貝塚教会内での外国籍信徒逮捕の事案

カトリック貝塚教会

去る、5月27日12時30分頃、神奈川県警 川崎臨港署の捜査員6、7人が、川崎市内のカトリック貝塚教会(主任司祭・本柳孝司神父/横浜教区)の敷地内に無断で立ち入り、フィリピン国籍の信徒に対して、職務質問を行った上、同敷地内で「旅券不携帯ないし常時携帯提示義務違反」の罪により現行犯逮捕するという行為がなされました。

その後の経過(カトリック新聞より)

神奈川県警捜査員 貝塚教会敷地内で捜査および逮捕行為 横浜教区が抗議、「申し入れ書」渡す

(カトリック新聞2012年6月17日付より)
 神奈川県警川崎臨港署の捜査員6、7人が5月27日12時30分頃、川崎市内のカトリック貝塚教会(主任司祭・本柳孝司神父/横浜教区)の敷地内に無断で入り、フィリピン国籍の信徒に対して、職務質問を行った上、同敷地内で旅券不携帯ないし常時携帯提示義務違反の罪により現行犯逮捕した。
 本柳神父によると、同神父は捜査員らに対して、教会(宗教施設)施設内で捜査行為をすることは許されないことを伝えたが、その際、捜査令状、逮捕令状も無しに、非正規滞在の容疑による捜査のために教会内に立ち入っていたことが分かった。子どもを含む多くのフィリピン国籍の信徒や日本人信徒数人が、捜査員による執拗(しつよう)かつ威圧的な職務質問と緊急逮捕の様子を目撃していたという。

 「信教の自由 基本的人権侵害」

 この事態を重く見た横浜教区は6月5日、梅村昌弘司教名で、川崎臨港署の本山巌署長に宛てた「申し入れ書」を交付し、次のように伝えた。
 「本件職務質問及び現行犯逮捕については、カトリック教会における司牧活動に重大な支障を及ぼすものであり、信教の自由という基本的人権を侵害する行為であると言わざるを得ません。また、本件職務質問は、警察官職務執行法にも違反し、さらには憲法35条の適正手続きにも違反する違憲・違法な教会敷地内への立入行為であって、市民の平穏な生活を脅かす人権侵害行為です」
 さらに、横浜教区は同署に対して、①今回の違法な立入行為に強く抗議し、謝罪を要求、②今後、教会敷地内へ違法な立入及び職務質問を実施して、信教の自由という基本的な人権を侵害することがないよう、強く要請、③今後、教会施設付近において、教会を訪れる人を対象として、非正規滞在の捜査を目的とした職務質問は控えるよう要請した。
 本柳神父は6月5日、千木良正弁護士を伴い、同署で本山署長らに「申し入れ書」を手渡し若干の説明を行った際、文書による回答を求めたが、警察側は、「書面での回答ができるかどうかは検討させて頂きたいが、申し入れ事項に対する回答は行います」と答えた。同神父は、警察側は立入行為自体が違法であるとの認識を持っていないような印象を持ったという。
 梅村司教は6月7日、東京・潮見で開かれた常任司教委員会で、今回の立入行為について報告。「申し入れ書」に対する「回答」を待って、対処したいと語った。常任司教委員会は、6月19日からの定例司教総会でも今回の事例を報告し、日本の教会としての対応を検討する意向を示した。

2012年度定例司教総会 教会敷地内捜査・逮捕行為で、国家公安委・警察庁へ「要請書」提出を承認

(カトリック新聞2012年7月1日付より)
 2012年度の定例司教総会が6月19日から22日まで、東京・潮見の日本カトリック会館で開かれ、全国16教区から17司教と男女修道会代表のオブザーバーらが参加した。会期初日の19日、報告事項の中で、横浜教区の梅村昌弘司教から、川崎市のカトリック貝塚教会敷地内での警察官による捜査および逮捕行為(本紙6月17日付1面既報)に関して報告があり、参加司教たちは21日に行われた審議で、日本の教会として、同様の事例の再発防止を求める同日付の「要請書」を国家公安委員会委員長と警察庁長官宛てに提出することを承認した(「要請書」全文を2面に掲載)。7月上旬にも提出される予定。また同日、高山右近の列聖列福に関して、全司教連名による早期列福を求める要望書の提出や、今秋から列聖運動に関連して募金活動を始めることなどを承認した。

 捜査・逮捕行為についての対応

 5月27日に発生した貝塚教会敷地内での警察官による令状無しの捜査および逮捕行為に対して、横浜教区は6月5日、神奈川県川崎臨港警察署に、カトリック教会の司牧活動に重大な支障を及ぼすもので、信教の自由という基本的人権の侵害であるとして抗議し、申し入れ書を提出した。7日の常任司教委員会は、今回の行為は日本の教会全体に関係することであると判断し、定例司教総会で報告することを決めた。
 その後、12日付で同署から申し入れ書に対する回答書が届き、(1)教会内への署員の立入行為が不適切だったことを認め、(2)当日教会に集まっていた人々へ迷惑をかけたことを謝罪、(3)今後の警察活動を推進するに際し、信教の自由を含む基本的人権を尊重する意向を伝えてきた。
 本司教総会は、今回の捜査および逮捕行為に対して、日本カトリック司教協議会として、国家公安委員会委員長および警察庁長官宛てに、司教協議会会長および会員一同名で「要請書」を提出することを承認した。
 「要請書」は、「今回のような事件が、川崎臨港警察署だけでなく、全ての都道府県の警察署内で今後二度と起こらないよう、以下の事項について警察内における周知徹底、および職員の教育の徹底を要請します」として、次の3項目を挙げている。
 (1)宗教団体の信教の自由を尊重し、宗教活動を妨害するような行為をしない、(2)教会等の敷地内へ違法な立入および職務質問等の捜査を実施して、基本的人権を侵害することがないようにする、(3)教会施設付近において、教会を訪れようとする人々への職務質問等を行わない。

教会敷地内捜査・逮捕に対する要請書、公安委員長に手渡す

教会敷地内捜査・逮捕に対する要請書、公安委員長に手渡す (松原国家公安委員長=左=に要請書を手渡す池長大司教)

教会敷地内捜査・逮捕に対する要請書、公安委員長に手渡す
(松原国家公安委員長=左=に要請書を手渡す池長大司教)

(カトリック新聞2012年7月8日付より)
 神奈川県川崎市の貝塚教会敷地内で川崎臨港警察署の警察官が、信徒への捜査および逮捕行為に及んだ事件について、日本カトリック司教協議会会長の池長潤大司教(大阪教区)は7月2日、国家公安委員会の松原仁委員長と面会し、日本カトリック司教協議会として、同様の事例の再発防止を求める「要請書」(本紙7月1日付既報)を手渡した。
 東京・霞が関の警察庁で行われた面会には、カトリック側からは、池長大司教、カトリック中央協議会事務局長の宮下良平神父、同協議会社会福音化推進部長の石川治子修道女、千木良(ちぎら)正弁護士(神奈川・末吉町教会)の4人と、付き添い人を務めたクリスチャンの今野東(こんのあずま)参議院議員が出席。対応したのは、松原委員長、警察庁の警視長と警視正の計3人だった。
 池長大司教は、松原委員長に要請書を手渡した後、今回の事件は、信教の自由を保障するという点で「考えられない出来事だ」と強調。今後の対応や、全国の警察への教育・周知の徹底等について、納得のいく形で明確に書面で回答してくれるようにと要望を出した。
 また宮下神父は、「国家権力による信教の自由への介入」という懸念が全国の教会に広がっているため、今回の事件が、警察の組織的な行動であったのかという点について回答が欲しいと発言。これを受け、警察庁側は、組織的な行為ではないと説明したが、今野議員も、こうした懸念を拭い去るためにも「納得させるような対処が必要ではないか」と主張。
 松原委員長からは、書面で回答することについての返答はなかったが、「常識的には考えられない行為と考えている。二度とこのようなことが起こらないようにすることが目的です。大司教が来られたことを重く受け止め、今後のことを進めていきたい」と話していた。

教会敷地内捜査・逮捕に対する要請書、警察庁担当官から回答 全警察に「信教の自由の尊重」通達

(カトリック新聞2012年7月22日付より)
 神奈川県川崎市の貝塚教会敷地内で5月末、川崎臨港警察署員が信徒への捜査および逮捕行為に及んだ事件について、日本カトリック司教協議会会長の池長潤大司教(大阪教区)は7月2日、松原仁国家公安委員会委員長と片桐裕警察庁長官宛てに、同様の事例の再発防止を求める「要請書」を提出した(本紙7月8日付既報)。
 これに対して、7月12日付で、警察庁刑事局組織犯罪対策部国際捜査管理官の白川靖浩警視長から池長大司教宛てに連絡書が届き、「今回の要請を受けまして、松原国家公安委員会委員長とも相談の上、警察庁において検討し、全国警察に対し」、通達を出したことを通知してきた。
  「警察庁としましては、今後とも、信教の自由を始めとした憲法で保障された基本的人権を尊重した警察活動を全国警察に対して徹底してまいりたいと考えております」と白川警視長は述べている。
 連絡書に添付されていた「警察庁から全国警察に発出した通達の要旨」によると、通達の題名は「基本的人権に留意した適切な警察活動の推進について」。まず、貝塚教会敷地内への警察官の無断立ち入りと逮捕行為は「不適正事案」だったとして、神奈川県警が横浜教区に謝罪したことを伝えている。
 通達は、「職務執行に当たっての施設への立入りは、法令に従って行わなければならない。また、現場における警察活動には様々なものがあり、いずれも信教の自由を始めとする基本的人権の尊重を旨として行わなければならない」と指摘している。
 さらに、「各都道府県警察にあっては、今回のような事案を再び惹起することのないよう上記の趣旨を職員に指導・教養するとともに、特に、現場の警察活動を指揮する幹部に対し、この点に留意した適切な警察活動が行われるよう、的確な指揮に当たらせられたい」と全国の警察に呼び掛けている。
 「要請書」は池長大司教が7月2日、東京・霞が関の警察庁で、国家公安委員会の松原仁委員長と面会し、直接手渡した。白川警視長は警察庁担当官として面会に同席していた。

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