス2021-2024のプロセスと二重に関連していることから、シノドス事務局は、とくに作業方法のシノドス的な質、ならびに部会構成の時期と方法を監督しながら、それらの詳細な研究を調整し、促進する任務を託されています。この任務の遂行にあたっては、「国際神学委員会」「教皇庁聖書委員会」、そして法制省と合意し、2023年12月18日の謁見ですでに設立されたシノドスへの奉仕のための「教会法委員会」が支援します。教皇庁各省は、それぞれの固有の権限の範囲内で、個々のテーマについて招集され、その作業の調整に参加し、あるいは協力を申し出ることにより、教皇庁と、その教会と世界への奉仕に関する使徒憲章『プレディカテ・エバンジェリウム』33項を具体的に実施することになります。

6.さまざまなテーマを扱うために設置される研究部会は、世界の多様な地域から司教や専門家が参加するよう配慮され、彼らの専門性に基づいて特定され、真にシノドス的なアプローチを支持するために必要な地理的出自、分野、性別、教会的立場の多様性を尊重するよう配慮されます。彼らが提供する洞察は、研究や調査だけでなく、さまざまな司牧的状況における積極的な聞き取りの成果や、地方教会の考察によってもたらされるべきものです。

 各研究部会の調整担当者は、扱うテーマや事柄に適した方法で、参加者、方法論、作業スケジュールをより正確に定義し、真にシノドス的な方法が採用されるようにします。各部会は最初に作業計画を立て、シノドス事務局の指示に従い、第2会期に提出できるよう、2024年9月5日までにテーマの概要を記した簡単な報告書を提出する必要があります。各部会は、可能であれば2025年6月末までに作業を終えるべきです。

7.さらに、シノドス事務局は、より広い意味でのシノドスの歩みのために、教会のシノダリティの神学的、法的、司牧的、霊的、コミュニケーション的側面を深めるための「常設フォーラム」を始動します。この「常設フォーラム」はまた、「まとめ」報告書が定式化したように、適切なフォーラムにおいて「シノダリティの概念と実践に関する用語的・概念的理解を神学的に深める」(「まとめ」1p項)という要請にも応えるものです。また、「常設フォーラム」は、その活動において、「シノダリティと交わりとの関係、シノダリティと団体性との関係も明確にする」(「まとめ」1j項)ことにも注意を払います。さらに、人々が共同体としてともに歩むことに慣れている文化的背景の中で、シノドス的生活のさまざまな表現を引き出すこと(「まとめ」11項)、「東方諸教会の経験が、シノダリティの理解と実践に提供できる貢献」(「まとめ」6d項。1k項も参照)を研究すること、「たまものの交換の精神のうちに」(「まとめ」7a項)、東西のさまざまな教会的伝統におけるシノダリティの諸概念と実践を深めることにも注意を払います。第2会期では、この「フォーラム」の活動の進捗状況について報告が行われます。


1.東方諸教会とラテン教会の関係性の諸相

 シノドス総会は、東方諸教会のメンバーとラテン教会のメンバーとの相互理解と対話を深める必要性を強調しました。ディアスポラにおける東方キリスト教共同体の発展を見た移住者の増加という状況の中で、東方的伝統とラテン的伝統の共同体は今日、世界のほとんどの地域で共存しています。この点に関して、「まとめ」報告書は、「いくつかの理由から、移住先国に東方諸教会の位階制を設立することは、この問題に取り組むには十分でないのですが、ラテン典礼の地方教会が、シノダリティの名のもとに、移住してきた東方諸教会の信者が同化の過程を経ずに、自らのアイデンティティを保ち、固有の遺産を育てられるように援助する必要」(「まとめ」6c項)があると強調しています。

 「まとめ」報告書が提案したこと(「まとめ」6j項参照)を受けて、シノドス事務局と東方教会省が調整する、東方諸教会とラテン教会の神学者と教会法学者からなる研究部会が、必要な詳細な研究ののち、指針を策定するために設置される予定となっています。

  • 教会法上の領域外にある東方諸教会の司教が、司教協議会へ参加することに関して(「まとめ」19l項参照)。
  • その領域内に、東方諸教会の司祭と信者が住む、ラテン教会教区の司牧活動指針に関して(「まとめ」6c項参照)。これは、ラテン教会の教区が「自らのアイデンティティを保ち、固有の遺産を育てられるように」(「まとめ」6c項)助けるためであり、また「効果的な多様性の中の一致を、目に見えるようにする手本を見出す」(「まとめ」6f項)ことを目的としています。

 この部会はまた、「東方諸教会の総大司教と主要大司教(Major Archbishops)による常設評議会の設立」(「まとめ」6h項)という要請に関する文書や、さらに、「彼らの視点からの貢献によって教会全体を豊かにし、彼らが提起する問題に対処するのを助け、さまざまなレベルでの対話に彼らが参加できるようにする」(「まとめ」6k項)ために、教皇庁諸省の中に、東方諸教会のメンバーからの適切な代表者を置くことに関する文書を検討することができるでしょう。

2.貧しい人の叫びに耳を傾ける

 「まとめ」報告書の16項は、「シノドスの歩みの最初の2年間と、本総会を含め、耳を傾けることは、わたしたちの体験をもっともよく表すことばです」(「まとめ」16a項)という認識を表明し、「シノドス的教会は耳を傾ける教会であることが必要で、この責任は実践に移されなければなりません」(「まとめ」16n項)と断言しています。

 耳を傾けることによって、キリスト教共同体は、「出会った人に対するイエスの態度を採ることを意味するのです」(「まとめ」16d項)。「シノドスの歩みを通して教会は、聞いてもらい同伴を求める多くの人々やグループに出会いました」(「まとめ」16e項)。一人ひとりが自分自身の物語をもっています。しかし、彼ら全員を結び付けているのは、さまざまな状況において、またキリスト教共同体においてでさえ、疎外、排除、虐待、抑圧の犠牲となった経験です。このような人々にとって、聞いてもらうことは、自らの尊厳を肯定し、認められる経験であり、それは深い変容をもたらすものです(「まとめ」4a、16b項参照)。教会にとって、彼らに耳を傾けることは、「彼らの視点に気づき、具体的に彼らの側に身を置くこと」(「まとめ」16i項)ことを可能にします。さらに、「貧しい人の側に立つためには、わたしたちの共通の家をケアする中で、彼らとともに取り組むことが必要です。つまり、地球の叫びと貧しい人の叫びは同じ叫びなのです」(「まとめ」4e項)。

 耳を傾けることの神学的価値ゆえに、「耳を傾けるのは教会」(「まとめ」16d項)なのです。具体的には、多くの場合、プロジェクト、団体、あるいは組織の中で、貧困状況にある人に寄り添おうとする人の活動のおかげで、このようなことが起こるのです。基本的なことは、耳を傾け同伴することは教会的行動であり、全員に任せず一部の人だけに託すような仕事ではない、という認識を広めることです(「まとめ」16n項参照)。

 この研究部会は、さまざまなレベル、とりわけ地方レベルで、さまざまな形態の貧困と疎外に耳を傾ける教会の能力を強化する方法を調査するために設立されます。以下のような問いに取り組みます。

  • 耳を傾けてほしいと願う人に手を差し伸べるため、教会はすでにどのような手段を自由に使えるでしょう。どのような新しい手段を導入することが有益でしょうか。
  • 責任の放棄や違法な委譲を避けるために、耳を傾けるキリスト者共同体と、愛の行為、正義、総合的発展のために具体的に働く人々との結びつきをどのように強めることができるでしょうか。耳を傾け同伴する奉仕職の創設を検討することは有益でしょうか(「まとめ」16p項参照)。
  • 受容、人間性の促進、愛の行為の取り組みをどのようにネットワーク化すればよいのでしょう。耳を傾けることと、「排除された人々の権利」を守り、「不正義を公に糾弾する」(「まとめ」4f項)といった愛のわざを、どのように組み合わせればよいのでしょうか。
  • 神学的探求は、いかに貧しい人がわたしたちに教えなければならないことに耳を傾けることができるでしょうか。というのも「彼らの苦しみを通して、苦しむキリストを直接知ることになる(『福音の喜び』198項参照)」(「まとめ」4h項)からです。
  • 愛の奉仕、正義の推進、総合的な人間性の促進に直接携わっている人々がもつ養成のニーズと霊的ニーズに、教会はどのように応えることができるでしょうか。彼らを支える霊性をどのように育てることができるでしょうか。

 この部会は、シノドス事務局とともに、総合人間開発省によって調整されます。また、支援援助省も、貧困のさまざまな分野に関係する個人、プロジェクト、団体、ネットワークとともに参加します。

3.デジタル環境における宣教

 「まとめ」報告書の17項は、デジタル環境においても福音宣教の使命を果たすことが教会にとって重要であることを理解するための地平を示しています。しかし、教会はデジタル環境における活動を、現代文化におけるあかしの重要な次元として認識することに苦心しています(「まとめ」17b項参照)。

 多くの若者は、「わたしたちがそこに彼らを招こうとし続けている教会の物理的空間を見放して、その代わり、オンライン空間を好んでいます」(「まとめ」17k項)。同時に、「若者、中でも神学生、若い司祭、若い奉献生活者はその文化に直接、深く触れていることが多く、デジタル環境の中で教会の宣教を実践していくのに一番ふさわしい」(「まとめ」17d項)存在です。

 地方教会がデジタル環境にもっと注意を払うよう促すことに加え(『2024年10月に向けて』2項参照)、神学的、霊的、教会法的レベルでの意味を調査し、デジタル宣教を果たすための構造的、組織的、制度的レベルでの必要条件を特定するための研究部会を設置することは適切なことです。「多様で広範な文脈の中で、美しく、かつ親しみやすい方法で人々の思いや心情に語りかけるために、わたしたちが使用する言語の問題に、あらためて注意を払う必要があります」(「まとめ」5l項)。この部会は、以下のような問題に取り組みます。

  • 宣教するシノドス的教会は、デジタル環境へ没入することから何を学ぶことができるでしょうか。「デジタル環境における教会の宣教」への「継続的利点」(「まとめ」17j項)となり得るものを特定するため、わたしたちはどのような基準で、パンデミックの間に起こった多くの体験を評価することができるでしょうか。
  • デジタル宣教を教会生活と教会組織により日常的に組み入れ、既存の小教区・教区組織の刷新にデジタル宣教の新たな最先端領域の意味合いを深めるにはどうしたらよいでしょうか(「まとめ」17j項参照)。
  • 裁治権という概念は、デジタル環境にどのような適応を必要とするでしょうか。実際、「オンラインの使徒的活動は、伝統的に理解されてきた地域の境界を越えて広がる空間と広がりをもっています。このことは、どのようにそれが規制され、どの教会権威が監督責任を負うのかという重要な問題を提起しています」(「まとめ」17h項)。

 この部会は広報省とシノドス事務局によって調整され、文化教育省と福音宣教省も関与します。「あなたの声に耳を傾ける教会」イニシアティブに参加している皆さんからのご意見もお待ちしています。

4.宣教するシノドス的観点からの、『司祭養成基本綱要(Ratio Fundamentalis Institutionis Sacerdotalis)』改訂

 「まとめ」報告書は、助祭と司祭の養成に特別な注意を払う必要性を指摘し、「神学校やその他の司祭養成プログラムを、共同体の日常生活と結びついた状態にすべき」(「まとめ」11e項)ことを明確に要求しています。また、「特定の進路に踏み出す前に、候補者たちは、キリスト教共同体の、初歩的であっても意味ある体験をすべき」であり、さらに、養成の歩みは、「信者の日常生活から切り離された、人工的な環境を作り出すべきではありません」(「まとめ」14n項)と要求しています。最後に、「貧困に生きる人や周縁部の人と出会い、生活を分かち合い、彼らに奉仕する体験を、キリスト教共同体が提供するすべての養成コースの必須の部分とすべきです」(「まとめ」4o項)と強調しています。

 叙階された奉仕職のための養成、そして叙階された奉仕職における養成(すなわち生涯養成)は、教会を構成し、教会を神と人、人と人の結びつきの「しるしであり道具」とする関係の網の目の中に組み込まれなければなりません。

 東方諸教会は、その典礼的、神学的、霊的、戒律的遺産から出発して、この問いに関して独自の規則を準備しなければなりません。

 現在、ラテン教会では、叙階された奉仕職に就くための養成のための輪郭は『司祭養成基本綱要』によって示されています。2016年に当時の聖職者省が発表した『司祭召命のたまもの』です。これは、聖職者省の管轄下にある国々に適用され、また一部分は、福音宣教省(初期宣教部門)の管轄下にある地域のため、聖職者を入籍させることができる奉献生活の会や使徒的生活の会の聖職者会(訳注:『新教会法典』266条2項)のため、軍隊付裁治権者(Military Ordinariates)および属人区裁治権者(Personal Ordinariates)、ならびに諸運動体や新しい教会共同体のための養成施設に適用されます。司教協議会は、自分たちの『全国綱要(Ratio Nationalis)』(『オプタタム・トティウス』1項、『新教会法典』242条1項参照)を起草する任務を負っています。

 現在、各国司教協議会のために、叙階された奉仕職への養成の見直しと、宣教するシノドス的教会(「まとめ」11j項参照)の観点から、『司祭養成基本綱要』の改訂を行うための研究部会を結成し、少なくとも以下の問題に取り組むことが適切であると思われます。

  • 現行の『基本綱要』のどの側面、基準、規定が宣教するシノドス的教会に対応し、どれがもっとも再考する必要があるでしょう。
  • 叙階された奉仕職のための養成プログラムを、他の奉仕者(制度化された奉仕職と「事実上の」奉仕職の両方)のために提案されている養成プログラムとよりよく連携するため、どのような選択をするべきでしょうか。
  • 異なる状況にある各国司教協議会の権能を適切に認識するために、どのような変更が考えられるでしょうか。

 検証と改訂の作業は、シノドス事務局とともに聖職者省が調整しますが、少なくとも福音宣教省、東方教会省、いのち・信徒・家庭省、奉献・使徒的生活会省、文化教育省の参加も求められています。この課題の重要性を考慮すると、各省間の評価とテーマのより深い探求が必要となります。

5.特定の奉仕職の形態に関する神学的・教会法的事象

 「まとめ」報告書は、「宣教の鍵となるカリスマと奉仕職の関係について、神学的理解を深め続ける」(「まとめ」8i項)必要性を強調しました。教会のカリスマ的側面と奉仕職の側面は対立するものでもなければ、重なり合うものでもありません。異なる方法で、異なるレベルの認識と可視性をもって、両者は神の民の各メンバーの生活の一部であり、あらゆる教会的現実の一部です。

 シノドス第16回通常総会第2会期は、「宣教するシノドス的教会になるには」という問いに取り組みます。総会は、神学的・教会法的観点から、さまざまな文脈における教会の宣教へのすべての受洗者の参加を促進し、支援するための実際的な方法を提案するよう求められるのです。一方で、信徒の参加を、「社会変革への福音の応用にかかわることはない」「教会内部のことがら」(『福音の喜び』102項)に限定することを避ける必要があります。他方では、さまざまな形態の教会の奉仕職間の関係性についての研究を継続することが必要です。

 また、この取り組みに鑑み、現在、このような問題に関連する神学的・教会法的ないくつかの問いを掘り下げることが重要であると思われます。つまり、秘跡にかかわるmunus(権能)の特異性について。秘跡にかかわるmunus(権能)(とりわけミサを司式する権能から派生するもの)と、宣教という観点における聖なる神の民のケアと成長のために必要な教会奉仕との関係について。奉仕職の起源について。教会生活のカリスマ的次元について。叙階の秘跡を必要としない教会の役割と奉仕について。奉仕としての叙階と教会的権威の誤った概念から生じる問題について。教会における女性の役割と、女性が「意思決定に向け論じ合うこと(dicision-making)」、「最終的に決定を下すこと(dicision-taking)」、共同体のリーダーシップへ参加すること、について。

  • このような状況の中でこそ、女性が助祭職に就く可能性についての問題を適切に提起することができます。この部会には、「教皇によって特別に設置された委員会の成果……を活用して」「女性の助祭職への参入に関する神学的・司牧的研究」(「まとめ」9n項)を継続する任務がゆだねられています。
  • この部会はまた、「女性の積極的貢献が認識、評価され、その司牧上のリーダーシップが教会の生活と宣教のあらゆる領域で増大するように」(「まとめ」9i項)というシノドス総会の願いに応えることも意図しています。

 シノドス事務局との連携のもと、これらの課題の研究は、関連する諸省との対話の中で、教理省にゆだねられます。

6.宣教するシノドス的観点からの、司教・奉献生活・教会諸団体の関係性に関する文書改訂

 シノダリティは、神の民のすべてのメンバーのカリスマを認め、向上させることと密接に関係しています。総会は、教会の生活と宣教において、位階的たまものとカリスマ的たまものを明確にすることの重要性を強調しました。第1会期では、これらのたまものの教会論的意味と教会法的・司牧的意味を問う必要性が明確に示されました(「まとめ」10e項参照)。

 この観点の中、「まとめ」報告書は、奉献生活と、教会の共同体的生活の発展に対するさまざまな形態の教会の諸団体の現実と貢献を認識しています。また報告書は、司教、男女奉献生活者、教会運動体や新しい共同体のメンバーの間の関係性がよりよく彼ら自身を説明し、交わりと宣教の奉仕のためにともに立ち上がることができる方法について、より深く探求するよう求めています(「まとめ」10f項参照)。

 以下のような課題を探求する目的で、研究部会を設置していきます。

  • 1978年の文書『ムトゥエ・レラチオネス』で提案された「教会における司教と修道者の関係」(「まとめ」10g項)に関する指導的基準の改訂。
  • 「各国司教協議会と、奉献生活および使徒的生活会の総長連盟や管区長連盟は、出会いと協力体制」(「まとめ」10h項)を促進するための場と方法を、すでにある成功事例の研究から始めて、特定すること。
  • 既存の成功事例の研究に基づいて、信徒団体、教会運動体、新しい共同体と、各地方教会での生活との有機的な関係を促進するための場と方法を特定すること。それは、教会諸団体の代表者が集う評議会や委員会の構成から検討することになります(「まとめ」10i項参照)。

 この研究部会は、司教省、奉献・使徒的生活会省、福音宣教省(初期宣教部門)、いのち・信徒・家庭省と協力しながら、シノドス事務局によって調整されます。また、奉献生活者を代表する国際的組織(男女修道会連盟)と、さまざまな教会諸団体を巻き込むべきです。

7.宣教するシノドス的観点からの、司教の人格と奉仕職の諸相(司教職候補者の選定基準、司教の法的機能、使徒座訪問[アドリミナ]の性質と経過)

 司教の姿と役割は、シノドス第1会期の中心的なテーマの一つで、『討議要綱』では、数多く言及されています。この中心性は、「まとめ」報告書においても、司教職を明確に扱った12項と13項、また、8項、10項、11項、18項、19項、20項のような、司教の役割を主題とする他の項目においても現れています。司教職のさまざまな側面を深め、検討することは、第2会期の課題です。

 この働きは、確かに準備で尽力することから恩恵を受けるでしょう。おそらく、総会が司教の姿と職務のすべての側面を網羅することは不可能です。そのため、特定の研究部会に詳細な探求をゆだねるのが適切です。

 司教省とシノドス事務局が調整し、福音宣教省と東方教会省が関与する第1の部会は、以下のような問いを取り扱います。

  • シノドス的教会では、司教の選出基準はどのようなものでしょうか(「まとめ」12l項参照)。地方教会、つまり、神の民のすべての構成員、司祭団、参加型の諸団体、司教協議会はどのように選出過程に参入することができ、また参入すべきでしょうか。
  • さまざまな組織の主体が関与するこの選定の活動において、教皇大使は、地方教会において、普遍教会の配慮の緊密さを代表するという繊細な役割を果たします。シノドス的な視点に立ち、不適切な圧力を避けるように注意しながら、関係教区の神の民のすべてのメンバーの関与の中で、いかに大使の務めを発展させることができるでしょうか(「まとめ」12l項参照)。
  • 使徒座訪問(アドリミナ)は、交わりの奉仕におけるたまものの交換という論理の中で、どのようにして団体性とシノダリティを発揮する機会となり、その道具となりうるでしょうか(「まとめ」13g項参照)

 法制省とシノドス事務局が調整し、司教省と福音宣教省が参加する第2の研究部会は、司教の法的機能について掘り下げます。これは、すでに自発教令『ボス・エスティス・ルックス・ムンディ』(2023年3月25日)で提起されたものです。

  • シノドス的な論理的根拠の中で(「まとめ」12c項参照)、いかにその行使を促進するのか。それはまた、第1会期中に明らかになった、ある場合に、「父親の役割」と「裁判官の役割」を調和させることの難しさに対応するためです(「まとめ」12i項参照)。

8.宣教するシノドス的観点からの、教皇の代理者の役割

 「共同責任を促進し、虐待から保護するシノドス的教会の不可欠な要素」(「まとめ」12j項。12i項と11k項参照)として提案された透明性と説明責任の文化の枠組みの中で、総会は、「教皇の代理者(訳注:大使など)が地方教会の奉仕を助け、完成させる使命を果たしている各国の地方教会が、代理者の働きを評価する形態を確立することが適切である」(「まとめ」13i項)と考えます。

 教皇大使は司教を選ぶ過程において基本的な役割を果たしますが(上記本文7項参照)、それ以上に、教会生活の地方教会レベルと普遍教会レベルの相互作用の基本的なつながりを表します。したがって、司教の奉仕職とその遂行方法は、シノドス的教会にとって典型的な地方教会への配慮と調和したものでなければなりません(「まとめ」13c項参照)。この要点は、「各国司教協議会の決定的役割」(「まとめ」19d項)を強調するものであり、その特権と権限はシノドス的鍵の中で再考される必要があります。また、「大陸レベルでのシノダリティと団体性の必要性」(同)を浮き彫りにし、「教会管区、または管区大司教座は、その地域内の各地方教会の交わりの場として復興、強化されるべき」(「まとめ」19i項)という提案の動機づけとなっています。教皇大使が接するシノドス的環境が変化する中、中間的な諸団体が増え続けていることに伴い、今日、教皇大使の奉仕職が、地方教会とペトロの後継者との間の交わりの絆を強化し、教皇がより確実に、地方教会のニーズと希望を知るためにどのように役立つかを再考することが求められています。

 国務省とシノドス事務局が調整し、司教省と福音宣教省が関与する形で、一つの研究部会がこの課題に専念することになります。地方教会とその司教座の代表の中から、たとえば大陸レベルでの教会のグループ分けを強化するなどの形で参加することも有用であると思われます。

9.議論の分かれる教義的、司牧的、倫理的諸課題について、共同識別するための神学的基準とシノドス的方法論

 総会の討議に基づき、「まとめ」報告書は、「論争の的となる多くの諸課題の中心には、愛と真理の関係についての問いがあり、このことが論争の的となる多くの諸課題に影響を与えます」(「まとめ」15d項)と断言し、「わたしたちが発展させてきた人類学的な区分は、ときに、経験や科学的知見から生まれる複雑な諸要素を把握するのに十分でないことがあり、より高度な精密さとさらなる研究を必要とします」(「まとめ」15g項)と認識しています。それゆえ、「キリスト論的啓示に由来する、愛と真理が織り成す原初的なものについての教会の考察を継続し、これらの原点に忠実な教会の実践を目指すことが必要」(「まとめ」15h項)であり、「個人や教会のからだを傷つける、単純化された判断に屈することなく、……必要な時間を取り、わたしたちの最高のエネルギー」(「まとめ」15g項)を投入するのです。

 このような観点から、総会は「論議を呼んでいる教義的、司牧的、倫理的諸課題について、神のことば、教会の教え、神学的考察、シノドス的体験の評価に照らして、共同識別を可能にする取り組み」(「まとめ」15k項)を提案しました。また、考えられる手段も示しています。「これは、守秘義務を守り、率直な議論を促進する組織的な状況の中で、多様な技能や背景をもつ専門家が徹底的に議論することによって達成することができます。適切な場合には、検討中の諸課題から直接影響を受ける人々も参加させるべきです」(同)とし、この歩みを「総会の次期会期前までに開始されなければなりません」(同)と明確に要請しています。

 イエスの生涯と教えに忠実な愛の行為と真理との関係、ひいては司牧ケアと(道徳的)教義との関係をより明確にすることを視野に入れながら、全体的なアプローチを共有した上で、人間学、救済学、倫理神学という伝統的カテゴリーを再解釈する研究部会を結成することで、この要請に応えることができるであろうと考えられます。この取り組みにおいては、教義と司牧ケアの循環的な関係をより明確にすることが適切でしょう。つまり、前者は通常、真理と関連づけられ、後者はいつくしみと関連づけられますが、あたかも司牧的に賢明と思われる実践が、教義の体系化には何の影響も及ぼさないかのようです。さらに、さまざまな識別の中でわたしたちは、どのようにすれば、「多様な状況により注意を払い、地方教会の声にもっと耳を傾ける」(「まとめ」13h項)ことができるかを自問しなければなりません。

 この課題に取り組むために必要な権限を念頭に置き、この部会の指揮は、シノドス事務局の支援のもと、教理省長官と国際神学委員会委員長に任せられます。教皇庁生命アカデミーが貢献するよう招かれています。

 この分野では、おそらく他の分野以上に、役割は違えど教皇庁を代表して発言する主体同士が、その立場をより調和させるために、より大きな協力関係を築くことが急務です。不協和音が起き、さらには敵対するならば、向き合って省察することよりも、分裂や混乱が助長される危険性があります。シノドス的なアプローチは、同質性を目指すのではなく、調和を目指すものです。

10.教会実践における、キリスト教一致の旅がもたらす果実の受容

 「エキュメニズムの歩みがシノドス的であるように、カトリック教会が歩んでいるシノドスの道は、エキュメニカルであり、そうでなければなりません」3という見解は、単なる願望ではありません。カトリック教会のシノドスの歩みは、エキュメニカルな意義が大きく、いくつかの教会や教会共同体は、行われたことに心からの感謝を表明しています。第1会期は、二つの重要な新機軸によって特徴づけられました。それは、単に装飾的な方法ではなく、エキュメニカルな前晩の祈り「Together」によって導入され、さまざまな教会の長や指導者が参加したこと、そして友好使節が、小グループと全体会議で行われた対話と識別に、発言権をもって積極的に参加したことです。

 わたしたちは、「まとめ」報告書7項に示された、取り組むべき課題の時宜性、そしてそこで提示された提案の具体性から得られる「意見の合致点」の豊かさから生まれる機会をとらえなければなりません。このため、以下の課題に取り組む研究部会を設置することが適当です。

  • 神学的対話に照らし、具体的な教会的反響に注意を払いながら、さまざまな教会レベルにおけるシノダリティと首位権との相互依存関係を深め、とりわけ「一致のために奉仕するペトロの奉仕職に関する理解の仕方」(「まとめ」7h項)を参照すること。
  • 秘跡的交わりと教会的交わりとの結びつきに照らし、エウカリスチアにおける受容(communicatio in sacris)の課題を、神学的、教会法的、司牧的な観点から詳細に研究すること。とりわけ、混宗婚の夫婦や家族の体験とエキュメニカルな意義に言及しながら(「まとめ」7i項参照)。
  • 「『超教派』共同体や、キリスト教に刺激を受けた『リバイバル』運動といった現象」(「まとめ」7j項)を、詳細かつオープンな形で考察すること。

 この研究部会は、シノドス事務局長とキリスト教一致推進省によって調整されます。

バチカン、2024年3月14日

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