G8主要先進国首脳に宛てた各国司教協議会議長要請文

007年5月  ドイツ ハイリゲンダムサミット G8主要先進国首脳に宛てた各国司教協議会議長要請文 2007.5.31 ドイツ連邦共和国 首相 アンジェラ メルケル様 ロシア連邦 大統領 ウラジミール V. プーチン様 […]

007年5月  ドイツ ハイリゲンダムサミット
G8主要先進国首脳に宛てた各国司教協議会議長要請文 2007.5.31

ドイツ連邦共和国 首相 アンジェラ メルケル様
ロシア連邦 大統領 ウラジミール V. プーチン様
カナダ 首相 ステファン ハーパー様
イギリス連合王国 首相 トニー ブレア様
フランス共和国 大統領 ニコラス サルコジ様
アメリカ合衆国 大統領 ジョージ W. ブッシュ様
日本 首相 安倍 晋三様

G8 主要先進8カ国首脳各位

ドイツのG8サミット開催に先立ち、各国の司教協議会を代表して、地球規模の貧困、健康不安、温暖化、平和と安全について、G8の指導者が大胆な行動を取ることを要望します。同時に、これらの問題にもかかわらず、質の高い教育の実現に向けて更なる努力を惜しまないことも要求します。私たちはこれらの問題に関心を持っています。人間の生活を向上させ、人間としての尊厳を助長し、神の創造の業を大切にするという私たちの宗教上、道義上の約束に関わるものだからです。この点に関して、私たちは教皇ベネディクト16世と連帯しています。教皇は2006年12月16日付でG8の現議長であるアンジェラ メルケル氏にあてた書簡の中で、経済的に豊かな国々の道義的責任について言及しています。

私たち協議会は、アフリカのカトリック教会とその広大な大陸に住む人々と深く関わっています。ですからサミットがアフリカに関心を向け始めていることに好感を持っています。
アフリカの発展のための新連合(NEPAD)の枠内で、よい統治の促進のために主導権を発揮できるかどうかは、より強力な国々の支援にかかっているのです。

2005年スコットランドのGleneagles でなされた公約を思い出してください。当時、世界のもっとも豊かな国々は、2010年までに年500億ドルを海外への追加援助に当てると約束しました。この半額はアフリカの援助に使われるはずでした。しかし、この公約があるにもかかわらず、世界の先進国からの海外援助基金は、2006年現在何の進展も見られないというOECD(経済協力開発機構)の報告を聞いて非常に憂慮しています。すべての人類と幸せを分かち合うという道義的責任と、アフリカで絶望を希望に変えることが、全世界の国々の更なる安全につながるという意識で行動を起こすように要望します。

「2010年までに出来るだけ多くの人々が、誰でもHIVエイズの予防、治療、介護を受けられるようにする」というG8の開発担当大臣の約束には励まされます。HIVエイズは確かに誰にとっても衝撃的なものですが、発展途上国の女性にとっては特に深刻な問題です。エイズは経済的にも、法律的にも、文化的にも、社会的にも非常な不利益をもたらすからです。エイズにかかった家族の面倒をみさせるために、少女たちを退学させるということもよくあることです。教育を受けられないことは、少女たちにとっては一生のマイナスです。HIVエイズについて適切に伝えるため、特に女性や少女たちの教育や進歩のために、海外からの援助プログラムを拡大する必要があります。

その上、地方の医療システムは整っていないので、HIVエイズや他の生命を脅かす病気に関連する広範囲の保健プログラムが有効に機能しません。医療システムを強化し、HIVエイズや他の生命を脅かす病気に対するプログラムを支えていくためには、基金と適切な方策がぜひとも必要です。

サミットの議事日程には地球温暖化の問題も含まれています。この問題は、神の創造の業を守ることを委ねられている宗教界の人々には、特に関心のある問題です。この観点から、私たちは貧しい人々に特別の関心を寄せています。彼らが暮らしている地域は資源も限られているので、エネルギーコストの潜在的な上昇、失業、健康不安も含めて、気象の変化の悪影響と、それに抗議する手段を持たないという重荷を直接体験しているのです。アフリカや他の地域だけでなく、私たちの国でも同様なことが起こっています。地球規模の温暖化に抗議するには、多くの技術的な要素を考慮する必要がありますが、私たちはよい管理者としての道義的な責任を認めます、エネルギー資源の利用に関しては特に、私たちの行動と決定が現在と未来の世代に決定的な影響を与えるのです。地球温暖化の有害な結果を回避し、緩和するために主導権を行使することに伴う犠牲は、開発を促進するための有害物質の放出によって利益を受けている、豊かな人々や国家が負担すべきもので、貧しい人々に負担させてはなりません。

ダルフールでの深まりつつある人間の悲劇は、G8の緊急な対応を必要としています。一日たつごとに死者は増え、人々は家を失っています。効果的な行動を起こすことに失敗した国際社会は、同義的な責任を感じなくなっているのです。G8は、ダルフールの平和維持軍を強化するための、国連による委任統治の全面的履行に向けて、安保理の支持を得るための努力を強めなければなりません。G8はハルトゥームの政府に、増強した平和維持軍の展開を受け入れるように要求し、スーダンのすべての政党は、停戦を守り国際的な人道法を尊重するように、圧力をかけなければなりません。たとえ恐ろしい殺戮が終わり、ダルフールの人々が故郷に帰って平和な生活を営み、未来に対して希望を持つことが出来るようになったとしても、これらの必要なステップは早急に取られなければなりません。

私たちはスーダンや紛争中の国々の平和維持努力を強化するようにG8に勧めます。と同時に、紛争の終結を見た国々の平和の確立と、再建の努力を支援するようことも要望します。紛争中や紛争後の状況にある国家と、政治的、経済的、社会的協力を強めることは、永続性のある安定を築き上げるための更に包括的なつながりを提供することになるのです。

天然資源の不法な利己的利用を防止する努力を評価します。しかし、特にアフリカにおいて、豊かな天然資源があるにもかかわらず、利益が国民に還元されずに、国民は相変わらず貧困状態を脱することが出来ないのは、天然資源開発に世界のもっとも豊かな国々が関与しているからです。教皇ベネディクト16世と連帯して、私たちは「マネーロンダリングの禁止、貧しい国々での役人の汚職の撤廃と共に、合法であっても非合法であっても武器の取引と、貴重な原材料の違法な取引、貧しい国々からの資本の流出の本質的削減のために働き続ける」ように国際社会に要求します。
最後に、アフリカのかなりの数の国々が、初等教育の改革を始めているということです。全アフリカの子供たちを対象に、本質的な初等教育を行なう努力を強化するというG8の
公約は、アフリカの未来を大きく変えることになるかもしれません。

G8サミットは人間の生命と尊厳の重要性を脅かす、多くの問題に取り組むことと思います。
この会議が聖霊の働きに導かれ、G8の指導者たちが、地球規模の貧困、健康不安、温暖化、平和と安全の問題に具体的な方策を採用することによって、地球全体の共通善を促進することが出来ますように祈ります。

マインツ司教 ドイツ司教協議会議長 カール リーマン枢機卿
シェルブルック大司教 カナダカトリック司教協議会議長 アンドレ ゴーマン
ボルドー大司教 フランス司教協議会議長 ジャンピエール リカルド枢機卿
名古屋司教 日本カトリック司教協議会議長 野村 純一
ノボシビルスク東方正教会司教 ロシアカトリック司教協議会議長 ジョゼフ ウエルス
ウエストミンスター大司教 イングランド・ウエールズカトリック司教協議会議長
コーマック マーフィー オコーナー大司教
スポケーン司教 アメリカ合衆国カトリック司教協議会議長 ウイリアム S.スキルスタッド

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