ソウル大司教区「いのちのためのミサ」へのメッセージ

日本カトリック司教協議会は、野村純一会長(名古屋教区司教)名で、11月12日付で、韓国カトリック教会のソウル大司教区(大司教:ニコラス・チョン・ジンスク(※注)、信者数143万人[2003年末現在])に、同大司教区が開催 […]

日本カトリック司教協議会は、野村純一会長(名古屋教区司教)名で、11月12日付で、韓国カトリック教会のソウル大司教区(大司教:ニコラス・チョン・ジンスク(※注)、信者数143万人[2003年末現在])に、同大司教区が開催する「いのちのためのミサ」に寄せたメッセージを送付しました。

※注
chon

 韓国・ソウル大司教区は、今年2005年10月5日に「いのちのための教区委員会」を設立しました。これは、韓国国内で行われているヒトES細胞(胚性幹細胞)研究に反対し、その代わりに、倫理的に問題のない体性(成体)幹細胞研究を推進するためです。具体的行動として、同大司教区は「カトリック再生医療計画」を決定し、他のNGO、宗教団体との連携も進めようとしています。
 同大司教区は、こうした取り組みの実りを願って、今年11月26日から「9日間の祈り(ノヴェナ)」を始め、12月4日にソウルの明洞(ミョンドン)司教座聖堂で「いのちのためのミサ」を行います。ミサの中では、教皇ベネディクト十六世の祝福の書簡と、世界各国の代表者の支持声明が朗読される予定です。
 
 メッセージの中で、野村会長は、ソウル大司教区への連帯を表明しながら、以下の点を指摘しています。
 1.「人間の生命は、受精の瞬間から人間として尊重され、扱われるべきである」(教理省『生命のはじまりに関する教書』)がゆえに、自らを守るすべをもたない生命の殺害である、ヒト受精胚の破壊を伴うような胚性幹細胞研究は許されない。
 2.今年、国連総会も、研究目的の人クローン胚作成を含む、あらゆる種類の人クローン胚作成の禁止を求める政治宣言を決議した。
 3.2004年に、日本司教団は、研究目的の人クローン胚作成を認める国の決定に反対する声明を発表した。
 4.日本で行われている、体性幹細胞研究と骨髄間質細胞研究は、ヒトES細胞研究に代わって、多くの難病治療のために将来性のある、代替的な方法と考えられる。
 
 韓国では、2004年2月と今年5月に、ソウル大学の研究チームが人クローン胚からのES細胞作成に成功しました。こうした研究に対して、韓国カトリック教会は強い反対の意思を表明しています。

「いのちのためのミサ」(2005年12月4日、ミョンドン司教座聖堂)へのメッセージ

2005年11月12日
ニコラス・チョン・ジンスク ソウル大司教 様
 大司教様が10月に「いのちのための教区委員会」を設立され、また、12月に明洞司教座聖堂にて「いのちのためのミサ」を開催されると伺い、喜ばしく存じます。破壊的な胚性幹細胞研究から人のいのちを守り、体性幹細胞研究を推進しようとする、大司教様の勇気ある寛大な取り組みを、わたしたちは高く評価し、支持するものであります。わたしたちは今日の「いのちのためのミサ」を、大司教様と大司教区のすべての皆様とともに霊的にともにささげたいと思います。
 今日、「いのちの始まり」に関する倫理的な問題、とくにヒト胚の尊厳の問題が、もっとも真剣な取り組みを必要とするものであることは疑いありません。1998年にヒト胚性細胞の樹立が発表されて以来、人の初期胚を用いた研究に関して、カトリック教会は重大な懸念を表明してきました。「人間の生命は、受精の瞬間から人間として尊重され、扱われるべきである」(教理省『生命のはじまりに関する教書』[1987年2月22日]1・1)がゆえに、自らを守るすべをもたない生命の殺害である、ヒト受精胚の破壊を伴うような胚性幹細胞研究は許されるものではありません。今年、国連総会も、再生医療を目的とした、研究目的の人クローン胚作成を含む、あらゆる種類の人クローン胚作成の禁止を求める政治宣言を決議しています。
 日本でも、ヒト受精胚の取扱いと、研究目的の人クローン胚作成に関する議論が、2001年から内閣府総合科学技術会議生命倫理専門調査会で行われました。2003年末に同調査会が発表した中間報告書「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」に対して、2004年2月、日本司教団は意見書を内閣府に送付し、研究目的のヒト受精胚作成と人クローン胚作成への反対を表明しました。2004年7月に国が研究目的の人クローン胚作成を認める決定を行ったのに際しても、日本司教団はこれに反対する声明を発表しています。
 日本では体性幹細胞研究と骨髄間質細胞研究に関して臨床試験がすでに行われています。これらは、胚性幹細胞研究に代わって、多くの難病治療のためにきわめて将来性のある、代替的な方法と考えられています。
 わたしたちは貴大司教区の新たな「カトリック再生医療計画」が、この分野の将来の発展のために成果を上げることを祈ります。
 神の恵みが大司教様のソウル大司教区における司牧的・医療的奉仕を豊かに祝福してくださいますように。

キリストにおいて、

日本カトリック司教協議会会長
名古屋教区司教
アウグスチヌス 野村純一

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