ハンセン病療養所の「胎児標本」の焼却、埋葬などを拙速に 行わないこと、そしてその取り扱いの再考を求める要望書

2005年12月14日 ハンセン病療養所の「胎児標本」の焼却、埋葬などを拙速に 行わないこと、 そしてその取り扱いの再考を求める要望書 厚生労働大臣 川崎二郎様  国立ハンセン病療養所において「今年度中に各施設で丁重に焼 […]

2005年12月14日

ハンセン病療養所の「胎児標本」の焼却、埋葬などを拙速に 行わないこと、
そしてその取り扱いの再考を求める要望書

厚生労働大臣 川崎二郎様

 国立ハンセン病療養所において「今年度中に各施設で丁重に焼却、埋葬(合祀)、供養および慰霊を行う」と朝日新聞(2005年11月28日)で報道されています。
 私たち日本カトリック司教協議会社会司教委員会は命の尊厳を守る立場から、現在、国立ハンセン病療養所に安置されている胎児標本の焼却、埋葬、供養などを拙速に行わないことを強く要望いたします。
 厚生労働省が設けた第三者機関「ハンセン病問題に関する検証会議」の『ハンセン病問題に関する検証会議最終報告書』において、「胎児標本の問題ほど、入所者の人間としての尊厳を傷つけ続けているものはない」と報告しています。胎児標本の取り扱いについては慎重に対応する必要があります。
 胎児標本を、今年度中という拙速な取り扱い(焼却、埋葬、供養などを行うこと)によっては、決して胎児標本にされた被害者とその遺族の人間の尊厳が回復されるものではありません。そればかりか、そのことによって厚生労働省が、「隔離」「強制的堕胎」などに続いて、再び命の尊厳を踏みにじり、人権を侵害することを繰り返すことになります。
 検証会議の報告書の中で、胎児標本に関して、隔離政策の中での強制的な堕胎、不明な目的の下での標本化、ずさんな胎児標本の保管、医療倫理感覚の欠如、新生児に対する殺人疑惑など、さまざまな問題が指摘されています。しかも、厚生労働省から胎児標本に関する胎児の遺族に対する誠実な心のケア、真摯な謝罪などはなされていません。
 私たちは少なくとも次のような順序を踏むべきであると考えます。

検証会議によって指摘されている胎児標本の問題を厚生労働省が自ら真摯に取り組み、問題点を明らかにすること。このことが標本化された胎児への供養の始まりになるのではないでしょうか。
国立ハンセン病療養所に安置されている114体の胎児標本の遺族、特に母親の精神的なケアを行うこと。
その上で、遺族の意思と意向にそって焼却、埋葬、供養を行うこと。埋葬、供養、慰霊などの主体は遺族である入所者であり、厚生労働省は誠意をもってお手伝いするという立場に徹すること。
 人の埋葬、供養、慰霊などを厚生労働省、あるいは国家が一方的に押し付けることは決して許されることではありません。私たちはハンセン病療養所の「胎児標本」の焼却、埋葬などを拙速に行わないこと、そしてその取り扱いの再考を求めます。

日本カトリック司教協議会社会司教委員会
委員長 髙見三明 (長崎大司教)
副委員長 谷 大二 (さいたま司教)
委員 松浦悟郎 (大阪補佐司教)
委員 宮原良治 (大分司教)
委員 菊地 功 (新潟司教)

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