2008年平和旬間のための談話

平和旬間を迎えるにあたって (日本カトリック司教協議会会長談話) 平和を願うすべての方々へ   日本のカトリック教会では、毎年8月6日から15日までを平和旬間としています。1981年に、ヨハネ・パウロ二世前教皇が来日し、 […]

平和旬間を迎えるにあたって
(日本カトリック司教協議会会長談話)

平和を願うすべての方々へ
  日本のカトリック教会では、毎年8月6日から15日までを平和旬間としています。1981年に、ヨハネ・パウロ二世前教皇が来日し、広島と長崎で平和のためのアピールを出されたことを機に、この平和旬間が始まりました。広島の原爆記念日から、長崎の原爆記念日を挟んで、終戦記念日までのこの10日間は、日本のカトリック信者にとって、特に平和について学び、平和のために祈り、行動する期間となっています。
 今年の平和旬間を迎えるにあたり、カトリック信者だけでなく多くの方々とともに、特別に平和と人権尊重との密接な関係について深く考えたいと願っています。ベネディクト十六世教皇は、世界人権宣言公布60年にあたる今年4月18日に国連本部で演説を行いましたが、その中で、「人権の推進は依然として、諸国間、社会集団間の格差をなくし、安全保障を強化するためのもっとも有効な戦略です」と述べています。わたしたち日本のカトリック司教団も、戦後60周年の平和メッセージ『非暴力による平和への道』(2005年)の中で「平和の前提はまず人間の尊厳にあります」と述べました。世界のすべての人が誰一人として差別も排除もされることなく、一人ひとりの人間の尊厳が尊重されることが平和の基礎であることを、いつも思い起こす必要があります。
  「人権」というと堅苦しい感じを与えますが、人権とは一人ひとりの人をかけがえのない人として大切にすることに他ならないと考えます。
 一人ひとりの人の尊厳とは、まずその人独自の価値、すなわち「かけがえのなさ」であり、また神がそれぞれの人に「心」「内面の自由」を与えている、ということに存しています。だからこそ、信教の自由、良心の自由は人間のもっとも大切な価値であり、それゆえ、信教の自由、良心の自由をわたしたちは基本的人権と呼んでいるのだと思います。しかしその同じ人間の心に、恐れ、不安、疑い、憎しみ、恨みなどの否定的な気持が生まれ、そうしたことがらが、人を動かし、争いや対立へと駆り立てることがあります。ですから、まず人の心に平和がしっかりと宿らなければなりません。
  「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」(ユネスコ憲章の前文)
  わたくしは中学生のとき学校でこのことばを学び、非常に感激しました。このことばはすべての宗教者が特に深く心に刻むべき戒めです。わたしたちキリスト者は、平和は神の賜物であると信じております。平和のために人は努力しなければなりませんが、同時に平和のために人は絶えず祈らなければならないのです。
  すべての人の平和を願う祈りを込めてこのメッセージをお送りいたします。

2008年8月6日
日本カトリック司教協議会会長
ペトロ 岡田 武夫(東京教区大司教)

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