「教区における諸宗教対話の実践に関するアンケート調査」の結果からみる傾向と課題

「教区における諸宗教対話の実践に関するアンケート調査」の結果からみる傾向と課題 2020年3月  諸宗教部門は2019年8月に全教区に対して「教区における諸宗教対話の実践に関するアンケート調査」を実施した。これは、各教区 […]

「教区における諸宗教対話の実践に関するアンケート調査」の結果からみる傾向と課題

2020年3月

 諸宗教部門は2019年8月に全教区に対して「教区における諸宗教対話の実践に関するアンケート調査」を実施した。これは、各教区に諸宗教担当者を任命していただて全教区で連携協力しながら諸宗教対話を進めていくために、現在の実施状況をまず把握しておくためである。2010年に同様の調査を行ってから10年近くが経過し、状況に変化があると予想されることも契機となった。

 全教区から回答をいただき、それを集計したものが別紙(ダウンロード)の通りである。ここから見える傾向と今後の課題について述べてみる。

1.『2019年教区における諸宗教活動アンケート調査』回答からみえた「傾向」

1.)何かしらの活動をしている教区が全体の81%に対し、「他宗教行事への教区代表参加」や「平和旬間の呼びかけ」を含む教区レベルでの活動をしている教区は56%。また、「会議.集いの開催」「巡礼企画」など積極的な活動を教区レベル活動の指標にした場合、活動的実施している教区は4教区/16教区(25%)のみ。

  • この数値から、教区全体でのコンセンサスがとれた活動の動きというよりかは、担当者およびその協力者の周り少数で動いているという現状が読み取れる。
  • また、教区の回答者から「全国レベルで司教団がよびかけるべき行事もある」ことも「その他の意見」の中で主張されている。

2.)教区内で諸宗教担当者が居なくても、諸宗教の加盟団体に加盟している教区が4教区/5教区(80%):

  • この数値から教区内の人材不足などにより、専属担当をつけるのは難しいが教区として諸宗教ネットワーク団体へ所属する価値はおかれている傾向がある。

3.)「平和」「被爆者供養」「慰霊」「遺骨収集活動」(3教区)、「災害復興祈祷」(3教区)など明確な協力目的がある場合、諸宗教連携活動が活発になる傾向がある。また、「行動の対話」の中で、「連帯で行動を起こす力」を実感している教区は全体の50%、「真の解放に向けての成果」を感じている教区は25%。この数値も上記上段を後押しする立証データとなっている。

 *なお、上に書かれた教区名はあくまでもアンケート回答ベースである。復興祈祷などは他の教区も諸宗教での合同祈祷が実施されていたと思われるが、アンケート回答に記入されていない情報は含んでいない。以下、同様。

4.)平和旬間への呼びかけ、各宗教が持つ伝統行事への互いの参加、互いの宗教施設や巡礼地訪問は81%(13教区/16教区)。このような活動を通して、諸宗教対話の機会となっている。

5.)大きな行事(サミット)などが開催される教区は、その大行事での連携をベースに諸宗教のつながりをもっている(1教区)。 

6.)加盟団体の会合数は年間3回以下の集まりが全体の46%、年間4~6回は46%、つまり6回以下が92%。20人以下の規模も全体の92%。対話をするのにはほどよい人数、頻度は多くても2カ月に1回というのが継続されていく鍵となっているのではないか。

2.『2019年教区における諸宗教活動アンケート調査』回答からみる今後の課題

1.)重要性について。1教区を除く15教区において、何らかの活動が行われており、日本の教会が他宗教と関係を持つ重要性は十分に認識されていると言ってよい。諸宗教との対話活動は、決して「あってもなくてもよい」というものではないことは、第2バチカン公会議が力強く訴えた次の言葉によってもよくわかる。「教会は自分の子らに次のことを奨励する。すなわち、キリスト教の信仰と生活をあかしつつ、懸命に愛をもって他の諸宗教の信奉者たちと対話し協力することによって、彼らのもとに見いだされる霊的・道徳的な富や社会的・文化的な諸価値を認識し保持し促進することである」(『キリスト教以外の諸宗教に対する教会の態度についての宣言』2)このことは、キリスト教以外の人々が国民の99パーセントを占める日本においては、格別な重要性を持っている。先人たちの努力によって、日本の教会はこれまで、ことに第2バチカン公会議後、諸宗教との親しい関係を築いてきたことは評価されており、昨年11月に訪日された教皇フランシスコは、様々な場でのメッセージでこの点を触れている。

  • 日本の教会は小さく、カトリック信者が少数派であることは知っています。しかしそれが、皆さんの福音宣教の熱意を冷ますようではいけません。日本に固有の状況において、人々に示すべきもっとも強く明白なことばは、普段の生活の中でのつつましいあかしと、他の宗教的伝統との対話です。(日本司教団との会合、2019年11月23日)
  • 善意あるすべての人と、また、異なる宗教を信じる人々と、絶えざる協力と対話を重ねつつ、主に結ばれるならば、わたしたちは、すべてのいのちを、よりいっそう守り世話する、社会の預言的パン種となれるでしょう。(東京ドームでのミサ説教、同年11月25日)
  • この数日間に、何世紀にもわたる歴史の中ではぐくまれ、大切にされてきた日本のすばらしい文化遺産と、日本古来の文化を特徴づける宗教的、倫理的な優れた価値に、あらためて感銘を受けました。異なる宗教間のよい関係は、平和な未来のために不可欠なだけでなく、現在と未来の世代が、真に公正で人間らしい社会の基盤となる道徳規範の大切さを認められるよう導くために重要なのです。(政府および外交団との懇談、同年11月25日)

2.)担当者について。2教区を除いて、担当者がいる、あるいはいなくとも諸宗教活動を担当している司祭がいるという現状は評価するべきである。司祭の数が減少する中で、専属の担当者を置くことは今後もより困難になっていくだろうが、全教区に担当者がいるのが望ましい。ただし、言わば名前だけの担当ではなく、実際の活動に関わっている者が担当者になることが必須である。

 前項1.)で述べたように、諸宗教との対話活動は日本の教会において大変重要な要素であることから考えても、すべての教区に担当者がおかれ、教区内での活動を地道に進めることは大切である。

3.)活動の内容について。アンケート結果からみた傾向の分析の中でこう言われていた。「『平和』『被爆者供養』『慰霊』『遺骨収集活動』『災害復興祈祷』など明確な協力目的がある場合、諸宗教連携活動が活発になる傾向がある」。人々が宗教に対して持っている期待に応えていくためにも、このような種類の活動は今後ますます重要になっていくと思われる。これから起こるであろう災害(むろん起こらないのが一番だが)に際しても、宗教宗派の壁を越えた活動が期待されている。

 このような活動はどちらかといえば聖職者を中心にして行われるのに対して、集いや講演会、諸宗教行事に参加するのはおもに信徒である。教会が求め、また評価している諸宗教との対話活動の機会が、一部の教区や地域ではなく、全教区のすべての信徒に与えられることが望ましい。

4.)教区間の連携について。以上のようなことから考えると、より一層教区間での連携が求められる。たとえば、以下のような点である。

  • すべての教区に窓口となる担当者を置く。
  • これまでも行われてきた全国規模のシンポジウムを今後も毎年開催し、その前後に「全国諸宗教部門担当者連絡会」をもって、情報や経験の共有を図る。
  • 各教区で行われている活動について、教区内では教区報を通していっそうの周知を図り、それをさらにカトリック新聞等を通じて全国に発信していくようにする。
以上

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