首相の靖国神社参拝に抗議する声明

内閣総理大臣 小泉純一郎 様  去る2005年9月30日大阪高等裁判所が、首相の参拝を「公人の行為」と認定し違憲であるとの判断を示しました。それにも関わらず、昨日10月17日、小泉首相が靖国神社参拝をしました。一国の総理 […]

内閣総理大臣
小泉純一郎 様

 去る2005年9月30日大阪高等裁判所が、首相の参拝を「公人の行為」と認定し違憲であるとの判断を示しました。それにも関わらず、昨日10月17日、小泉首相が靖国神社参拝をしました。一国の総理大臣がたとえ私人という肩書きであったとしても、靖国神社を参拝したことに対して、私たち日本カトリック司教協議会・社会司教委員会は強く抗議します。
 憲法20条では、「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」と言われています。総理大臣が靖国神社に参拝することは、この国の宗教活動の禁止条項に明らかに反することになります。
 戦争によって、尊いいのちを落とされた方々を追悼し、その方々や御遺族のために祈ることは、人間として当然のことです。しかし日本を代表する総理大臣が靖国神社に参拝することは、それと全く意味を異にします。 
 靖国神社には、かつて日本帝国軍人として戦場に駆り出され、侵略者となった者たちが「英雄」として祀り上げられており、戦争そのものを美化しています。また戦争指導者としてのA級戦犯をも含んだ2百数十万人の軍人を祀っています。そのような神社を内閣総理大臣が参拝したことは、戦争によってアジア諸地域において殺された2000万人もの人々に対する日本の戦争責任を直視していないことを象徴的に表しています。さらに日本が国家の責任を一切負っていないばかりか、再び戦争を行う危険な国であることを強く印象づけているのです。
 私たちは日本帝国軍隊によって侵略され、無惨にも殺されたアジア・太平洋地域の人々のことを忘れてはなりません。私たちはアジアの人々と和解し、大切な友人としての関係を築きたいと心から願っています。一人ひとりの信仰、思想、信条の自由が尊重される平和な社会をつくりたいと望んでいます。だからこそ総理大臣の靖国神社参拝に私たちは強く抗議します。
 「かつて軍国主義政権の圧力のもとで、当時のカトリック教会の指導者は靖国神社をはじめとする神社参拝を心ならずも『儀礼』 として容認してしまいました。このことは過去の出来事として葬り去ることはできません。なぜなら、今まさに同じ危機が目前に迫っているからです。すなわち、憲法改正論議のなかで、政教分離の原則を緩和し、靖国神社参拝を『儀礼』として容認しようという動きが出てきているからです。日本の政教分離(憲法第20条3項)は、天皇を中心とする国家体制が宗教を利用して戦争にまい進したという歴史の反省から生まれた原則なのです。だからこそ、日本国民であるわたしたちにとって、この政教分離の原則を守り続けることが、同じ轍をふまない覚悟を明らかにすることになるのです。東アジアの人々の信頼を回復し、連帯して平和を築いていくためにも、わたしたちはこれらの確固たる姿勢を示すことが必要ではないでしょうか。」カトリック司教団が去る8月に発表した平和メッセージの中のこれらの言葉を私たち社会司教委員会は真摯に受けとめ、この抗議声明を発表します。

 

SKNL05-12
2005年10月18日
日本カトリック司教協議会 社会司教委員会
委員長 髙見三明大司教

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