紀元二〇〇〇年を迎えるにあたって

日本のカトリック教会の皆さんへ はじめに キリストにおいて兄弟姉妹である皆さん、  教皇ヨハネ・パウロ二世は、一九九四年十一月十日、使徒的書簡『紀元二〇〇〇年の 到来』を発表しました。イエス・キリストの誕生以後の時の流れ […]

日本のカトリック教会の皆さんへ


はじめに

キリストにおいて兄弟姉妹である皆さん、

 教皇ヨハネ・パウロ二世は、一九九四年十一月十日、使徒的書簡『紀元二〇〇〇年の 到来』を発表しました。イエス・キリストの誕生以後の時の流れを大きく千年毎に捉え、 特に私たちが生きてきた第二の千年期の様々なできごとと、その時々の教会の姿勢を振 り返り、反省・回心・祈りと学びによって、喜びと希望に満ちた新たな千年期を迎える 準備をするように、教皇はこの使徒的書簡を通して世界中の全信者に向けて熱心に呼び かけておられます。

イエス・キリスト生誕二〇〇〇年

教皇は特にキリストのご誕生から二千年のこの年を「大聖年」とすると宣言していま す。「聖年」についての説明はここでは省きますが、旧約聖書に、喜びと解放の年とし て示されているこの特別な恵みの年が、現在の私たちにとってどのような意味をもって いるのかを黙想することは有意義なことでしょう。

教皇はこの紀元二〇〇〇年の準備にあたって、特に、悔い改めと和解の大切さを挙げ、いくつかの反省点を示しています。教会が、この千年間に教会の中で起こったことをは っきり意識すること、特に、教会が過去の誤りや不信仰、一貫性のなさ、必要な行動を 起こすときの緩慢さなどを悔い改めることを勧めておられます。殊に、次の千年期に、 同じキリスト者の間の分裂を克服し、完全な一致に向けて努力することが求められてい ます。また、不寛容な態度、暴力の行使の黙認、不正や差別に対する多くのキリスト者 の姿勢なども、過去の教会の反省すべき点として挙げられています。

教皇は、また、第二バチカン公会議がカトリック教会を他教派のキリスト者、他宗教 の信奉者、現代のすべての人々に開いたことに言及し、紀元二〇〇〇年を迎える準備の 過程で他教派のキリスト者や諸宗教の方々と積極的に対話し、この節目である年をとも に喜びと解放の年とすることができるように切望しておられます。

 このように、世界の一人でも多くの人々が紀元二〇〇〇年を新たな千年期の始まりと していろいろな面からみつめ、続く世紀が希望に満ちたものとなるためによりよく準備 していくことが求められていますが、このような取り組みは、教会に属するすべての人 が、それぞれの身近な場で心掛け、実践していくことが大切です。

日本の教会のイエス・キリスト生誕二〇〇〇年に向けての基本的姿勢

 1 学びと黙想 

 日本の司教団は、まずこの教皇の意図を十分に受け止め、それに熱心に応えていく ことを、日本の教会の皆さんに勧めます。 それはとりもなおさず教皇の望みを十分に理解することにあります。そのためには、 まず、使徒的書簡『紀元二〇〇〇年の到来』<カトリック中央協議会発行>(または、 その要旨を説明した『紀元二〇〇〇年をめざして』<大聖年準備特別委員会編集>) を読むことをお勧めします。   紀元二〇〇〇年を迎える直前の準備については、一九九七年から各年毎にイエス・ キリスト(一九九七年)、聖霊(一九九八年)、父である神(一九九九年)をそれぞ れ中心として、三位一体の神が私たちにもたらした救いの恵みについて深く黙想する ように呼びかけられています。

  また、第二バチカン公会議の教えをあらためて学び、深く理解し、できる限り実生 活に活かしていくことも大切な課題です。

  この重要な公会議後、日本の教会もこの十年の間に二回の福音宣教推進全国会議を 開催し、開かれた教会づくりをめざして歩んできました。ともに喜びをもって生きる ことによって福音のあかしをしようと、それぞれの場で、話し合い、分かち合い、祈 り合い、実践することに努めています。私たち一人一人が、毎日の生活の中で育てら れる信仰の力によって、自分たちの周囲の社会の中で起こるさまざまなことがらに関 わり、社会とともに歩んでいくことも、キリスト生誕二〇〇〇年を迎える大切な準備 の一つと言えるでしょう。

 2 希望と解放の時

  この準備の期間を有意義なものとするために、まず第一段階として、過去の時間の 中での歩みについてのより深い反省・回心・祈りと学びが求められています。なぜな ら、現在と未来への道は過去の積み重ねなしに存在することはないからです。

  しかし、この準備の期間にいつも見つめていなければならないより大切なことは、 未来への 希望 です。その希望は、次に来る千年期を不正や差別、殺戮や戦争、飢 えや貧困、虐待や暴力、いじめや殺人、環境破壊などのない、人間一人一人と神が創 造されたすべてのものが大切にされる 希望と解放の時 とすることにあります。喜 びと平和に満ち、希望で一杯の新しい世紀を迎えるために、日本の教会でも、皆さん 一人一人が、小教区共同体の中で、日々の生活の中で、よりよい準備に積極的に取り 組むことが期待されます。

  3 記念行事を通して

  これから紀元二〇〇〇年に向けての準備の間に、日本の教会には特に記念すべき二つのことがあります。 一つは一九九七年の日本二十六聖人殉教四百年、もう一つは一九九九年の聖フラン シスコ・ザビエル渡来四五〇年です。特にザビエル渡来四五〇年は、日本の教会の福 音宣教の歩みを振り返る絶好の機会となります。その歴史の反省を踏まえて、次の千 年期への積極的関わりを模索していくことは、教皇の意向に沿った、私たちの具体的 な取り組みとなるでしょう。

  4 取り組みの実施

  このような紀元二〇〇〇年に向けての歩みは、皆さん一人一人の参加が不可欠です。

そのために、行事など何らかの企画が必要ならば、できる限り皆さん一人一人の実生 活の場である教区、小教区単位での実施が相応しいと考えます。

 そのような身近なところから準備を進める歩みによって、キリスト生誕二〇〇〇年が日本の教会の全信者のものとなることを期待しています。  そして、全国的な祝典(記念のミサ等)も、こような取り組みの基本的姿勢にそって 行われることが望ましいと考えています。

  5 司教協議会・大聖年準備特別委員会の役割

  司教協議会としては大聖年準備特別委員会を設置していますが、この委員会の役割 は、司教協議会が示した日本の教会としてのキリスト生誕二〇〇〇年のあり方を受け て、その姿勢を啓発・推進し、必要な事項に対処していくことにあります。そのため に、主に、教皇庁からの大聖年に関する情報・資料等を各教区に伝達し、また、各教 区・小教区で何らかの企画のために要請があれば、適宜必要資料の提供等のお手伝い をいたします。

  また、当特別委員会では、今後の皆さんの準備の助けになるようにと考え、これか ら紀元二〇〇〇年までの期間、教皇が定められた各年のテーマ等について、日本の教 会としてはどのような視点から深めていくかを具体的にまとめて、適宜発表すること を予定しています。

おわりに

このように、教皇の意向を全面的に受け止めながら、日本の教会としてイエス・キ リスト生誕二〇〇〇年を喜び、希望、解放の年として迎えるために、どのような準備 をしていけばよいのか、今後も皆さんの祈りと協力を得ながら、歩みを進めていきた いと思います。 これからの準備を通して、恵み豊かなキリスト生誕二〇〇〇年を迎え、日本の社会 において私たち一人一人がイエス・キリストがもたらした福音をあかしする者となり、 日本の教会がたえず「宣教する教会」に成長しますように、聖霊の豊かな導きを祈り 求めましょう。

一九九六年九月十四日
十字架称賛の祝日に
日本カトリック司教協議会
大聖年準備特別委員会

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