日本の教会の基本方針と優先課題

前 文 1. 「全世界に行き、全ての者に福音を宣べ伝えなさい」(マルコ16・15)これこそ、 主イエスが教会すなわち、神の民全員に与えた使命である。 2. 教会が今日の日本において、この使命を積極的に果たすためには、神の […]

前 文
1. 「全世界に行き、全ての者に福音を宣べ伝えなさい」(マルコ16・15)これこそ、 主イエスが教会すなわち、神の民全員に与えた使命である。

2. 教会が今日の日本において、この使命を積極的に果たすためには、神の民全員が、まず福音の力によって刷新され、神の言葉と救いの計画に従って生き生きと働く者 となり、また、その同じ福音の力によって日本の社会の全ての営みを、内部から新たにしていくことが必要である。これこそ、われわれが、目指す日本における福音宣教である。

3. 福音をのべるにあたっては、司教を中心として全ての神の民が、それぞれの役務の特性と段階に応じて、協力し責任を分かち合わなければならない。

4. その際、視点を自己の教区、自己の直接属している信仰共同体のみに限ることなく、日本の教会全体を視野に収め、各教区の独自性を保ちつつ、日本の教会全体の、成長のために、共同で責任を負い、共同の作業を展開するよう要請される。これによって、アジアの教会、普遍教会への一層の寄与を図ることができる。

5. 日本という社会、文化、歴史、地理的な情況の中に普遍教会を具体化するためにも、「日本の教会」という視点に基づいて行動することは、不可欠な要請である。

6. この要請にこたえるには、全国的視野に立って福音宣教の推進に奉仕する「日本の教会の中央機構を必要とする。そのためには、現存のカトリック中央協議会を、この目的によりよく沿うものに改革する必要がある。

7. この中央機構において、司教の間の共同責任は、特に司教が神の民を代表して集う司教協議会総会によって果され、さらに各司教委員会を構成する司教全員が、その司教委員会に属する諸委員会、協議会、活動団体に関する審議に責任を分かつことによって実現される。

8. また、委員会、協議会、活動団体、事務局、特に福音宣教推進全国会議に、司祭・修道者・信徒が参与することにより、日本の教会に対する神の民全員の共同責任の実現を図る。

日本の教会の基本方針と優先課題
 日本司教団は、70年代の初め、第二バチカン公会議の精神に基づいて、『社会に福音 を』(1972年6月、司教団教書)と呼びかけた。(1)み言葉を伝える、(2)キ リスト教的あかしをする、(3)キリストの共同体をつくる、がこの教書の3本柱であった。

 1974年の世界代表司教会議(シノドス)は『現代世界における福音宣教』を取り あげ、これを受けて1976年1月、宣教司牧司教委員会は、声明文『日本における宣 教について』を出し、宣教を目指す司牧へと姿勢を転換することが重要な課題である、と訴えた。

 この課題の実現を目的に1977年に司教団が設立した「宣教司牧センタ-」(現、 カトリック宣教研究所)は、1979年6月、『日本の社会の福音化を目指して』とい う啓発のためのリ-フレットを作成、経済大国となった日本の中で、まず教会自身の福 音化を促し、社会の福音化のために働く教会の方向を示した。「小さな兄弟たち」「ア ジアの中の日本」を強調したものである。1981年の教皇訪日を機に、宣教司牧司教委員会は、翌1982年3月『洗礼の恵 みを一人でも多くの友に伝えよう』と直接宣教の重要さを指摘した。

 このように、過去の10年間、4つの指針が司教団によって出されたが、直接宣教の 促進と社会の福音化が2本柱となっている。しかし、これらの指針は、教会全体に浸透 せず、従って、約40万のカトリック教会の全員が一体となった協力態勢はまだできあ がってないのが現状である。

 80年代に入った今日、多くの人々が、物質的豊かさだけでは満足せず、精神的価値 を求め、「物より心」の時代になりつつある。しかし、能率主義、合理主義による管理 化、画一化が社会のあらゆる面で強化され、個人のみならず地域、国家のエゴイズムも 露骨になり、落ちこぼされたり、差別されたりする人々がますます多くなってきている。  このような現状の中で、福音宣教の強化と社会・文化の福音化の課題を最優先すべき ことを再確認し、特に全国レベルで、司教、司祭、修道会・宣教会の会員、信徒の全員 が真に一体となって取り組む協力態勢づくりが急務である。昨年実施した中央協議会の 改革の目的もこのためであった。

 従って、今総会は、下記の方針を採択する。


基本方針
1. 私たちカトリック教会の一人ひとりが、宣教者として、まだキリストの食卓を囲んでいない人々に信仰の喜びを伝え、より多くの人を洗礼に導き、彼らとともに救 いのみ業の協力者となる。

2. 今日の日本の社会や文化の中には、すでに福音的な芽生えもあるが、多くの人々を弱い立場に追いやり、抑圧、差別している現実もある。私たちカトリック教会の全員が、このような「小さな人々」とともに、キリストの力でこの芽生えを育て、全ての人を大切にする社会と文化に変革する福音の担い手になる。

優先課題
   従って、司教団は、このような使命をよりよく達成するために、今後次のことを目指す。

1. 教区、小教区を宣教共同体になるよう育成する。

2. 修道会、宣教会、諸事業体(学校、施設)と具体的な協力態勢を敷く。

3. 1987年に、司教、司祭、修道者、信徒による福音宣教推進全国会議を開催し、

それを目標に準備に取り組む。
以上

1984年6月22日
1984年6月定例司教総会において
日本カトリック司教団

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